ポルノグラフィティ、ILLIT、乃紫、星街すいせい、NCT DREAM、山崎育三郎……注目新譜6作をレビュー

星街すいせい「ビビデバ」

ビビデバ / 星街すいせい(official)

 2ndアルバム『Specter』のヒット、VTuber初となる『THE FIRST TAKE』への出演などにより、昨年さらなる飛躍を果たした星街すいせい。YouTube登録者数がついに210万人を突破した2024年最初のオリジナル曲は、ボカロPでシンガーソングライターのツミキが作詞・作曲・編曲を手がけたダンサブルな楽曲に仕上がっている。ブレイクビーツの手法を取り入れたトラックはノスタルジックにして新鮮。ラップを交えたボーカルは日本語をなめらかにグルーヴさせ、〈左様なら グッバイ劣等感〉〈ならば自由に踊った者勝ちでしょう?〉という前向きにして切実なメッセージを含んだリリックを軽やかに綴っていく。星街のボーカルの多様性、表現の幅広さを改めて実感できる1曲だ。

NCT DREAM「Smoothie」

NCT DREAM「Smoothie」

 トラックメイクの中心を担っているのは、厚みのあるシンセベース、そして、生々しいグルーヴを生み出しドラム。ニューアルバム『DREAM( )SCAPE』のタイトル曲「Smoothie」は、オールドスクール的な匂いが感じられるヒップホップ・ナンバーだ。メンバー個々の声質を活かしたラップとフロウ、〈Smoothie Smootihie Smoothie〉とリフレインするキャッチ—なサビによって、アンダーグランドとメジャーシーンを自然に結びつけることにも注目してほしい。過酷な現状、自分自身を否定したくなる心の動きを脱却し、“スムージーのように飲み込んでしまいたい”という思いを刻み込んだ歌詞もきわめてリアル。思春期特有の葛藤を反映したこの曲は、国境を超えた支持を獲得することになりそうだ。

山崎育三郎「LIKE、重ねていく feat.幾田りら」

山崎育三郎 - 「LIKE、重ねていく feat.幾田りら」 Music Video

 最初のきっかけは、山崎育三郎の大ファンだという幾田りらの母親が、娘である幾田を連れてライブに行ったこと。その後、山崎がMCをつとめる番組『おしゃれクリップ』(日本テレビ系)に幾田が出演したことで、ジャンルを超えたコラボレーションが実現した。作詞・作曲・編曲を清竜人が担当した「LIKE、重ねていく feat.幾田りら」は、最初から最後まで二人の声を軸に構成された、洗練と切なさをたっぷり含んだ大人のラブソング。まず聴こえてくるのは息遣い多めの二人のフェイク。R&B〜ソウルミュージックのテイストがほんのり香るトラックのなかで、山崎と幾田は危うくて愛らしい恋の駆け引きを演じるように歌い上げている。サビで繰り返される〈LIKE LIKE〉というフレーズの表現が少しずつ変化し、“好き”という思いが高まっていく構成にも惹きつけられる。

星街すいせい、日本の攻略度は「20%くらい」 2024年のさらなる飛躍で誓う“VTuberの認知拡大”

2023年に音楽シーンに爪痕を残したVTuber 星街すいせい。この1年間の活動を振り返りながら、2024年に向けての意気込みを…

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