星野源、曲作りの新たなスタイルが確立された2023年 サマソニや『LIGHTHOUSE』も振り返る

いつもはやらないことを打ち出せた『LIGHTHOUSE』

ーーその『SUMMER SONIC』の直後、8月22日にはNetflixでオードリー 若林正恭さんと悩みをテーマに語り合うトークバラエティ番組『LIGHTHOUSE』の配信がスタートしました。星野さんはメインテーマ曲の「Mad Hope」に加えて若林さんとの対話からインスパイアされたエンディング曲を5曲制作しましたが、やはり普段テレビではできないようなかなりディープな話にまで及んでいた分、自ずと星野さんの歌詞もより深く刺さるものが多かった印象です。作詞をするにあたって、いつもとはまた違うモードになるようなことはありましたか?

星野:そうですね。なんというか、わかりやすくしたほうがいいだろうとは思ったんですよ。その“わかりやすい”というのはよくある歌詞みたいなことではなく、わかりやすく強い言葉があるとか、わかりやすく直接的であるとか、そういうことですね。詩的な言葉選びを心がけているので、普段は避けるようにしているんですけど、直接的な言葉って、自分自身の「この言葉を言いたい」っていう欲求になる。つまりナルシスティックな響きになっていくと思うんですよね。それが歌詞というよりも、言葉に酔っている感じがして、あまり好きではないんです。それよりも、もうちょっと意味合いや景色みたいなものをぎゅっと言葉のなかに入れて、同時にいろいろな解釈ができるような詩としての文章を歌詞にするほうが好きなんです。

 でも今回は曲が流れる前にまず若林さんとの会話があって、その会話に曲が直結することになるから、自分の歌をただ聴いてもらうのとはまたちょっと違ってきて。「この会話を歌に昇華しました」みたいなことでいくのであれば、あえて強い言葉を言ってみる遊びができると思ったんですよね。しかも、その言葉は僕が生み出しているものでもあるから自分と密接な歌詞である。その塩梅でいけば、普段できないことがやれるんじゃないかという予感はすごくありました。いつもはやらないことをわかりやすい形で打ち出せるだろうと。

ーーやっぱり普段と違う反響がありましたか?

星野:刺さる速度や範囲がわかりやすいとは思いましたね。自分にとって一瞬で刺さる曲は、普段いざリリースしてみると世間には刺さるまでに時間がかかったりするんですけど、『LIGHTHOUSE』の曲に関してはいつもの自分に刺さる速度と同じように、聴き手にも刺さっている手応えがありました。それはやってみてよかったですね。いつもの自分のやり方を保持しつつ広げていったほうが絶対にいいと思っていたので。そこは事前に想像していた通りでした。

星野源「仲間はずれ」| LIGHTHOUSE | Netflix Japan

ーー『LIGHTHOUSE』のエンディング曲は基本的にライブセッションで披露されていましたが、スタジオ音源ではなくライブでの披露が前提になっていたことは楽曲の制作にあたって何かしらの影響を及ぼしていますか?

星野:ライブセッションの方がやりやすいんですよね。スタジオで録った音源を放送するとなると、もっとアレンジを詰めなくちゃいけないので、たぶん10倍ぐらい時間がかかると思います。ライブセッションの場合、メンバー=楽器の数が限定されるので、自分で打ち込んだデモを全曲作って、それをバンドに聴いてもらってリハーサルをやって一発本番、という流れが本当に短いタームでできるんです。やっぱりメンバーが限定されている状態で楽曲を作るのは、速さという点ではすごく大きいですね。スタジオ録音だと範囲がめちゃくちゃ広いじゃないですか。別にひとりでやってもいいし、30人のオーケストラを引き連れてもいいわけで。やろうと思えばいくらでもできちゃいますからね。

星野源「灯台」| LIGHTHOUSE | Netflix Japan

ーー『LIGHTHOUSE』の楽曲制作はなにかと新しい取り組みが多かったと思いますが、今後の曲作りに活かせそうな新たな発見はありましたか?

星野:『LIGHTHOUSE』の曲はまず自分が打ち込みでデモを作って、それをバンドメンバーに聴いてもらった上で一発で録音していく。ちょっと音を追加で重ねることもありましたけど、それは家でひとりでやりました。この工程は「おともだち」の作り方と一緒なんですよ。『LIGHTHOUSE』での若林さんとの共通項もあるからやってみようと思ったんですけど、これは2019年まで僕がやっていた作り方と、打ち込みを覚えた2020年以降の作り方のブレンドで。打ち込みのデモがあると、バンドのメンバーはみんな一瞬で理解してくれるんです。だから作業的にすごく早いんですよ。以前はギターの弾き語りのデモを作って、頭のなかにあるビジョンをすべて口頭で伝えていくみたいなめちゃくちゃ時間がかかる作業だったので。今はそういう早いスタイルとじっくり作っていくスタイルの両方が共存できているところがありますね。単純に制作の選択肢が増えました。

ーー最後に2024年の音楽活動の展望を聞かせてください。制作のペースが上がっているなか、どんな活動をしていきたいと考えていますか?

星野:やっぱりアルバムを作りたいですね。アルバムに向けて曲をたくさん制作しようとしているんですけど、なるべく早くそれをリリースしたい。

ーーストックの曲はいろいろあるわけですか。

星野:でも、2023年はアルバム1枚作れるくらいたくさん曲をリリースして、そこで消費したものが多いので。だから、これからまた1から作らなきゃいけない(笑)。とはいえ、2023年は自分を追い込んでいった苦しい制作が多かったから、2024年はとにかく楽しく曲を作っていきたいですね。

星野源、3年ぶりの有観客ライブで果たした“笑顔の再会” 希望を絶やすことなく辿り着いた特別なステージに

星野源、3年ぶりの有観客ライブ『Gen Hoshino presents “Reassembly”』が行われた。星野源のオフィシ…

星野源、感覚に直結した言葉とサウンド 「光の跡」は追い込まれた先で自信を深めた1曲に

星野源「光の跡」は話題の映画『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』のエンディング主題歌。同曲の歌詞に込めた嘘の…

関連記事