ヤングスキニー かやゆー×戦慄かなの、音楽を信じて進む独自の道 初共演で覆ったイメージ
ヤングスキニーが2月14日に配信リリースした「ベランダ feat. 戦慄かなの」は、バンドとして初のフィーチャリングゲスト・戦慄かなのを迎えた新曲。打ち込みを用いた浮遊感のある曲調が新鮮で、“ベランダ”というシチュエーションを通して男女の関係をありありと描いた歌詞にもかやゆーの個性が光っている。今回なぜ戦慄かなのをゲストとして迎えたのか、そしてどのように打ち解け合って、制作が進んでいったのか。かやゆーと戦慄にじっくり話を聞いた。(編集部)
「音楽活動で声をかけていただけて、断る理由がない」(戦慄)
――最初に、ヤングスキニーの新曲「ベランダ feat. 戦慄かなの」にフィーチャリングゲストとして戦慄さんが参加した経緯を教えてください。
かやゆー:誰か女性ボーカルを入れてやってみたいと、1年前くらいから思っていて。「どんな曲がいいかな」と思っていたときにちょうどこの曲ができたんです。で、この曲に女性ボーカルを迎えようと思ったときに、フィーチャリングの候補として女性のバンドマンというアイデアもあったんですが、それだと面白みがないなと思って、違うジャンルの人を探していて。そんなときにYouTubeで戦慄さんがゆゆうたさんと一緒にやっているピアノの弾き語り動画を見つけたんですが、普段の曲だとあんまりわからなかったけど、すごく綺麗な声だなと思って。
戦慄かなの(以下、戦慄):わぁ、嬉しい!
かやゆー:この曲に合うんじゃないかなと思ったので、全然交流はなかったけど、とりあえず声をかけてみようと思ってお願いしました。
戦慄:私は普段あまりバンドは聴かないんですけど、ヤングスキニーとは一度対バン(2023年8月開催『TOKYO BUZZ MUSIC FESTIVAL』にヤングスキニーと悪魔のキッスが出演)したことがあって。二つ返事で「やらせてください」って言いました。「なんて光栄なことだろう」と思いました。
――馴染みのないバンドサウンドに、フィーチャリングゲストで参加するということに対して不安や抵抗は全くなく?
戦慄:全くないです。嬉しい! 言うて、私はイロモノ枠みたいに思われていることが多くて、エンタメとしてのコラボはやったことがあったけど、音楽活動で声をかけていただけたのはめちゃくちゃ嬉しかったです。断る理由がないと思いました。
――かやゆーさんは声が綺麗だという理由でお声がけされたとのことですが、戦慄さんに対してはどのような印象を持っていましたか?
かやゆー:「怖そう」でした。レコーディングで初めて会ったときに「私、怖くないから何でも言ってね」って言われたんですが……逆に怖かったです(笑)。
戦慄:なんで(笑)! スタッフの方から「かやゆーが戦慄さんのことを怖がっている」って聞いていたんだけど、「私、楽屋に挨拶に行っただけだったのになんで?」って思ってました(笑)。
かやゆー:対バンのとき、仲が良いバンドも一緒だったんですが、楽屋挨拶のときにCDを1枚持って行ったらしいんですよ。そしたら「え、私の分、ないの?」って言われたって言ってて。それを聞いて俺らは怯えてちゃんと2枚持って行きました。
戦慄:あはは(笑)。私的にはコミュニケーションのつもりだったんだけどな〜。とりあえず「怖がっている」って聞いていたし、私のほうが年上だから、レコーディングのときは言いづらいだろうなと思って「何でもビシバシお願いします」というスタンスで挑みました。
――実際に一緒に音楽を作ってみて、お互いの印象は変わりましたか?
かやゆー:まず僕は、自分の作った音楽が自分の声以外で形になることがなかったので、普通に感動しました。無意識に歌っていた癖も、他の人だと歌いづらいんだなということに気づいて。最初は自分の癖に合わせるように歌ってほしいと思っていたんですが、それじゃ面白くないなと思って、戦慄さんの癖のまま歌ってもらったりして。形がガラッと変わったのでレコーディングがすごく楽しかったですね。
戦慄:私は(かやゆーは)やっぱりクズなんだろうな、チャラいんだろうなって思ってたけど……。
かやゆー:あはは(笑)。
戦慄:一緒にやってみたら、すごく職人気質で真面目な人でした。「クズ」とか「チャラい」という世間のイメージも思うツボなのかなと思うと……すごいなと思いました(笑)。
かやゆー:職人気質って思わせるのも計算のうちなんで(笑)。
戦慄:えっ!? 怖い(笑)! 私はアイドル2グループとソロ活動をしていますけど、全部自分でディレクションしているので、人からボーカルのディレクションをしてもらうことがあまりなくて。自分だったら挑戦してみなかったような音取りだったり、ラップもあったりもして、新しい経験ができました。楽しかったです。
「ベランダに逃げた瞬間、『これ曲にできそう』って思った」(かやゆー)
――今お話にもあったように、「ベランダ」にはラップが入っていたり、打ち込みを使っていたりと、これまでのヤングスキニーの楽曲とは雰囲気の違う楽曲です。この曲は「女性ボーカルを入れる曲を作ろう」と思って作り始めたのでしょうか?
かやゆー:基本的に普段から「こういう曲を作りたい」という作り方ではなくて。たまたま浮かんできて、そこから1〜2時間でできる感じなんです。「ベランダ」はメンバーとスタジオでセッションしていたときに、ギターのゴンちゃん(ゴンザレス)がコード進行を持ってきて。「曲が浮かびそう」と思って家に持ち帰って、1〜2時間でできました。女性を迎えてやろうと思って作った曲でも、ラップを入れたくて作った曲でもないんです。なんなら最初はラップでもなかったですし。編曲をしていく中でヒップホップっぽくなってきたからラップを入れようと思って。本当は誰かにラップを作ってもらったほうがいいかなとも思ったんですけど、印税取られたくないんで自分で作りました(笑)。
戦慄:やっぱり小賢しい(笑)。私はこの曲を聴いたとき、「どうやったらこんな歌詞思いつくの?」って思いました。イメージ的にはチャラいじゃん? なのに、こんな詩的な歌詞を。経験に基づくものなのか、全くの想像なのか……どっちなんですか?
かやゆー:確か女の子と遊んでいて、しゃべるのがめんどくさくなったからベランダに逃げたんですよ。その瞬間「あ、これ曲にできそう」って思って。
戦慄:がっつり経験でした(笑)!
かやゆー:「その相手はこう思ってんのかな」っていうことを歌にしました。
戦慄:えっ、その女の子が「こう思ってるんだろうな」っていうことを想像して、この歌詞を書いたの? ヤバくない? センチメンタルになってるのわかっててベランダに逃げるのとかヤバいでしょ。やっぱりクズかもしれない(笑)。
かやゆー:あはは(笑)。基本的に、自分がしたことに対して「相手はこう思っているのかな」ってことを歌詞に書くことが多いですね。
戦慄:びっくりしました。末恐ろしいです。
――ベランダで煙草を吸うというワンシチュエーションで、状況や心情を表した素敵な歌詞だと思います。
かやゆー:これは自分の中でも好きな歌詞ですね。
戦慄:「これでまた多くの女を落とせるな」って感じ(笑)?
かやゆー:そうですね(笑)。自分の気持ちが燃え尽きることと煙草が燃え尽きることとか、ところどころ掛けていたり、自分としても気持ちいい、凝った歌詞が書けたなと思います。
――今回、初めてフィーチャリングゲストを迎えた楽曲を完成させたわけですが、ヤングスキニーとしては今後もフィーチャリングゲストを迎えた楽曲には挑戦していきたいと考えているのでしょうか?
かやゆー:はい。今回、本当に面白かったので。フィーチャリングじゃなくても、誰かに楽曲提供でもいいんですが、自分の曲が、自分じゃない人が歌うことによって違う形に変わるような体験がもっとできたら面白いなと思いました。とりあえず、今一番曲を書きたいと思っているのは、大好きなFRUITS ZIPPER。
戦慄:あの系統に合わせられる? アイドルといってもいろいろなコンセプトがあるけど、FRUITS ZIPPERは“THEアイドル”って感じだから、もっとハッピーな曲じゃないとダメよ(笑)!
かやゆー:はい、そのためだったら合わせます! もっとキラキラした曲を頑張って書いてFRUITS ZIPPERに歌ってもらいます(笑)!
――好きな音楽の話題が出ましたが、どういう音楽を聴いてきたかとか、どういう音楽が好きかといった話はされましたか?
戦慄:いや、聞いたことない。かやゆーは作り手だからそういう話をするのは失礼だと思ったし、何も回ってないところでそういう話してたらきしょいよね(笑)。でも確かに気にはなるね……何聴くの(笑)?
かやゆー:FRUITS ZIPPERはたまたまキラキラした音楽ですけど、基本的には邦楽を中心にバンドの音楽を聴くことが多いです。クリープハイプとか。ハッピーエンドよりはバッドエンド、恋愛だったら失恋の曲のほうが好きですし、曲を書くときもそっちのほうが書きやすい気がする。
――音楽は共感するものとして聴いているのでしょうか?
かやゆー:どうなんですかね。移動中とか授業中とかに、当たり前に音楽を聴いているタイプだったから、何で好きとか考えたことなかったかも。小さい頃から常に音楽を聴いていて、ただ音楽が好きっていうだけ。本当に音楽を聴くのが日常だったのかなと思います。
――戦慄さんはブラックミュージックがルーツだそうですね。
戦慄:そうです。ディアンジェロとか、R&Bをよく聴いていました。でもそれはお母さんの影響が大きくて。最初に自分からハマったのはPerfumeさんで、そこからエレクトロ音楽を聴くようになりました。
――戦慄さんにとって、音楽はどういう存在なのでしょうか?
戦慄:元々は現実逃避のツールだったのかもしれないけど……自分で作るときは、あまり刺さらない歌詞、耳当たりのいい歌詞にすることを心がけていて。逆にTikTokでバズらせたいときは違和感があるけどキャッチーな歌詞を選んだり。自分のなかで振り分けています。
――かやゆーさんにはそういった歌詞のこだわりは?
かやゆー:ないですね。何も考えずに書いています。日頃から歌詞を書き溜めておくことも全くないですし。
戦慄:へぇ!
かやゆー:さっきも言ったように、思い浮かんだら1〜2時間くらいでできちゃうんで、インタビューとかで「これはどういうことなんですか?」とか聞かれても、曲によっては全く覚えてないこともあります。