「ポルノグラフィティは一日にして成らず」 4年半ぶりの声出し解禁公演で掴む最高到達点

 再びメインステージに戻ると、一輪の花の映像をバックにその儚さと強さを歌う「フラワー」、花道を含めた星のような照明が美しい「夜間飛行」でバラード曲の魅力を知らしめる。軸がありながらも変幻自在な岡野の歌と新藤のギターがあるからこそ、ここまで多ジャンルの楽曲が成立するのだろう。新藤、そしてサポートミュージシャンのtasuku(Gt)、皆川真人(Key)、山口寛雄(Ba)、田中駿汰(Dr)によるテクニカルかつ熱いセッションを経て「オレ、天使」では白い羽根を背負った岡野が登場。現世を盛大に皮肉る楽曲では原曲にあるセリフも再現され、会場の空気が一気に変わるのを感じた。続くセットリストは「170828-29」、そして「アビが鳴く」。いつか戦争があったことすら忘れられてしまうこと、そして戦争が起きることに対する恐怖感、裏を返せばそれは平和への切なる想いだ。それを彼らは、楽曲を通じてさまざまな形で伝え続けてくれている。“いつか、どこか”ではなく“今、ここ”にも良いものはある、ポルノの活動は“失われた何十年”にすっぽり収まるかもしれないけれど、悪くない日々だったーーそんな新藤のMCからパフォーマンスされた新曲「解放区」は“ここで生きていく”という覚悟を示したような楽曲だった。

 そしてSFチックな世界観の「空想科学少年」の後は「ハネウマライダー」「アポロ」「サウダージ」とライヴ定番のヒット曲で会場をこれでもかと煽り、終盤でも全くブレない歌声と演奏力を見せつけていく。いつしか定番になった、原曲にはない「ハネウマライダー」の新藤のギターイントロを聴くと否応なくテンションが上がる。これもまた、一つひとつのステージの積み重ねが生んだものだ。これらの楽曲を間髪入れずに披露し、特に「サウダージ」では冒頭をアカペラで歌い切る岡野の姿に驚きを隠せなかった。最後はやはり客席のクラップ&コーラスが欠かせない「オー!リバル」で大いに盛り上げて締めくくった。

 アンコールのMCでは「25年、ステージに立っているーー君たちがステージに立たせているとも言える」と“お互い様”だと客席に呼びかけた新藤、「この25年は順風満帆だった」と苦しい瞬間はあっても、皆の声があったからここまで来れたと話した岡野。この日のステージは、ツアーを通じて伝えてきたファンへの感謝の集大成だったのかもしれない。岡野の口から「最高到達点」というワードが何度か出ていたが、ステージごとに更新し続ける彼らにとってこの日は間違いなくひとつの最高到達点だったと言える。アンコールでの、二人きりで披露した「アゲハ蝶」、撮影が許可された「ジレンマ」もまた、これまでにはなかった新たな挑戦。8月、9月には故郷・因島運動公園と横浜スタジアムにて『因島・横浜ロマンスポルノ'24』の開催も発表された。ここでもまた、“最高到達点”が更新されていくのだろう。

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