ENHYPEN、ワールドツアーアンコール公演『FATE PLUS』にかけた7人の思い 詳細レポートで紐解く

 楽しく遊び終え、瞬時に切り替えたステージモードで「Go Big or Go Home」を披露したあとは、再びダークテイストなENHYPENの世界観へと観客を引き込む。冒頭のVCRで登場したステンドグラスの部屋には、腐敗した食べ物や人骨のようなものが確認でき、映像でも背筋を凍らせるほどに不気味な光景が広がっていた。目を閉じて苦しげに顔を歪める彼らは何と闘っているのだろうか。その瞳からは光が失われ、一筋の涙がこぼれ落ちた。

 幕が開き、NI-KIの人間離れしたソロダンスが誘うのは、ひとりだけの踊りに酔って堕ちていくさまを描いた「Chaconne」。まるで血に染まったかのようにも見える赤黒い衣装に身を包み、「死者を復活させるためのダンス曲」という意味を持つバロック時代の音楽をタイトルに冠したこの曲で、彼らの耽美的な世界を表現していく。続く「Bills」、「CRIMINAL LOVE」では、城の廊下のような場所でシャンデリアや大きな月をバックに舞い踊る7人。バイオリンを筆頭にストリングスの緊張感ある音色が「One In A Billion」のはじまりを宣言すると、リズミカルなロックとHIPHOPのビートに乗せて、燃え上がる炎にも劣らない熱量で魅了した。

 「スタンドアップ! 立ってください!」と、観客とともに気合いを入れて臨んだラストスパートの先陣を切ったのは、ストリングスバージョンで魅せる「Bite Me」。さらに、ツアーを通じて本公演がついに披露の場となった待望の「Fate」では、そのイントロが鳴った瞬間から会場が歓声の嵐に包まれる。イントロのJUNGWONとJAYの掛け合いに加え、ジャケットを肩から落としたシルエットすらものにしてしまうNI-KIのエンターテイナー性にはお手上げだ。熱気が冷めやらぬまま、昨年11月リリースのアルバム『ORANGE BLOOD』収録曲「Sweet Venom」が呼吸も忘れてしまうような怒涛のパフォーマンスのトリを飾り、幕が閉じた。

 最後の鍵となるVCRでは、手の甲に浮かぶ紋章のような模様を光らせ、あたりを見回していた7人が、一気に明るくなった日が照らす外の世界へと笑顔で駆け出していく。その指や首に残る血や噛まれたような傷は、彼らが何者かであることの証だろうか――。

 アンコールでは、花々に囲まれた宙に浮かぶステージから、ENGENEを見つめるように「Orange Flower (You Complete Me)」を披露。先ほどのパートとは打って変わって穏やかな表情でやさしい歌声を奏で、最後には観客とアカペラで一緒に歌って心と心を繋いだ。

 MCでは、7人それぞれの今の率直な想いが語られた。NI-KIは、「7月のソウル公演を思い出します。あの時は、まだ身体に馴染んでいない状態で見慣れない姿をお見せして、少し物足りなさが残っていた気がします」と『FATE』ツアーを振り返ったうえで、「今回、数曲追加されて新しい姿をお見せできてよかったです。ENGENEの皆さんはどうでしたか? 僕は個人的に『Fate』がとてもよかったです」と話すと、観客からは同意のようにして歓声が上がる。ツアーのタイトルにも掲げられていながら、これまでの公演では披露されることがなく、SNSをはじめ、パフォーマンスしないことに疑問も寄せられていたという「Fate」。NI-KIはその反応を見て、「(披露した時には)本当に喜んでくれそうだな」と思いながら練習を重ねたといい、実際の会場の盛り上がりにも満足げな表情を見せていた。

 ソウルでのアンコールコンサートが念願だったと語るSUNOOは、公演中も終始瞳を輝かせていたメンバーのひとりだ。「Orange Flower」を歌いながら、頑張って準備したという今回のアンコール公演やずっと恋しかったというENGENEに想いを馳せ、少々涙腺を刺激されたというが、「『Orange Flower』は明るい雰囲気でお見せすることができて、とてもよかったです」と嬉しそうに微笑んでいた。

 「たくさんコンサートをしたと思っていたのですが、またソウルに戻ってきたら、正直緊張しました」と告白したHEESEUNGは、準備してきたたものをしっかりと見せることができ、無事に肩の荷を下ろすことができたそう。また、KSPO DOMEという会場で今回3公演も開催できることに言及し、「こうして幸せな経験をさせてくださるENGENEの皆さんに、いつも感謝しています」「継続して努力して、ENGENEの皆さんにもっと大きな感動を与えられる歌手になりたいと思います」と伝えていた。

 JUNGWONは、「『MANIFESTO』(2022年開催『ENHYPEN WORLD TOUR 'MANIFESTO'』)ではアンコール公演ができなかったので、残念な気持ちがあったんです」と、前回のワールドツアーを回想。「今回の『FATE』ではアンコール公演を開催できたうえに、3公演ともチケットが完売して、その記事を家族と共有するほど嬉しかったです」「本当に感謝の気持ちがいちばん大きいです」と伝えた。公演時間には外気温が5度を下回るなか足を運んでくれたファンに「今日は本当に寒かったと思います。気をつけてお帰りくださいね」と気遣う姿も、彼らしい愛の示し方だ。

 JAKEは、「『FATE PLUS』を準備しながら、『FATE』と似ている点も多いですが、どうしたらもっと面白く新鮮に感じられるか、とても悩みました。歌や振り付けを追加したり、ディテールを工夫したりしてたくさん努力をしたのですが、どうでしたか?」と、アンコール公演に込めた想いを語る。『FATE』ツアーでもこれまで世界中を巡り、各国で応援している数多くのファンの姿を直接目に焼きつけてきたが、そのようにステージやMCでのコメントを重ねるなかで自身の成長を実感したようで、「もっと一生懸命に努力するJAKEになります!」と頼もしく宣言していた。

 SUNGHOONは、約半年前のソウル公演から再び戻ってきたアンコール公演を迎え、「内容があまり変わっておらず、ENGENEががっかりしたらどうしようかとも心配しましたが、まったくその必要はありませんでした」「僕はもっとENGENEの皆さんの気持ちを知ろうと努力しますし、最近はENGENEの立場で考えることがとても多くなってきたようです」とコメント。そのうえで、「ENGENEは、ただ僕たちを見ているだけでも本当に思い出になるんだなと思いました」とファン心理の真髄に気づくことができるのは、いつもENGENEのことを深く考え、見つめている彼だからこそ。SUNGHOONは続けて、「目に見えない僕たちの運命の糸が固く、絶対に解けない結び目になるよう、もっと努力するENHYPENになります」と想いの丈を言葉で伝えてくれた。

 これを受け、リーダーのJUNGWONも、「どんな運命が僕たちを導いたとしても、ENGENEの横にはENHYPENが、ENHYPENの横にはENGENEがいるという事実は変わりません」「ENGENEの信頼に応えられるような素敵なアーティストになります!」と、グループとして一段と成長していく意思を表明した。

 最後には「Karma」を歌いながら、時折客席にマイクを向けて心を通わせ、待ち望んだソウルでのアンコール公演を噛み締めたENHYPEN。配信を通じて全世界から見守るENGENEに向けても、自分たちの知り得るすべての言語で「ありがとう」「愛してる」の言葉を届けるのも彼ららしい。すでに世界中にファンダムを広げ、グループとしても確実に進化を遂げつつ、現状に妥協することなく常に高みを目指す彼らの謙虚な姿は、誰もが真似できるものではない。4月からはアメリカでのアンコールツアーも控えたENHYPENの今年の活躍を、ますます楽しみにしていたい。

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