小林聡美×小泉今日子はどんなコンサートを画策する? 古き良き“マニアック”な昭和歌謡の魅力

 俳優 小林聡美の初コンサート『小林聡美 NIGHT SPECTACLES チャッピー小林と東京ツタンカーメンズ』が、4月6・7日に神奈川・横浜赤レンガ倉庫1号館 3Fホールで開催される。

 『NIGHT SPECTACLES』はWOWOWが手がける俳優によるコンサートシリーズ。昨年開催された第1弾には吉田羊が出演。第2弾となる今回は、小林の“体の細胞に染みこんでいる昭和歌謡”をテーマに楽曲が選ばれ、演出を小泉今日子が手がける。さらにゲストとして阿部サダヲの出演も。

 リアルサウンドでは、小林聡美と小泉今日子の対談を企画。小林がコンサート出演を決めた理由から小泉今日子がプロデューサーとして参加することになった経緯、二人の関係性に至るまで、インタビュー中も息の合った名コンビのやり取りを届けたい。(編集部)

「有名な曲を歌ったら『ダサ!』って言われそう(笑)」(小林)

小林聡美×小泉今日子

ーーまずは、このイベントを小林さんは「怖いもの見たさで引き受けた」とコメントされてますが。

小林聡美(以下、小林):昨年、舞台『阿修羅のごとく』で小泉さんとご一緒させていただいたんですが、そのときにプロデューサーを務めてらしたのが、(今回の仕掛け人でもある)大人計画の長坂(まき子)さん。公演期間中に、長坂さんが「聡美さんは、歌は歌わないんですか?」とフワっとした感じでおっしゃって。私が「え? 歌? やらないですよ」と答えたら、「そうですかぁ」みたいなやりとりがあったんです。でも、その聞き方がとてもフワッとした柔らかさだったので、私もはっきりとお断りする感じにもならなくて。しばらくだまって、また聞かれたときに「うーん、やってみますか」ってふんわりとお答えしたら、始まってみたらちゃんとした本当のコンサートだった、みたいな(笑)。

ーーふんわりした話じゃなかったという(笑)。演出を担当される小泉さんは、どのようなオファーを受けたんですか?

小泉今日子(以下、小泉):今、小林さんの話を聞いて思い出したんですけど、私も『阿修羅のごとく』のとき、長坂さんから「小泉さんは演出とかやらないんですか?」って聞かれてたんです。サラッと。上手なんですよ、(長坂さんは)サラッと廊下とかで聞くのが(笑)。

小林:そういえば、舞台裏の廊下でそんな話してたね。思い出した(笑)。

小泉:私は「やりたいですよ」と返事をしてたんです。長坂さんは、この企画の1回目だった吉田羊さんのコンサート(『吉田羊NIGHT SPECTACLES THE PARALLEL~ウタウヒツジ~25TH ANNIVERSARY SPECIAL』2022年9月22日、23日、ビルボードライブ東京)を見にいってらして、その話をしてたんです。その流れで「ところで、小泉さんは演出とかやらない?」って。だから、小林さんと同じような誘われ方だったんですね。

小林:やんわりだったよね? 世間話みたいで、現実味があんまりない感じだった(笑)。

小泉:でも、その一方で私には演出の話を振っていたんですよね。さすが敏腕プロデューサー(笑)。

ーーつまり、今回の『NIGHT SPECTACLES』は、小林さんにとって初の歌のコンサートなだけでなく、小泉さんのコンサートの演出としても初?

小泉:そうですね。自分以外の歌い手さんをライブ演出するのは初めてかもしれない。

小林:「こういう曲をやりたい」というのはあったんです。だけど、私にはコンサートのことは全然わからない。「どういう感じでやります?」と聞かれても具体的に進められないと思ったんですよ。それで、だいたいこういう選曲でやりたいという大枠がふんわり決まった段階で、演出を小泉さんにお願いしていただくことになったんです。そこからみんなでさらに話し合って、具体的に作り上げていく感じになりました。

小泉:「具体的にしていく」というのが、私の役割だと思ったんです。まずは「こういう音楽だったらバックバンドはASA-CHANGのゾーンじゃないかな?」と思って、私が電話して「やらない?」と誘いました。ASA-CHANGも、すごく喜んでくれて。それでひとつ、バンドが具体的になった。次は「歌のキーはどうしましょうか?」みたいな段階に進んだ。今のところはそういう感じですね。

ーーその「ゾーン」というのが、実は「昭和歌謡」なんですね。

小泉:それも、かなりディープなゾーンの昭和歌謡です。私、(小林の選曲で)知らない曲がいっぱいありました。音源化されてない曲もあったり。サブスクリプションにもなく、CDでも買えないような曲も。

小林:他の人の曲を人前で歌うのって選曲が難しくないですか? ナツメロカラオケみたいになってもつまらない。だから、私が好きで聴いてきた曲ばかり選びました。今回、歌うにあたって調べてみたら私が生まれる前の曲もあって、そういう過程も楽しいです。

ーー選曲は本番までお楽しみにということで、ここではまだ明かせないんですが、気になりますね。小林さんはそういうマニアックな曲をどうやって聴いてたんですか?

小林:60年代のそういうちょっと変わった歌謡曲をまとめたCDが昔あったんですけど、それを私は好きで聴いていて。こういう世界だったら私も楽しんで歌えるかなという感じだったんですよ。でも、実際にキー合わせのために自分で歌ってみたら、当時の若い人たちが歌ってる曲だったので、かなり息が上がるという現実が待ち受けていました(笑)。

小泉:いっとき、60年代や70年代の埋もれた名曲や歌手を集めたコンピレーションがたくさん出てたじゃない? (1960年代の)「サイケデリック」とか、「ガールズ・ポップ」みたいな感じの曲も選んでいたりするんですよ。それは逆に若い人たちから見たら新しい世界だと思うから、そういう楽しみ方もできるように見えたらいいな。

小林:でも最近はまた「昭和歌謡」が流行ってるみたいな感じだから、そのジャンルで有名な曲を歌ったら「ダサ!」って言われそう(笑)。

小泉:だから、そういう有名曲は選曲から外していきました。なんか「昭和歌謡」の芯だけが残った感じ(笑)。でも、どうせなら思い切ってマニアックに振り切りましょう、と。

ーーてっきり小林さんが子どもの頃に愛唱していたような曲を歌うのかなと思ってたんですが。

小泉:むしろ大人になってから「研究家」として知った曲を歌う感じですよね?

小林:そうです(笑)! 「研究家」として出会った曲ばかりです。

ーーそういう秘宝を発掘するからバックバンド名が「東京ツタンカーメンズ」なんですか?

小林:あ、そこが「発掘」でつながりますねー!

小泉:あれは突然、聡美さんに降りてきた名前なんですよ。だから、つながってるのかも。

小林:もともと「発掘」というか、阿久悠さんや筒美京平さんが好きで、いろいろ探して聴いていくのも好きになって。そうすると、「この人がこんな曲を作ってるんだ!」とか「この歌手の人、面白いな」とか、思わぬところにたどり着いていくんですよ。

小泉:「研究家」ですから(笑)。

小林:あとは、昔の映画のなかで美空ひばりさんや江利チエミさんが歌ってるような曲がすごく好きでした。今ではあまり知られてない歌手の方なんかも歌っていて、それが気になったら名前とかタイトルを調べたり。惹かれるきっかけは、最初は「驚き」ですよね。新鮮な驚きは「感動」でもある。「なんだこの歌? 変な歌?」みたいな面白さでもある。信じられない歌い方や歌詞の曲もあるし、意外な発見をしていくのが昔から好きだったんです。

小泉:変な歌い方ねー! 変なコーラスもあったよね。

小林:そう! 変なコーラスも大好き! 「授業参観に来た親みたいな人たちが歌ってるのに、なんでこんな変な声が出るの?」みたいな(笑)。

ーーそういう要素をコンサートにはどんどん入れ込みたい?

小林:昔とまったく同じとはいかない、今の感じと融合してどうなるかという感じですよね。

小泉:今、オリジナル曲もASA-CHANGと作ろうよ、って言ってるんです。「チャッピー小林と東京ツタンカーメンズのテーマ」みたいに。

関連記事