コレサワ、日常を生きるすべての人へ贈る極上の歌 ミニアルバム『日々愛々』で描いた7つの物語
普通の人が歌わないことを歌っていくのがコレサワだから
――今作では「君のタトゥー」が打ち込みによる、かつ浮遊感のある曲で。この曲は、歌い方にしても〈I love you〉を囁くように歌っていたり、ドラマティックですね。
コレサワ:そこもお気に入りポイントです。ちょっと外して歌ったり、かわいく歌ったり、歌い方ひとつで私のキャラクターが出せたらいいなって思っていました。特に「君のタトゥー」の曲調はあまり私の曲では多くないものなので、語尾や歌い方で私のいつものキャラクターが出ていたらいいなという。
――昨年の8月に配信シングルとしてもリリースされた「ライブ終わりに」。相手への独占欲やままならない思いが率直に描かれているのがコレサワさんらしい曲でありつつ、ちょっと過激さもある曲ですね。
コレサワ:これは結構前からあった曲ではあるんです。でも、「これを私が歌っていいのかな?」というか、ちょっとストッパーのようなものをかけていた曲だったんですけど、そのストッパーが無駄なものだと気づいて。MVも作って、配信シングルとしてリリースしたいと相談しました。
――そのストッパーっていうのは?
コレサワ:歌詞にある〈抱いて〉のところですかね、直接的な表現ですし。ただ、昔の私だったら気にしてないと思うんです。誰もコレサワを知らない時だったら、たぶん気にせずに歌っていたけど、今はいろんな私の曲があって、それを好きなファンの人が、私がこの歌を歌ったらどう思うのかを気にしていたんですけど。でも、そこを気にする必要はなくて、むしろ普通の人が歌わないことを歌っていくのがコレサワだから――。これはライブでも盛り上がる曲だし、ライブでみんなが手を上げながら一緒に〈抱いて〉のところを歌ってくれるようになるまでやり続けたくて、ちょっとずつ育てているんですけど。
――「これを歌っていいのかな?」というのが吹っ切れたのは、何が大きかったですか?
コレサワ:自分の制作のチームが変わったりとか、レーベルも変わったり、大人の方たちがたくさんいてサポートしてくれるのって、すごく楽なんですよね。でも、なんでも考えてくれるから自分も楽をするようになっちゃうんです。たぶん私は自分で「あれやりたい」「これやりたい」って言っていったほうがいいし、ファンの人もきっとそれを楽しみにしていると思うから。自分を出しやすい環境になったところで、今までの曲とか、みんなどういうコレサワの曲が好きなのかを見つめ直したのがきっかけではありましたね。そこで、自分でストッパーをかけているけど、それがない私のほうが面白いと気づいて、「じゃあ(ストッパーは)いらないんじゃない?」って。そういう気持ちだったと思います。
――先ほどライブで掛け声をしたりと言っていましたが、「デートの前の夜に」は、まさにそういう曲ですよね。歌謡曲やアイドルソングっぽいかわいらしい曲だなと思いきや、後半ではまさかのコールまでも入ってきて。
コレサワ:これは、みんなも言うのが絶対楽しいだろうなと思って入れてみました。これも最近作った曲ではなくて、まさに自分がデートする前の夜に作ったすこし古い曲で。私、前の日に服を決めるタイプなんですけど、着ていく洋服を決めながら、口ずさんでいた歌です。それをメモしてずっととっておいたもので。なので、みんなにもデートの前の夜とか、コーデを決める時に聴いてほしいなって思ってます。
――せっかく夜完璧にコーデを決めたのに、朝になると「なんか違う!」ってなる、そのリアルさがいいですよね。
コレサワ:毎回なんですよねえ。「明日は絶対にこれを着る」って決めていたのに、朝起きると「いや、こっちじゃないかも」っていう。私が遅刻する時は、だいたいが服で迷っている時なので(笑)。ここに書いてあることは全部私のことなので、共感してもらえるのかはわからないし。「みんな、この気持ちをわかってくれるかな?」っていうのが心配なところではあるんですけど……。
――わかりますよ(笑)。気持ちを盛り上げてくれるコールが最高なわけですが、このコールを曲に入れちゃうっていうのはどんな発想からだったんですか。
コレサワ:ずっとやってみたかったんです。海外のライブに行くとお客さんがすごく歌うじゃないですか。でも、日本だとなかなかそこまではいかなくて、でも明らかに歌っていい曲の場所ってあるんですよ。それをわかりやすくレコーディングしたので、ここは真似してほしいなと。私が何を歌っても、「かわいいよ」を返してほしいです。
――ライブを重ねるうちに自然発生的にそれができていくのはわかるんですが、曲の時点で入れちゃうんですねっていう、コレサワさんの遊び心を感じました。
コレサワ:さっきの話とも通じるように、どうしたらライブでファンとコミュニケーションがとれるかと言ったら、今まではMCでしかそれができないと思っていたけど、曲中にコールがあったり、みんなで歌ったり、そういうところで観ている方たちの楽しさって増えると思うから。そういう曲をどんどん増やしたいし、みんなにもこういうポイントになる場所はどんどん歌ってほしいという気持ちなんです。
――「Fコード」は高校生の時に書いた曲ということですが、それをここにきて収録しようとなったのは?
コレサワ:この曲は、10代の頃にライブで歌っていたんですけど、高校生の時の曲だし、Fコードも弾けるようになっちゃってるからもう歌えないなと思っていたんです。でも、昨年ファンクラブイベントで「ファンクラブのライブだからこそ歌える曲をやりたい」と思って。それで、「Fコード」を歌ったんです。そうしたら、そのあとのサイン会で「音源にしてください!」「あの曲すごくよかった!」って言ってもらえて。
たしかにキャッチーな曲なんですよね。だから、もうFコードが弾ける私が歌うけど、弾けない人もいっぱいいるだろうし、甘酸っぱい高校時代の気持ちを今歌ってみようかなと思って。歌詞の〈鳴らない携帯に問いかけた〉とか〈君からのメール〉とか、もう死語なのかな……って思いながら歌ってます(笑)。
――ファンの方の感想もそうですけど、この頃からすでにこれはコレサワさんの曲だなっていうのがわかりますよね。今に続く原型ができているというか。
コレサワ:Fコードが弾けないことを、こういうラブソングにしているのは私だけなんじゃないかな? 私にしか書けない視点というか、私にしか書けないストーリーを当時から意識していて。そこは個性だと思っているし、原点ではありますね。
――「10代の私、やるな」という感覚ですかね(笑)。
コレサワ:私、かわいかったんだなと思います(笑)。音楽を始めたばかりで、この曲は本当にFコードが弾けない頃、人生で3、4曲目くらいにできた曲だったから。今ギターを始めたばかりの人は共感してくれるんじゃないかなって思います。
――その頃の10代の自分を振り返って、今の自分には何が加わっていったと思いますか?
コレサワ:しがらみ、締切り(笑)。
――(笑)。
コレサワ:なんというか、大人になってしまったなというか。でも、やっぱり私自身、あの頃よりは恋愛経験が豊富なので。ピュアじゃないものも見てきたし、それが今の私のいい渋みではあると思う。ピュアピュアな私を体感できる一曲ですね(笑)。
――サウンドもまた爽やかですからね。
コレサワ:当時はYUIさんが好きで。本当に自分はYUIだと思って歌っていたし、ギターを始めたきっかけもそうだったし、だから2000年代のザ・J-POPみたいなアレンジを参考にしています。