muque、レトロリロン、yubiori、まんぷく……リアルサウンド編集部がいま気になるバンドをピックアップ
【特集:バンドからバンドへと受け継がれるもの(番外編)】
リアルサウンドでは「バンドからバンドへと受け継がれるもの」と題した特集企画を展開中。その番外編として、例年春に編集部スタッフがレコメンドしている新人アーティスト企画を今回はバンドにフォーカスした形でご紹介。12組をピックアップし、その特徴やおすすめ楽曲を挙げた。まだ聴いたことのないバンドは今のうちにチェックを。
muque
2022年結成、福岡発の4人組バンド。音楽性とビジュアルに華があり、ファッション界隈との親和性も高いであろうmuque。冒頭で4人組バンドと謳ったが、現行のK-POPや海外ポップスの影響を色濃く感じさせるビートメイクやアレンジが絶妙で、“バンド”の枠には収まらない意欲的な音を鳴らしている。
直近はInstagramを中心に「my crush」が話題に。カッティングギターとグルーヴ感の強いベース、気怠げなボーカルを含めてスッと耳に入ってくる心地よさがたまらない。ダンスミュージック、シティポップ系の洒落た楽曲をリリースする一方で、最新曲「Bite you」ではノイジーなロックサウンドを志向する。曲のレンジの広さは、新鋭バンドの中でも光るものがある。
ブランデー戦記、サバシスター、離婚伝説など、2022年結成のバンドがシーンの中で頭角を現している昨今。muqueのような存在は、日本のバンドシーンやJ-POPのカテゴリにおいて所在を見つけるのが大変な印象もあるが、だからこそ国内外で新しいムーブメントを作る存在になってほしいと期待してしまう。(泉)
レトロリロン
曲に込められたメッセージの普遍性、それを最大化させるボーカル、さらにそれを的確に伝えるためのサウンド……というある種の構築美が、ここ一年くらいでどんどん純化されている印象のあるバンド。孤独、というと物語的に過ぎてしまう気もするけれど、でもきっとそれがバンドの脳みその第一にあって、そこから生まれている歌のような気がする。「ヘッドライナー」という曲が作れたのなら、きっとさらにもっといい曲が生まれていくんだろうな、と思います。ファンキーだけれどちゃんと空気の音が聴こえる余白のある声と、ピアノとアコースティックギターがバンドとして鳴らされているのもいい。今後が楽しみです。(林)
yubiori
今日もまたいつもの1日が終わる。仕事や学校から帰路につく時の疲れてセンチメンタルになっている感情に、じんわり溶けていくようなメロディと激情的なアンサンブルで寄り添う、横浜発の5人組バンド yubiori。退屈な生活を悲観しているわけではないが、ありのまま切り取っているだけなのに自然と悲哀が滲み出てくるーーそんなエモ由来の描き方は再びリアルになってきているのかもしれない。象徴的なのは〈青に変わる信号機は/前に進む理由にはならない〉(「放射冷却」)という秀逸なライン。自分はいつまでも変われないのに、街並みや友人など周囲の変化に気づくことで、世の中との距離が広がってしまったような感覚に陥ることは誰にでもあり得るだろう。そして、その置き所のない心情をそのままかき鳴らしたギターや叫びがyubioriの聴きどころになっている。だが、無常観を歌うことで、逆説的に“ここで生きている自分”という不変の真理を祝福しているのもまた、yubioriの音楽の核心でもある。たとえ人生がダラッと続くだけだとしても、自分らしい場所を見つけて生きていってやるーーどことなくbloodthirsty butchers「JACK NICOLSON」さえ彷彿とさせるような「ギター」の4分間に、現代のオルタナバンドとしての意志を感じた。(信太)
まんぷく
東京・小金井にて結成された4人組バンド、まんぷく。その名前どおりのおおらかな日本語のロックを奏でるバンドである。初めて彼らの楽曲を聴いたとき、個人的にはスピッツやくるり、フジファブリックなどの音楽と出会ったときと同じような感覚を抱いた。コーラスワークやキーボードがノスタルジックな雰囲気を醸すアクセントになっていて、聴く人それぞれの記憶にある風景が呼び起こされる楽曲が多い。そして、さかのひかり(Vo/Gt)の歌心あふれるボーカル。淡々としているようで内にある熱いものが伝わってくる感じがとてもよい。「渦」「この星空からはじまって」のようなラブソングから「街」「ひとつ」のようなじんわりと染みるバラード、「あの頃のまま」「ひろがっていく」のようなライブでも盛り上がるナンバーまで、どれもメロディの強さが際立っている。「いい音楽」を探している人にぜひ聴いてみてほしい。(久蔵)
しろつめ備忘録
おはらはな(Gt/Vo)、オカジマツカサ(Gt)、安藤(Ba)、みずえ(Dr)による4ピースバンド。2023年結成と活動開始からまだ日は浅いものの、これまでリリースされた楽曲は粒揃い。くるりや羊文学に影響を受けたというのも納得で、こうした系譜に連なる新鋭バンドと言える。ひらがな+漢字というバンド名も相まって、個人的にはきのこ帝国あたりも連想してしまった。パッと耳を引くのは、鋭いサウンドを柔らかく包み込み、心に刺していくおはらはなの歌声。彼女の紡ぐ言葉にも心を掴まれた。〈若さはきらめく/ぼくら無駄にして過ごす〉と繰り返し歌う「our youth」、なぜか“君”と上手く話せない気まずい日々が続く「最近なんだか」、〈間違ったことだけしないようにしている/生活に満足をしている〉という主人公が描かれる「such is life」など、諦念すら感じるが、決して暗い気持ちにはならない。どこか映画的かつ切なくもロマンチックな一方で、地に足のついた生活の匂いがする。今の季節に勧めたいのは、タイトルもお気に入りの「haru is imitation」。(村上)
レトロマイガール!!
女性ボーカルのスリーピースバンドの構成から想像できる、まっすぐ王道の楽曲で、そのまっすぐさがこのバンドが持つ青春感の正体であるように感じる。歌詞は写実的なものが多く、歌詞を読みながら聴いていると段々友達の恋愛相談を聞いているような感覚になるようなリアリティがある。花菜(Vo)の声もパッと聴いて耳に残る声質だが、ずっと聴いていられるボーカルと、キャッチーなメロディも相まって気付いたら自然と口ずさんでいる。(佐々木)