リアルサウンド連載「From Editors」第45回:『ザ・ノンフィクション』“婚活特集”に集まる注目

 「From Editors」はリアルサウンド音楽の編集部員が、“最近心を動かされたもの”を取り上げる企画。音楽に限らず、幅広いカルチャーをピックアップしていく。

『ザ・ノンフィクション』“婚活特集”が話題

 たまたま目にしたドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)の特集「結婚したい彼と彼女の場合 ~令和の婚活漂流記2024~」がとても興味深かったです。

  『ザ・ノンフィクション』は、1995年から放送されている長寿ドキュメンタリー番組。様々な社会問題や人々の営みをリアルに映し出すことが人気の番組ですが、今回の特集では結婚相談所に通う「建築会社の役員でバツイチの55歳」と「女性と付き合った経験がない29歳」の男性2名にスポットを当て、その婚活模様が2週に渡ってオンエアされました。 

 「結婚相談所」という名前は聞いたことはありますが実際に行った経験はなく、辻村深月の『傲慢と善良』に出てきたなーくらいの感覚で見始めたのですが、交際に向かって男女がプロセスを踏んでいく様子、結婚に辿り着く上で突破しなければならないハードル、そこに立ち向かう二人の姿にどんどん引き込まれていきました。

 番組では、55歳男性が不用意な発言によって「生理的に無理」と言われたり、家事能力を疑われた29歳男性が婚活のために一人暮らしを始めるも交際をお断りされるなど、現実の厳しさを見させられる場面も多かったです。一方で、そういった言葉を受けながらも再起して婚活に取り組む二人の勇姿、まるで綱渡りを見ているような女性とのやり取り、仮交際から真剣交際へと関係が進展するか否かの瞬間など、ドキドキハラハラが絶え間なく続く展開は非常にテレビ向け。話題になっている理由も頷けました。

 個人的には、このドキュメンタリーを見ながら『傲慢と善良』に出てくる結婚相談所のオーナーの以下セリフを思い出しました。

「ささやかな幸せを望むだけ、と言いながら、皆さん、ご自身につけていらっしゃる値段は相当お高いですよ。ピンとくる、こないの感覚は、相手を鏡のようにして見る、皆さんご自身の自己評価額なんです」

 恋愛における「ピンとくる、こない」という感覚を言語化したセリフになるわけですが、「ピンとこない」=「自分の価値に見合っていない相手」と無意識に判断していると説明しいます。この本を読んだ当時は「そんなことない!」と思いながらも、自己評価額を見誤るほど恥ずかしいことはないなとも思ったものです。今回のドキュメンタリーを見て、その時と同じような感覚を覚えました。

 人によって番組の印象は大きく変わるようで、SNSのタイムラインも視聴者による様々な感想で盛り上がっています。ここ数年恋愛リアリティショーが人気を博していますが、今後は結婚相談所を舞台にした婚活リアリティショーが来るかもしれません。

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