somei、とた、tuki.、ao……バイラルチャートやアニメ界隈で頭角表す次世代女性シンガーソングライター

 2023年の年の瀬が迫る中、『第74回NHK紅白歌合戦』や『第64回 輝く!日本レコード大賞』(TBS系)の出場者が発表されるなど、音楽シーンの一年を振り返るような機会を目にすることも増えている。今年も様々なアーティストが活躍を見せる中で、本稿では「次世代の女性シンガーソングライター」を紹介する。それぞれ2023年の活動を振り返りながら、2024年に向けての期待にまで目を向けていきたい。

somei

somei / Another Complex - Music Video

 テレビアニメ『デキる猫は今日も憂鬱』のオープニング曲「憂う門には福来たる」でメジャーデビューを果たしたシンガーソングライターsomeiが、11月22日に2ndシングル『Another Complex』をリリースした。タイトルトラックはTVアニメ『僕らの雨いろプロトコル』のエンディングテーマにも起用されており、すでにアニメファンの間では注目を集めている。

 音楽好きの両親の影響で、小さい頃から身近に音楽を感じていたsomei。彼女が歌手を目指したのは、三味線奏者だった母親が出演するライブへ行ったとき。ステージで歌う他の出演者たちが、自分のことを「歌手です」と名乗っているのを見て初めて「歌手」という職業の存在を知り、そこで「歌手になりたい」と強く思ったのだった。

 中学生になり、母親の音楽仲間たちと結成したアニソンバンドではギター&ボーカルを担当。初ステージは中2の時で、学校を卒業した翌年には年間50本のライブをこなしていたというから筋金入りだ。ちなみにアーティスト名の「somei」はソメイヨシノが由来。「多くの人の瞬間に寄り添えるアーティストになれるように」という思いが込められている。

somei / 憂う門には福来たる - Music Video

 アニソンはもちろん、ニール・ヤングやEaglesなど父の聴いていた1970年代のロック、アイドル曲、自身の世代が聴く邦ロックまで、古今東西さまざまな音楽を片っ端から聴いてきたsomei。それだけに、これまで発表してきた楽曲には様々なジャンルの音楽的要素が散りばめられている。

 例えば「憂う門には福来たる」は、目まぐるしく変化するリズム隊とシンプルなコード進行の上で、朗々と歌われるメロディなど、彼女が「大好き」と公言するジャンルのうちの一つである青春パンクからの影響を強く感じさせる。一方、「Another Complex」は疾走感たっぷりのリズムにエッジの効いたエレキギター、ファルセットと地声を巧みに使い分けた歌声と、胸を締め付けるような切ないメロディが特徴だ。他にも、人間関係の中で感じる孤独をテーマにしたミドルテンポの「アイヲアソンデ」や、ストリングセクションを導入した壮大な楽曲「消しゴム」など様々なタイプの楽曲が並ぶ。季節ごとに姿を変えるソメイヨシノのように、曲ごとに表情を変え様々な人の心に寄り添いながら、等身大の日々を綴る彼女の今後の活躍が楽しみだ。

somei / 2nd Single「Another Complex」 全曲ダイジェスト

とた

とた - 紡ぐ (OFFICIAL MUSIC VIDEO)

 コロナ禍の2021年から楽曲投稿を始め、YouTubeやTikTokなどSNSを中心に注目を集めているのが現在20歳のシンガーソングライター「とた」だ。もともとはクラシックピアノを学んでいた彼女は、ラジオから流れてきたSUPER BEAVERの楽曲に衝撃を受け、ピアノだけでなくギターも弾こうと決心する。同年6月に投稿した「紡ぐ Short Ver.」は、1年足らずで合計270万回再生を記録。TikTok/Instagramでは「紡ぐ」を使用したユーザー投稿動画の総再生数が2023年11月時点で7億回を突破したという。

 歪んだエレキギターを主軸とするバンドサウンドと、当時はまだ10代だった彼女のまっすぐで透明感あふれる歌声のコントラスト、そして言葉遊びや語感の気持ちよさにこだわりながらも詩的かつ等身大な歌詞の内容が、同世代のリスナーから共感を集めているのも頷ける。今年リリースされたデビューアルバム『oidaki』は、バラエティに富んだアレンジながら音数を絞り込み、どの曲も彼女の声を最大限に活かしている。かと思えば最新シングル「押して」では、メロダイン系のボーカルエフェクトをかけたエレクトロな路線にも挑戦しており、まだまだその引き出しは無尽蔵だ。

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