ヰ世界情緒「“想い”だけでできるものではない」 日々の創作で芽生えたバーチャルシンガーの矜持

ヰ世界情緒、バーチャルシンガーの矜持

 ヰ世界情緒が、2年3カ月ぶりとなる2ndフルアルバム『色彩』を3月27日にリリースした。同作には香椎モイミ、はるまきごはん、柊マグネタイト、廉、糸井塔、SLAVE.V-V-Rら豪華プロデュース陣を迎え、instrumental曲を含んだ全15曲を収録。1stアルバム『創生』以降、精力的に展開してきた創作活動の集大成的な作品となっている。

ヰ世界情緒 #43 2nd Album「色彩」XFD

 バーチャルシンガーとしてデビューしてから2024年で5年目を迎えたヰ世界情緒。音楽活動を基軸にしながら声優やナレーター、イラストレーターなど、様々な場所で存在感を示してきた。今作『色彩』は、個性豊かなクリエイターによる楽曲を通して、彼女の中で培われた様々な“色”に触れることができる。

 本インタビューでは、ヰ世界情緒が音楽に目覚めた原点からバーチャルシンガーの道を選んだ理由、そこからの歩みと成長について話を聞いた。彼女の現在を作ったクリエイターや作品に対する強いリスペクト、そして自身の胸の中に宿る創作への情熱の一端を届けたい。(編集部)※インタビューは12月初旬に実施。

幼少期は「良い言い方をすると活発な子」

ヰ世界情緒 #42「そして白に還る」【オリジナルMV】

ーー当サイトでは初めての取材になりますので、まずは音楽への目覚めから伺えればと思います。

ヰ世界情緒:私は子供の頃から音楽はもちろん、“音を聴く”という行為そのものがすごく好きでした。歌が入っている曲に限らず、映画やゲームのサウンドトラックであったり、美術館で流れているような環境音楽、身の回りで鳴っている何かが軋むような音……そういう見ているもの以上に世界を広げてくれるような音楽や音にずっと関心を持っていて、その延長線上に「音楽活動をやりたい」という意志があったような気がします。

ーー音楽との出会いは覚えていますか?

ヰ世界情緒:覚えている範囲では、小学1年生の頃に親がもう使わないからとくれた携帯電話の中にベートーヴェンの「月光」が入っていて、それを何度も繰り返し聴いていました。周りの子はアイドルやアニメの曲を聴いていたんですけど、私は声が入っていない、少し暗めな曲が当時から好きで、周りから見ると少し不思議なタイプだったかもしれません。携帯から「月光」を流しながら小学校の校庭にできた水たまりに寝そべって空を見ている、みたいな記憶が残っています。

ーーそれは不思議ですね(笑)。どんな子どもだったんですか?

ヰ世界情緒:幼い頃は恐れるものが何もなかったんです。「放課後にライブやるから、みんな聴きに来て!」と言って、小学校の同級生に手製のチケットを渡して歌を披露したこともありました。良い言い方をすると活発な子、本当に忙しないタイプだったと思います。外で遊ぶのが好きだったらしく、校庭にネッシーを作ってみたり、外を駆け回っていたような、そんな記憶ばかりあります。

ーーとてもわんぱくだったんですね。先ほど、チケットを自作して人前で歌を披露したというお話がありましたが、子どもの頃から何かを表現することがお好きだったんですか?

ヰ世界情緒:そうですね。何かを表現したいと考えていたというよりも、込み上げてくるものを発散していたような感覚が強いです。小さい頃は保育園に通っていて、内容は覚えていないのですが何かのテーマソングを自分で作って、クラスのみんなで歌いたいと先生にお願いしたことがありました。あと、同時期から絵を描くことも好きになって。外に遊びにいく子が周りは多かったのですが、私は画用紙に『ポケットモンスター』の絵やマップを書いたボードゲームみたいなものを作って、みんなに遊んでもらっていました。その頃から絵を描いたり、紙を使って遊ぶことが好きだったように思います。

ーールーツミュージックは「月光」のようなクラシックになりますか?

ヰ世界情緒:それで言うと、映画やゲーム等で流れている劇伴が近いと思います。特に『キングダムハーツ』というゲームの楽曲が強く印象に残っていて。子どもの頃は田舎で暮らしていたので、娯楽が周りになかったし、音楽を聴く手段も限られていたのですが、その環境の中で唯一、ゲームで音楽に触れる機会が多かったように思います。『キングダムハーツ』って、主人公が様々な世界を渡り歩いていくゲームなんですけど、その冒険にすごくワクワクしたんです。今、私は「みんなにワクワクするような気持ちを届けたい!」と思いながら活動しているのですが、それはきっと『キングダムハーツ』から受けた影響も大きいんじゃないかなと思います。

ーーJ-POPで言うと、どういうものが好きでしたか?

ヰ世界情緒:これは今も変わらずですが、宇多田ヒカルさんが好きでした。あとは親の影響でBoAさんや海外のアーティストなども聴いてましたね。ただ、自分の意思で聴き始めたアーティストで言うと、やっぱりVOCALOIDの曲が大きいです。ボカロはインターネットがあれば聴けるので、時間を忘れて聴き漁っていた記憶があります。

 ボカロの中でも特に、心の深い部分に寄り添ってくれるような曲が好きでした。例えば、Treowさんと喜多嶋時透さんが主宰しているELECTROCUTICAや、HAMOさん(現在は葛西大和名義でMiliのメインコンポーザーを担当)をよく聴いていて、私の中の世界を広げてくれるような曲に出会える場所がボカロだったように思います。それに当時のボカロシーンは、今よりももっと手探りで、遊び場的な雰囲気が強かったように感じるので、メジャーな音楽にはないものがたくさんあった。そういう場所で新しい感覚に出会うことがすごく楽しかったです。

ーーなるほど。黎明期のボカロシーンはより実験的で、手作り感の強い楽曲が多かった印象です。

ヰ世界情緒:スマートフォンを持つようになってからは、インディーズゲームやフリーゲームにハマっていた時期もあって。ボカロにしても、ゲームにしても、制作者本人が持っている自由な感覚や感性を感じられるものに惹かれる傾向があったように思います。あと、視覚的なところで言うと、ホラー映画が大好きです。レンタルショップで片っ端からホラー映画を借りてくる、みたいなことをすごい熱量でやっていましたね(笑)。仄暗い世界観の雰囲気に惹かれるようになったのは、そこが影響しているのかもしれません。

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