Ken Yokoyamaが音楽で埋め尽くした2時間 ロックンロールと戯れた『Indian Burn』ツアーファイナル
約2時間、なんと全32曲! リアルサウンドでは長らくKen Yokoyamaのライブレポートを書かせてもらっているので、時間のある人は2016年の日本武道館公演と読み比べると面白いかもしれない。当時は全24曲。「語り続けた」、「ライブの中心にあったのは声であり、対話であった」と書いたように、言葉の比重がとにかく大きかったのが8年前の横山健だ。
しかし今の彼は、同じパフォーマンス時間があればとにかく演奏をする。名曲もレア曲も関係なくびっちりと音楽で埋め尽くす。そこにあったのは「やれる限りは徹底的にやる」という意思表明だった。
『Indian Burn』ツアーファイナルの立川STAGE GARDEN。まずはゲストのThe BONEZがスケールの大きな爆音を放っていく。JESSEの華やかな身のこなしが目を引くが、それぞれの実力、リズムの強度も半端なく、総じてロックスター感が強い。これは会場が広ければ広いほど発揮されるバンドの強みだろう。能登半島地震の被災者に捧げると前置きした後半の「Thread & Needle」。その壮大なメロディには会場中からシンガロングと拳が上がっていた。
続いてKen Yokoyama。ひょろひょろした手書き文字の〈Ken Band〉フラッグではなく、『Indian Burn』のジャケットがバックドロップに掲げているのが今回のツアーの特徴だが、そのバックドロップが、会場の広さに対して明らかに小さい。そのことに自らツッコミを入れながら始まるステージは、The BONEZの後だから余計わかるが、威風堂々たるスター像とは真逆のものだ。
もちろん悪いことではない。その場の思いつきや冗談なども引っくるめて転がる面白さは、横山健の人柄と直結した魅力になる。たとえば前半8曲目、新曲の「The Show Must Go On」の演奏中、小さすぎたバックドロップが巨大なものへとすり替わっていくのだが、これ自体はショウとしての粋な演出だ。ただ、そのことを知らされていなかった横山がびっくりしすぎて大笑い、次の曲へと畳み掛けるタイミングを失ってしまい、急遽リクエストされた「Walk」が始まった、というのは、アクシデントもひとつの好機に変えていくKen Yokoyamaらしさが凝縮されたシーンだったと思う。
ただ、この日のハイライトはそこではない。『Indian Burn』の新曲たちが観客にばっちり馴染んでいたことでもなかった。シングル曲「My One Wish」の後に激速の「Your Safe Rock」が来て、新曲「New Love」の前後には「I Love」と「Popcorn Love」という懐かしいラブソングが揃っていて、かなりのレア曲「Cheap Shot」の直後に大名曲「Believer」が来るセットリスト。新しいものも古いものも、代表曲も知られざる曲も、これまでやってきたものを徹底的にぶちかます。その意思がずっと途切れないところがハイライトだったとも言える。