ミセカイを通して千鎖とアマアラシが見つけた救いの光 “視る音楽”を奏でた1stワンマン

ミセカイ、1stワンマンライブレポ

 激情的な歌声が放たれた「C.A.E.」、アコースティック編成の心地よさに包まれた「スクレ」、複数の一枚絵から生まれた「唄を教えてくれたあなたへ」……EDMからクラシックへのオマージュまで、幅広いジャンルを横断し感情が揺り動かされるミセカイの作品。特に「スクレ」では、千鎖の柔和な歌声に寄り添うアマアラシの歌声が、二人の絆を感じさせた。

「ミセカイ 1st Oneman Live『Live Artrium』」ライブ写真(撮影=Iwata Koichiro)

「正直、人生で予測できないことはなかった僕ですが、(自身の)結婚と今回のライブチケットの即完売は、唯一の想定外でした」(アマアラシ)

 完璧主義ゆえにワンマンライブへの挑戦を躊躇していた。ライブは普段から控えめな頻度でちょうど良いと考えていた。そう打ち明けるアマアラシの発言は、これまで多くのことを諦めて生きてきたという解釈も可能だった。制作における孤独感との戦いを語り、「誰にも聴いてもらえないことは、音楽家にとって命取り」と話した途端、この日の景色を前に感極まる様子を見せる。かつては孤独に苦しんでいた彼の音楽はミセカイをきっかけに生命力に満ち溢れ、諦念に支配されていた日々を脱却し、新たな可能性に向かって歩み出すチャンスを掴み始めた。「(曲が誰かのもとで羽ばたくために)音楽に命をかけてきた」。この日繰り返した言葉が報われた瞬間でもあった。MVに映る女性の泣き顔が、MCと重なり、楽曲にリアリティとドラマ性を吹き込んだ1stシングル曲「アオイハル」。澄み渡るハーモニーが「Ever」を彩った。

「ミセカイ 1st Oneman Live『Live Artrium』」ライブ写真(撮影=Iwata Koichiro)

 ミセカイのコンセプトのきっかけであり、音源化されていない「博世界」を最後に届けたアンコール。今年の1月中旬、千鎖は最愛の親族が最期を迎える病室で、家族からの提案でミセカイの「催涙夜」を聴かせたエピソードに触れた。例え、相手に聴こえなくても話しかけることの大切さを教えてくれたミセカイの曲。そして、千鎖のエピソードが新たな世界を展開した。

 ミセカイの作品が千鎖とアマアラシにくれた贈り物……それは、真っ暗なトンネルの終わりに見えた救いの光。「104Hz」の最後のサビにある〈泳げたら幸せだと 上を向く虚な顔が一つ〉というフレーズのように、ミセカイという存在が、二人の音楽人生における生命線を、力強く引き伸ばしてくれたように思えた。

「ミセカイ 1st Oneman Live『Live Artrium』」ライブ写真(撮影=Iwata Koichiro)

■セットリスト
OPSE. { New World
01. 104Hz
02. Re-plica
03. 藍を見つけて
04. カラフル
05. 浮きこぼれ
06. コインロッカーベイビー feat.泣き虫☔︎
07. C.A.E.
08. スクレ
09. 唄を教えてくれたあなたへ
10. アオイハル
11. Ever

EN1. 催涙夜
EN2. 博世界
EDSE. World End }

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