FANTASTICSが担うポップスの伝統と革新 八木勇征&中島颯太の俳優業に滲む“次世代の色”
内面から自由な色合いを深めていく中島颯太
FANTASTICSが、LDHのネクストジェネレーション/ネクストステージを牽引するからには、もうひとりのボーカル 中島颯太も負けちゃいない。八木が外面的に白さを象徴するなら、必ずしも白基調コーデを着用するわけではない中島は逆に内面的に深める。深めるといっても、意外や意外、『おっパン』で地上波連ドラ初出演というから、言わば浅染めの演技ながら、でもむしろじわじわ浸透するような、深い味わいの色っぽさを可視化している。それを端的に示してくれたのが、第2話。中島扮するゲイの青年・五十嵐大地の優しげな導きによって、コンプラ無視の旧来型おじさんだった沖田誠(原田泰造)が日々アップデートされていく中、腐女子の娘・沖田萌(大原梓)の二次創作漫画の販売会に代わりに参加するという展開。見たことも、聞いたこともない未知なる世界であたふたする誠に対して、大地が叱咤激励するこのフレーズ。
「これってお祭りですよね。お祭りと言えば、踊る阿呆に見る阿呆じゃないですか。同じ阿呆なら踊らにゃ損ですよ」
爽やかながら、ズシンと響く。誠にも視聴者にもズキュンと刺さりまくり。だって現行世代のさわやか青年の口からまさか阿波踊りのフレーズが激励として飛び出すとは誰が想像できた? 今でこそ、米津玄師の「LOSER」などにも織り込まれているフレーズだけれど、古くは市丸が歌う「三味線ブギウギ」の必殺フレーズ。作曲者の服部良一よろしく、中島が何ともさりげなく口ずさむようなセリフ回しは、ボーカリストだからこそのフレージングだと言えるし、八木に比べまだ演技経験が少ないからこそ、より音楽的で自由な自分色をどんどんトライできる。「損」と「ですよ」の間に「トゥフ」と息を漏らす呼吸感も最高……。そうだ、服部といえば、NHK連続テレビ小説『ブギウギ』のモデルとして話題の笠置シヅ子や淡谷のり子に戦中から数々の国民的ヒットナンバーを提供し、クラシックやジャズの世界から“日本ポップスの父”と称されるまでになった大作曲家だ。同作の中島を通じて、実に豊かなポップスの伝統すら伝わってくる。
虹色に輝くファンタスティックなLDHの未来
FANTASTICSがヒット歌謡のカバーで魅せる舞台『BACK TO THE MEMORIES』で、ツインボーカル“ゆせそた”が、80年代、90年代の色とりどりの歌謡曲をカバーし、ご意見番的に振る舞っていた姿がこれでうなずける。「WON'T BE LONG」(バブルガム・ブラザーズ)から「Choo Choo TRAIN」(ZOO)へ、あるいは「LOVEマシーン」(モーニング娘。)から「LA・LA・LA LOVE SONG」(久保田利伸 with ナオミ・キャンベル)へ。曲間をシームレスに感じさせるボーカルフローは、夢のような時間を観客にもたらし、ジェネレーションを超えた歌謡ステージを実現させた。そもそもこのセリフあり、歌あり、笑いありの大衆性は、モーツァルトが広く一般向けに作曲した「魔笛」など、ジングシュピール(歌芝居)的な伝統に則ったもの。LDH内での伝統を考えれば、EXILE以来となる「Choo Choo TRAIN」を正式にカバーできたのが、何を隠そう、FANTASTICSだけである事実にだってつながる。こうした正統性ある伝統を単に過去の模倣とするのではなく、現行の表現方法としてちゃんとアップデートし、現行マナーとして踏まえているからこそ、音楽フィールドではない演技の世界であっても、中島と八木はそれぞれの持ち味を活かしながら、結果的にはグループ全体にフィードバックして、次なる表現へ還元できる。黒でも白でもない、虹色に輝くファンタスティックなLDHの未来が見える。
※1:『若者のすべて HDニューマスター版』DVD封入解説ブックレット「『若者のすべて』このヴィスコンティ作品」より
※2:https://plus.tver.jp/news/155220/detail/
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