日食なつこ初の展覧会『エリア過去』を観て 表現者としての格闘の歴史

 ちなみにこのフロアには、歌詞ノートの他にもピアノの譜面やDAWの画像、MVの絵コンテやライブ中に放つ曲間を繋ぐセリフのメモなども置かれており、中でも目を引いたのが日食なつこによるイラストである。率直に言ってかなり上手い。架空の漫画キャラクターを描いたような愛らしいデザインで、個人的にはジャケットや歌詞カードの中面にあったら嬉しくなるような絵だと思う。小学生の頃から日記を書いていたという彼女だが、内に抱えた思いは文字やイラストへと昇華され、それは互いに影響し合いながら音符と結びついて歌になるのだろう。そんな想像を膨らませてしまうような空間である。

 さて、最後にもうひとつ。『蒐集大行脚』ツアーで使われていた垂れ幕を横目に通路を進むと、よりプライベート色の強い部屋が用意されていた。左右の壁の右手には、ロバ?やカエル、きのこやひまわり、あるいは沢山の自然の風景を収めた写真が貼られ、左手には「あのデパート」のモチーフであるマルカンビル大食堂を訪れた際の写真や、恐らく10代の頃であろう日食なつこが映ったショットなどが並んでいる。そして、最深部では10分ほどのダイジェスト映像が流れており、そこには食事を作り、草刈りをして、車のタイヤ交換(!)までをひとりでこなす日食なつこが映っている。これこそ日食なつこの本質だろう。生活と音楽は不可分であり、このサイクルの中でしか彼女の歌は生まれないのだ。「自立した音楽をするためには、自立した生き方をしていないとバランスが取れない」というのが、以前取材した時の彼女の言葉である(※1)。

 さて、つい先日『宇宙友泳』の3つ目の企画として、『エリア不変』と題した盛岡3DAYSライブを行うことが発表された。音楽活動の原点である、盛岡クラブチェンジで行うスペシャルな3日間とのことである。今回の『エリア過去』を皮切りに、本格的にアニバーサリーの祭りが始まっていくのである。まずは5月末からスタートする未発表曲のみで構成されるバンドセットツアー、『エリア未来』の到来を心待ちにしたい。

※1 https://realsound.jp/2023/04/post-1310576.html

■ツアー情報
日食なつこ15th Anniversary -宇宙友泳-
未発表曲ツアー『エリア未来』

5月31日(金)大阪 BIGCAT…Sold Out!!!
6月1日(土)愛知 ボトムライン…Sold Out!!!
6月7日(金)北海道 club garden…Sold Out!!!
6月14日(金)福岡 DRUM LOGOS
6月15日(土)広島 Reed
6月21日(金)東京 EX THEATER ROPPONGI…Sold Out!!!
6月23(日)新潟 LOTS
6月29日(土)宮城 Rensa…Sold Out!!!
チケット料金:¥6,500(税込)

日食なつこ 15th Anniversary -宇宙友泳- 特設サイト:https://nisshoku-natsuko.com/15thanniversary-uchuyuei/
日食なつこデジタル配信:https://orcd.co/nisshoku
日食なつこ公式HP:https://nisshoku-natsuko.com/
日食なつこX:https://x.com/nsn58
日食なつこInstagram:https://www.instagram.com/nisshokunatsuko_official/

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