爆風スランプ、再始動決定 岡崎体育やサツマカワRPG、青崎有吾ら異分野の著名人も虜にするスタイル
「大きな玉ねぎの下で〜はるかなる想い」が、時代を超えて多くのミュージシャンにカバーされ続けていることに表れているように、後続のミュージシャンたちに与えた影響も大きい。最近だと、岡崎体育が、優里のカバーで知った同曲が、2023年の「今年いちばん響いた曲」になった、という話を、取材でしている(※1)。
また、小説家やマンガ家やお笑い芸人などの、他ジャンルのクリエイターで、爆風スランプから影響を受けたという人も多い。『サンプラザ中野のオールナイトニッポン』から入って音源を聴くようになった、という人もいれば、「Runner」のヒットでバンドを認識し、作品を遡っていって、「え、こんなおもしろいことをやっていたのか!」と、ハマった人もいるだろう。2022年の『R-1グランプリ』決勝で、「旅人よ〜The Longest Journey」をBGMに使ってフリップ芸を披露したサツマカワRPGは、そのケースかもしれない。
なお、作家の青崎有吾は、『好書好日』のコラムコーナー「大好きだった」への寄稿で、2ndアルバム『しあわせ』を取り上げていた(※2)。後にパート2も作られた名曲「青春りっしんべん」への言及を読んで「まさに!」と思ったものである。
あともうひとつ。作詞はほぼサンプラザ中野(当時はまだ「くん」はついていなかった)だが、作曲はメインのソングライターがおらず、河合・江川ほーじん・末吉の3人が同じレベルで曲を書ける、つまり「シングルはこの人の曲にする」みたいな格差がない、という点でも、他になかなか例を見ないバンドであった、とも言える。
というわけで。ライブでも、花火をくわえたり、頭に置いたワタみたいなやつに火を放ったりと好き放題やっていて(基本的にすべて中野)、そのキャラクターのままテレビにも進出。セットを破壊するなど暴れ回り、一部でひんしゅくを買いつつ話題になる。で、そういうロックバンドを知らなかった当時の中高生の心を、がっしりとつかんだのだった。私のような奴です、先ほど書いたように。
で、ほどなく、サンプラザ中野の、実はクレバーで優しくて親しみやすいキャラクターが認知され始め、『オールナイトニッポン』金曜1部のパーソナリティーに抜擢されるなどして、世間への露出が増えていく。
それと同時進行で、バンドの方向性も「アングラ」「過激」「どファンク」から、ポップで開かれた方向に発展していき、デビューから4年後に、前述のとおり「Runner」が大ヒットする。
しかし、メンバー内でおそらくもっとも「どファンク」志向の強かった江川は、この曲を最後に脱退。曲がヒットしてテレビに出まくっている時期にはベーシストが不在、という事態になった。
出演のたびに、聖飢魔IIのゼノン石川や、サザンオールスターズの関口和之、筋肉少女帯の内田雄一郎などが代わりに出演していたのを憶えている。その後、元Topsの和佐田達彦が加入、中野に「バーベQ和佐田」と命名された。
そして、前述のように、「リゾ・ラバ -resort lovers-」や「旅人よ〜The Longest Journey」などのヒット曲を生むが、その後、一時休養に入ったり、それぞれがソロや別ユニットで活動したり、『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』(日本テレビ系)の企画ユニットであるポケットビスケッツの曲をパッパラー河合が書いてメガヒットしたり、またバンド活動に戻ったり、など、いろいろ紆余曲折あった末に、1999年4月に活動を休止した。
爆風スランプは1984年デビューなので、今年2024年で40周年。それを記念して、このたびの再始動が実現した、ということなのだろう。
再始動ツアーは10月31日から11月17日まで、名古屋ELL×2・兵庫県立芸術文化センター・LINE CUBE SHIBUYAの4本が発表された。ツアーのタイトルは『爆風スランプ〜IKIGAI〜デビュー40周年日中友好LIVE “あなたのIKIGAIナンデスカ?”』。
新曲は、リリース時期や形態はまだ発表されていないが、サンプラザ中野くんは「テーマはIKIGAI」ということを明かしている。ファンキー末吉は、「IKIGAI」は、「メンバーの誰かが作曲した曲」ではなく「みんなで作曲した曲」にしたい、というコメントを出した。
その新曲と、4本のツアーだけで終わるのか、ニューアルバムやさらなるライブまであるのかは、まだわからないが、楽しみに待ちたい。とりあえず「爆風スランプと言えば日本武道館」なので、それは実現してくれればなあ、と思う。
それから。このツアー、誰もが聴きたい数々のヒット曲が並ぶセットリストになるのだろうが──ここまでの記述でわかると思うが──初期の「過激な爆風スランプ」にショックを受けて、結局後期まで追いかけることになったファンとしては、初期の、しかもシングル以外の曲も織り交ぜてくれると、とてもうれしい。
特に、「青雲」や「1986年の背泳」「THE TSURAI」あたりのシリアス方向の曲をやってくれたりした日には、むせび泣くかもしれない。破天荒でナンセンスで過激な曲だけじゃなく、「青春」だけでもなく、それらの曲のような「少年期/青年期の鬱屈」もリアルに歌にしてくれるかけがえのないバンドが、爆風スランプでもあったので。
さっき、小説家やマンガ家などの他ジャンルのクリエイターで、爆風スランプから影響を受けたという人も多い、ということを書いたが、彼らも、このあたりの曲に自身を重ね合わせていた、だからより心に深く刺さったのではないか、と思う。
※1:https://ananweb.jp/news/519311/
※2:https://book.asahi.com/article/13278208
■ライブ情報
『爆風スランプ〜IKIGAI〜デビュー40周年日中友好LIVE
”あなたのIKIGAIナンデスカ?”』
【前夜祭!(愛知公演)】
2024年10月31日(木) 愛知県 名古屋E.L.L. 開場18:00/開演19:00
2024年11月1日(金) 愛知県 名古屋E.L.L. 開場18:00/開演19:00
【兵庫公演】
2024年11月4日(月・休) 兵庫県 兵庫県立芸術文化センター 開場16:00/開演17:00
【東京公演】
2024年11月17日(日) 東京都 LINE CUBE SHIBUYA 開場16:00/開演17:00
チケット料金
<前夜祭!(愛知公演)>
スタンディング:6,600円(税込)
<兵庫・東京公演>
指定席:11,000円(税込)
最速先行受付(抽選)
URL:https://w.pia.jp/t/bakufuslump-ikigai/
受付期間:3月8日(金)12:00〜3月25日(月)23:59
■関連リンク
アーティストホームページ:https://www.sonymusic.co.jp/artist/BakufuSlump/
SNS
サンプラザ中野くん X:https://twitter.com/spnk
パッパラー河合 X:https://twitter.com/papalakawai
バーベQ和佐田 X:https://twitter.com/bbqwasada
ファンキー末吉 X:https://twitter.com/satoru93604
爆風スランプINFO X:https://twitter.com/spnkstyle
爆風スランプ全曲ストリーミング:https://smdr.lnk.to/o2yjv