首振りDolls、アルバム『ジェットボーイジェットガール』完成 メンバー全員で語る全曲解説インタビュー

 首振りDollsが、『DOLL! DOLL! DOLL!』 に続く、約1年半ぶりとなる新たなアルバム『ジェットボーイジェットガール』をドロップした。ナオ(Dr/Vo)の歌謡曲愛やガレージ愛をはじめ、今作でも彼らだけの個性は爆発していて、全10曲で今の首振りDollsがとてもいい空気感のなかにいることがわかる。

 今回リアルサウンドでは、全曲解説インタビューを企画。3人全員による制作の背景から完成した現在まで、ひとつずつ丁寧に紐解いていく。(編集部)

原点回帰のようなアルバムになった

ナオ(Dr/Vo)

――期待しているのはいつも通りなんですが、首振りDollsらしい安心感のあるアルバムですね。聴いていると、随所でニヤけてしまいます。

ナオ:ありがとうございます。よかった、そう言っていただけて。たしかに、ニヤニヤ要素は随所にありますよね。

――ライブ会場限定で販売されていたシングルCD『PSYCHO SISTER!!!!!』は今回のアルバムの先行盤としての意味合いもあったと思いますが、このアルバム自体はどんなものにしようと考えていたんですか?

ナオ:生きていたら、それだけで自然に曲が出来上がってくる活動をしているわけで。だから、新しい曲をやりたくなってくることもあるんですけど、最近のライブはフロアの爆発力がより高くなってるなと感じていて、もっと起爆剤になるような楽曲がほしかったんです。結果として、そういう楽曲が詰め込まれてるんじゃないかなと思います。メンバーと事前にイメージを擦り合わせていたわけではないんですけど、それぞれが自然とそういう曲を持ってきたと思うし。

ショーン・ホラーショー(Ba/以下、ショーン):とにかくみんなで一緒に作ることを心掛けて。実際にジャム的に作り上げた感じがあるんですよ。

ナオ:そうそう。流れでそうなったんですよね。特に示し合わせることもなく、その時にやりたいことをやった感じで。

ジョニー・ダイアモンド(Gt/Vo/以下、ジョニー):コンセプト的なものは特に考えていなかったけど、出来上がってみたら、個人的には原点回帰のようなアルバムになった気がしています。1曲目の「ジェットボーイジェットガール」もそうなんですけど、個人的にはあまり周りの目を意識しなくなったというか。

――周りの目を気にしていたところが以前はあった?

ジョニー:前作まではちょっとあったと思います。

――それはどういう見え方なんですか?

ジョニー:「ヒット曲を作ったろう!」っていう。

ナオ:今回はヒット曲を作る気はなかったの(笑)?

ジョニー:いや、そういうわけじゃない(笑)。でも、そういう意識がまったくない状態から一度作ってみようかと。ちょっと吹っ切れたというか、すっきりした気持ちで臨んでいたような気がします。当然、産みの苦しみもあるし、結構難しかった曲もありますけどね。

ナオ:「ジェットボーイジェットガール」を作ってる時は、いかにダサくするかみたいな感じで(笑)。

ジョニー:いや、ダサいと思ってないよ(笑)!

ナオ:録音してみると、思ったほどダサくならなかったんですけど(笑)、曲を作っている時は「どうやったらもっとバカっぽくなるかな?」みたいなことを考えたりはしましたね。もちろん、それはいい意味で。それこそ、さっき言っていただいたような聴いていてちょっとニヤけちゃうような部分を、みんなでワイワイ言いながら作ったアルバムだなって感じがしますね。

――幕開けの「ジェットボーイジェットガール」というタイトルだけでもニヤけますが(笑)、これはどこから出てきた言葉なんですか? ジェットでロックンロールと言うと、ギターウルフが思い浮かんでくるんですよね。

ジョニー:これは歌詞にも関係があるんですが、僕らの地元である北九州・小倉で開催されていたイベントのタイトル名なんです。僕らが若い頃、そのイベントによく出させてもらっていて、そこでナオとも知り合って。だから、思い入れもあるし、昔の自分たちの町の歌みたいな意味があるんですよね。

ナオ:小倉っぽいんですよね。

ジョニー:だから、まず地元の人たちに聴いてほしいんです、イカれた大人たちに。

ナオ:すっかりイカかれてしまったからな、俺たちもあの町で(笑)。

――そこが先ほどお話されていた原点回帰のひとつなんですね。

ショーン:でも、「ジェットボーイジェットガール」は、最初はすごくゆっくりな曲だったんですよ。

ジョニー:最初はブルース調でゆっくりと始まって、最後にこの速さになる予定だったんですよ。でも、バカっぽさにフォーカスしたらこうなっちゃって(笑)。

ナオ:ダサくしていったら速くなった(笑)。選択肢がふたつあったら、より奇抜なほうを取った感じですよね。

――Motörhead的な勢いを感じますよね。

ナオ:そうですね。Motörhead的でもあるし、スタジオで曲を作ってる時の感覚だとザ・スターリンっぽさがあったんですよね。録音してみると、その部分は薄くなったんですけど。

ジョニー:これを1曲目に持ってきたのは、The Damnedの「Machine Gun Etiquette」的なイメージなんですよ。挨拶代わりという感じで、「ジェットボーイジェットガール」がそのままアルバムタイトルで。

ナオ:曲順を決める時に、不思議と3人とも1曲目に「ジェットボーイジェットガール」を持ってきてたんですよね。

ジョニー:曲名がそのままアルバムタイトルになったことは今までなかったから、それも面白いなと。

――それぐらい象徴的な曲でもあったんでしょうね。

ナオ:そうですね。でも、ジョニーが曲を持ってきて、ギターを弾きながら「こんな曲」って俺たちに教えてくれた時には、まさかアルバムタイトルになる曲になっていくとは全然思わなかった。最初に聴いて「この人、ふざけてるのかな?」って思ったぐらいでしたし(笑)。すでにライブでも何回かやったんですけど、お客さんも喜んでくれるんですよね。結果的に1曲目に相応しい、いい曲ができたなと思いますね。

――ベースソロはワウを使ってるんですか?

ショーン:いや、歪みだけですね。あとはテクニックで(笑)。

ジョニー:俺が作る曲って、ベースソロを入れたくなりがち(笑)。自分がソロを弾いたあとに、ショーンもソロを弾くという。

――短くて速い曲とはいえ、3人それぞれの色を前面に押し出す要素があることで、一本調子で終わらない面白さがありますよね。

ナオ:ありがとうございます。曲のなかにあんなに速いフィルインを入れたのは初めてですね。あれもジョニーのアイデアで、細かいフィルのほうがダサいからって(笑)。

ショーン:いろんなバカっぽく聴こえるフィルをやってみたね。

ナオ:そう。「ジョニーが言ってる面白いフィルって何?」みたいな(笑)。

ジョニー:フィルじゃないけど、それこそThe Damnedの「New Rose」のイントロで特徴的なドラムがあるけど、あれも同じような雰囲気ですよね。

ナオ:すごく好きなんですよ(笑)。でも、最近、ジョニー・サンダースの「Chinese Rocks」とかNew York Dollsの「Personality Crisis」をコピーしたんですけど、パンクって回数が変なんですよね。それをジョニーは天然でやるんですよ。

ジョニー:The DamnedとかNew York Dollsとかも、たぶんそういう意識はしていなかったと思う。その場のノリというか。

ナオ:でも、あれはできる人とできない人がおるよ。

ジョニー:自分の頭のなかではそれが正しくて、きっと変だとは思ってないよね。

ナオ:もう体に入ったからいいけど、レコーディングの時は大変でしたね。ベースソロにしても変なところから入ってくるじゃん(笑)。でも、かっこよかったらなんでもいいんですよね。首振りDollsの「ロックンロール」という曲は、ライブでロックンロールギターを必要以上に祭り上げて、ジョニーにギターソロを弾いてもらいますけど、ギターの音とか手癖とか独特のリズム感とか、今となってはレジェンド的なロックンロールバンドたちのセンスを、彼は持ってるんですよね。あれはやろうと思ってできることじゃないですから。それが存分に出てる気がします。

ジョニー・ダイアモンド(Gt/Vo)

――真似しようと思っても真似できない、独特のタイム感ってありますもんね。ライブで耳にした時も思ったんですが、2曲目の「PSYCHO SISTER!!!!!」はあらためてアルバムのなかで聴いてもインパクトがありますね。

ナオ:この曲は、俺が17〜18歳ぐらいの時からずっとやりたかったことをやってるんですよ。メロのバックの「ドンタン、ドンタン」って、大体ドラマーはフロアタムを使うんですけど、今回はラックタムでやっているんです。中3の時に、The Hivesの「Walk Idiot Walk」のMVを観て「こっちでやるんや!?」と思ったんですよね。これまでなかなか機会がなかったんですけど、「この曲だ!」と思って、やっとやれました(笑)。フロアとはまたちょっと違う、腰だけじゃなくて肩が揺れる感じがあるというか。

――軽やかになる。

ナオ:そうそう。効果的にやっと使えたなと。

――ベースラインもすごく印象的なんですよね。

ショーン:ベースラインは、ジョニーさんが持ってきたものをそのままユニゾンしてます。最初に聴いた時から、「なんていい曲だ!」って思ったんですよ(笑)。「ジョニーっぽくないぞ、この曲は」って。

ジョニー:ショーンがめっちゃ喜んでたのが印象に残ってますね。「自分が作りたかった」って。

ショーン:そうなんです、大好物なんですよ。基本的にこういう曲は俺担当みたいな感じがあるんですけど、すごくいい曲をジョニーさんが持ってきたっていう。

――それこそ、ベースから作ったのかなと思いました。

ジョニー:ギターリフからですね。

ナオ:ジョニーがリフものを持ってくると、大体いいんですよ。「悪魔と踊れ」の時もそうだったし。ただ、なかなかリフものを持ってこないんですよ。

ジョニー:歌ものばっかり持っていってね(笑)。

ショーン:最初はあのリフをループさせて、ダンスチューンみたいにしようとか言ってましたもんね。

ジョニー:このリフを思いついた時にも、このリフ一発で通して、最後にみんなで「ウォーウォー」言って終わろうってことだけは決めていたんです。ただ、いつもなら俺がメロディも歌詞も作るんですけど、それだと洋楽っぽさがなくなりそうだから、これは最初から歌詞とメロディをナオに任せました。でも、最後の「ウォーウォー」だけは譲らなかったですね。

ナオ:「いらなくない?」って言ったけど、譲らなかったですね(笑)。

ジョニー:あと、「タイトルも『PSYCHO SISTER!!!!!』で決定で!」って(笑)。リフと同時に浮かんできた言葉だったんですよ。

ナオ:歌詞を書いてってお願いされたのに、タイトルは決められているという(笑)。

――かなりイメージが限定的になりますよね(笑)。「PSYCHO SISTER!!!!!」と聞いて、ナオくんはどんな光景を思い浮かべたんですか?

ジョニー:たしかに、どうやって作ったのかまだ聞いてない。

ナオ:ちょっとキツめのメイクをしたシスターのお姉さんがタバコ吸っている、かっこいい白黒写真とかあるじゃないですか。あの悪シスター、好きなんですよね。そのイメージ。

ジョニー:妹のほうじゃなかったんだ?

ナオ:作詞をする時にさ、“シスター”の意味を調べたんだけど、Mott the Hoopleの「ロックンロール黄金時代(The Golden Age of Rock ‘n’ Roll)」に“シスター”という言葉が出てくるんですよね。その和訳は“女の子たち”の意味で、限定的ではなく、すごく広く使うこともあるんだと思ったんですね。そこからスラスラ書けて。ちょっと変な女の子のイメージですね。

――身近にそういう人もいます?

ナオ:そういう人がいっぱいいたんですよね、今まで。自分がそういう感じだったからなのか、そういう雰囲気でバンドをやってたからなのかはわからないけど、そういう女の子はいっぱいいたので、イメージはしやすかったですね。みんな、頭悪いんですよ――これは愛を込めて言ってますけど(笑)。

――そういう意味では書きやすい題材だったんですね。

ナオ:そう。だから、バカっぽい言葉を使いたくて、〈カミソリ〉とか〈カミナリ〉とか、そういう言葉を繰り返してサビで使うと面白いかなって。

――よくわからないけどかっこいい歌詞ってありますよね(笑)。

ナオ:ワードチョイスが絶妙にダサい、みたいな(笑)。そう思うと、今回はやたらダサいにこだわった気がするな。

ジョニー:すごくいい歌詞だと思います。俺には絶対書けない。自分で書いたら、たぶん恋愛もの……結局、シスターに振られる感じの曲になりそうな気がするから。

ナオ:ジョニーが歌詞を書くと、大体振られるんだよね。それか、もういない人のことを歌ってる。基本的にロンリーボーイなんだよ。

ショーン・ホラーショー(Ba)

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