KAN「愛は勝つ」などバイラル上位独占 何十年もかけて積み上げてきた音楽への探求心の結晶
KANの楽曲の特徴のひとつに、クラシック音楽の影響を感じさせるピアノのタッチがあげられると思う。旋律は優美で軽やかでありながら、時に和音で力強さを出す彼のピアノは、歌っているかのようなフレーズがキャッチーで、ピアノのイントロだけでKANの曲だとわかる個性を放っている。前述した「愛は勝つ」は、オリジナルバージョンでの音楽配信サブスクリプションサービスはなく、1位は弦楽四重奏によるセルフカバーアルバム『la RINASCENTE』(2017年リリース)に収録されたバージョン、3位はライブアルバム『弾き語りばったり #19 今ここでエンジンさえ掛かれば』(2016年リリース)に収録されたバージョンだ。前者にはイントロのピアノが入っていないが、後者ではイントロのピアノが聴ける。そもそもライブバージョンがチャートインすること自体、非常に珍しいことだと思うが、KANのイントロのピアノが1位と3位にバージョン違いの同じ曲がランクインするというチャートアクションに結びついたのは間違いない。今回バイラルチャートを席捲したKANの楽曲は、どの曲もThe Beatlesやビリー・ジョエルを彷彿させるような洋楽のフレイバーが香るグッドメロディばかりだが、驚くのは、その歌声である。デビュー当時、もしくは「愛が勝つ」がヒットした1990年代初頭と変わらぬ瑞々しさと独特の愛嬌がある。中高音のクリアな響き、子音の発音の良さ、さらに母音のコントロールも個性的で、一音の中でも一旦前に出してすぐ後ろの方で響かせるなど、基本はストレートながらも非常にスキルフルである。この歌声があるからこそ、KANのメロディはエバーグリーンな1曲になるのだろう。何十年もかけて積み上げてきた音楽への探求心とグッドメロディの実績が、チャートに表れた……そんな印象を受けた今回のバイラルチャートであった。
※1:https://charts.spotify.com/charts/view/viral-jp-daily/2023-11-22
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