由薫、アルバム『Brighter』完成第一声インタビュー 変化と今、明るい場所へ進む決意
由薫が初のフルアルバム『Brighter』をリリース。今作には、ドラマ『星降る夜に』(テレビ朝日系)主題歌「星月夜」をはじめ、Toru(ONE OK ROCK)がプロデュースを手がけた「lullaby」「No Stars」、MONKEY MAJIKのサウンドプロデュースによる「Blueberry Pie」、アルバムと同タイトルの新曲「brighter」など、全12曲が収録されている。
夜明け前の青い光をイメージしてつけられた2ndツアーのタイトル『Blue』から、だんだんと世界が明るく広がっていった由薫の世界、それが『Brighter』だ。では、彼女はどのようにして自分と対峙したのか。そして、このアルバムを作り上げた今、何を思っているのか。アルバム完成後の第一声インタビューをここにお届けする。(編集部)
この先を考えた時に「より明るい場所に突き進んでいきたい」と思った
――前回は「Crystals」のインタビューでご登場いただきました。その後リリースをされてからは、どんな反響が届いていますか?
由薫:タイアップならではの反響で言うと、ドラマ『たとえあなたを忘れても』(ABCテレビ・テレビ朝日系)を観た方から「『Crystals』を聴くと、ドラマのシーンが思い浮かんで涙が出る」という声をいただけて、とても嬉しかったです。なかでも〈夢じゃないといいな〉というワードに心が動かされた方が多かったようで、それもありがたかったです。
――「Crystals」も収録されている、1stアルバム『Brighter』が1月17日にリリースされます。今作はメジャーデビュー曲「lullaby」から最新曲までを収録した、いわば集大成の一枚ですね。
由薫:まさに2022年のメジャーデビューから現在までの軌跡や、そのなかで起きた心境の変化も含めて、約1年半のすべてが詰まった一枚になっています。私は昨年3月に大学を卒業して、今は完全に音楽一本の生活になりまして。前々から「ミュージシャンは夜型が多い」という話は聞いていたけれど、やっぱり私もどんどん夜型になり、曲を書きながら夜明けを迎える頻度が増えていって。今、私のなかで創作が捗るゴールデンタイムは、朝になる前の空が青い3時から5時なんです。それもあって、『2nd TOUR “Blue”』は「夜が明けていく」というテーマのライブにして、その先にアルバムがあるという、長期的な流れを作れたらとてもかっこいいなと思い、タイトルを『Brighter』にしました。チームでアルバムのタイトルを考えていくなかで最初は『Bright』に決まりかけたんですけど、“Bright=明るい”という意味だから、それだと完成されすぎてしまっている感じがして。いろいろと悩んだ結果、『Brighter』にしました。
――比較級の『Brighter』にしたことで、「より明るく」という意味になりますね。
由薫:『Brighter』にしたことで一気に私らしくなったな、と思いました。お客さんの少ないライブハウスに立っていた10代頃から、メジャーデビューをしたことで物理的にも比喩的にも明るい場所に立たせてもらうことが多くなって。そして今「この先どうするのか?」と考えた時に、「より明るい場所に突き進んでいきたい」と思ったんです。
どんな楽曲にも合うアルバムタイトルがいいなと思ったのも決め手のひとつでした。私は星に関連した歌詞を書くことが多くて、星が輝いている様子もこのアルバムタイトルから感じ取ってほしいし、新曲の「Rouge」では新しいテンポ感やオートチューンを使うチャレンジもしていたり、いろんな意味を『Brighter』というタイトルに込めることができました。「まだ完成形ではないけど、これからも歩んでいく」という決意を、このアルバムで示すことができたと思っています。
――これまでコンスタントに新曲をリリースされてきましたけど、あらためて楽曲達を並べてみて、“由薫”というアーティストの変遷をどう感じますか?
由薫:私の音楽は、その時々の自分を強く反映していると思っていて。この1年半で自分が辿ってきた経験と、これまでの曲を並べた時に点と点が繋がっている感じがあって。人生の振り返りとしても、アルバムの曲を並べるのは大事な作業だった気がします。
――特に、ターニングポイントになった楽曲は?
由薫:やっぱり、デビューシングルの「lullaby」です。あの声の出し方は、今だったらできないと思います。「この曲でメジャーデビューをするんだ」という、まだ青い自分がいたからこそ出せた声だし、憧れのToru(ONE OK ROCK)さんとお仕事をさせていただいて、そういう思いも全部が声や歌詞に込められていると感じますね。何より、私をインディーズからメジャーへ引き上げてくれた曲だなとあらためて思っています。
ドラマ『星降る夜に』(テレビ朝日系)の主題歌「星月夜」は、自分にとって二度目のメジャーデビューと言えるぐらいのインパクトがあって。たくさんの人に聴いてもらったきっかけだったでもあったので、そういう意味でも大切な曲です。それを経て「Blue Moment」はサウンド感がガラッと艶やかになったと思っています。
――7月に単身でスウェーデンに乗り込んで、現地アーティストと共に制作した楽曲ですね。
由薫:スウェーデンで作った「Blue Moment」や「E Y E S」を経て、私の耳も変わった気がするんです。それだけ大きなインパクトがある曲ですね。先ほど挙げた「Rouge」は昨年の頭に曲を作って、3月に出演した世界最大規模の音楽祭『SXSW 2023』の移動中に歌詞を書きました。この曲は今までの私になかったテンポの取り方やリズムの乗り方で、自分の背中を押してくれるような曲になりました。
特に表題曲「brighter」は、これまでとは全然違うスタンスで曲を作ることができて。ほかの曲がお寿司とかステーキだとしたら、「brighter」はお水みたいな感じなんです。
――全部の料理に必要不可欠な要素、というか。
由薫:そうなんです! アルバムの曲を決める時に「『Brighter』というアルバムをリリースするなら、すべての物語を繋ぎ合わせてくれる一曲を作りたい」と思って、このアルバムのためだけに捧げる新曲を書きました。これでようやくアルバムが完成した、と思いましたね。