SUKEROQUE、言葉とサウンドで自在に描くストーリー 豊かなポップネスを解き明かすクロスレビュー

「豊富なアプローチは、ボーカリストとしての天賦の才」(伊藤亜希)

 SUKEROQUE名義で2019年以降にドロップされた楽曲群は、まだ数こそ少ないが、シンガーソングライター SHOHEIのポップネスを感じるには十分な輝きを放つ曲ばかりだ。

 ファンクから、2000年代以降のR&Bやアーバンミュージック、UKロックまでをルーツに持ち、それぞれをしっかり咀嚼した中で作り出される楽曲には洋楽然とした趣きがありながらも、70年代の日本のニューミュージックを彷彿させるメロディが差し込まれたりしてくるあたりがニクい。日本語詞でメロディをしっかり踏んでくるところも、今のシーンのトレンドを考えるとかなりチャレンジだと思うし、SUKEROQUEの中にある“自分がやりたいポップス”をしっかり主張する重要なファクターになっていると思う。SUKEROQUEはムードではなく、聴き手にはっきりとメロディと言葉を残すポップスを目指しているのではなかろうか。

 まず知ってもらいたいのは、SUKEROQUEの楽曲のバリエーションだ。「オリーヴの星」は、ギターのシンコペーションやベースライン、途中で入る歪んだギターソロなど、ファンクマナーをしっかりと押さえた太いグルーヴと、サビの開けたメロディで鮮やかなコントラストを見せる1曲。ファンクバンド然としたダイナミックなアレンジも聴きどころだ。ミディアムバラードの「蝸牛」は、サビのメロディラインに70年代あたりのニューミュージックの影響を感じる。バックトラックの音数が少なく、SHOHEIのボーカリストとしての表現力が肝になる1曲だが、丁寧に音符を繋ぐようなボーカルアプローチに、スキルだけに頼っていないSHOHEIの楽曲に対するスタンスがはっきりと分かる。

【MV】オリーヴの星 / SUKEROQUE

 ゴージャスなイントロで幕を上げる「COOL CHINESE」。イントロでは、ギターフレーズの音階にフュージョンのフレーバーを感じるが、歪んだ音色でブラックロックに持っていくアレンジの手腕が見事。それでいて歌の入りはラップで、その後は別人のように綺麗な高音を聴かせている。この斬新な展開をシームレスに聴かせるポップセンスには脱帽である。多彩な要素をしっかりとルーツを感じさせるファクターとして使いながらも、ポップスに落とし込むその手腕こそ、SUKEROQUEの才能であると同時に無二の個性だろう。「市街地」は、シンセサイザーの洒脱な和音とサックスで、アーバンミュージックを彷彿させるミディアムナンバー。低音が効いたAメロ、憂いのあるBメロ、抒情的なサビへと展開する中で、SHOHEIはファルセットも操る見事なボーカルコントロールによって、メロウでドメスティックなメロディを聴かせている。

【MV】COOL CHINESE / SUKEROQUE

 このように音楽好きの心を躍らせる楽曲群と、エネルギッシュなライブで注目を集めるSUKEROQUEが、11月15日に新曲「トランジスタレディオ」をデジタルリリースした。同曲はメランコリックでドラマティックなメロディが魅力のミディアムチューン。エレクトロニカやアンビエントを取り入れた音数の少ないバックトラックは、リズムやフレーズのリピートによってサウンドスケープ然とした趣きもあるが、間奏でフリースタイル風の鍵盤を入れるなど、豊かなストーリー性を見せており、SUKEROQUEのアレンジの才気が光る。音数の少なさゆえ、SHOHEIのボーカリストとしての素質、メロディと言葉のマッチングのセンスが明確に分かる。おそらく本人が最も得意な音域と思われる中低音から高音を主軸にして歌っており、音程、リズム感、声量のコントロールなど、実に自然で安定している。また他の曲に比べて譜割もシンプルなため、歌詞がすんなり耳に入ってくる。特に〈有りそうで無いな 有りそうで無いな〉というフレーズでは、リズム、メロディ、言葉のマッチングが素晴らしく、楽曲の次なる展開を予感させる強力なフックになっている。

 SUKEROQUEの歌声は、独特の温もりと包容力を持ちながら、ウェットすぎない心地よさが魅力だと思うが、まず注目してほしいのは、ファルセットの扱い方である。ギリギリの高音だけでなく、地声で出る部分でも、一音だけファルセットで抜いているところがあり、ファルセットをボーカル表現のひとつと解釈していることが分かる。決して声を張って歌い上げるタイプではないし、歌い出しに一瞬だけ間を作ったりして軽やかに歌っている印象だが、そう感じさせないのは、フレーズごとの最後のトーンの丁寧な扱い方にある。最初から最後まで同量で歌うパターン、デクレッシェンドをかけるパターン、吐息のようにして切り上げるパターン……と、アプローチも豊富で、楽曲全体に余韻を出している。また、フレーズからフレーズへのつなぎがとても上手い。これはSUKEROQUEのボーカリストとしての天賦の才と言っていいだろう。

SUKEROQUE「トランジスタレディオ」

 〈街中が 夢の中 東の空 日がまた昇る〉というワンフレーズで終わる「トランジスタレディオ」。アウトロがない終わり方はかなり斬新だが、SUKEROQUEが1曲を通して作り上げた清々しい余韻の中で、〈日がまた昇る〉という言葉が、聴く者の脳内でリピートされる。SUKEROQUEの中にも新たな日が昇ったとき、一体どんな曲を作り出してくるのだろう。SUKEROQUEの新たなアクションが楽しみである。(伊藤亜希)

SUKEROQUE「トランジスタレディオ」

■リリース情報
SUKEROQUE「トランジスタレディオ」
11月15日(水)発売
作詞:SHOHEI
作曲:SHOHEI
編曲:伊藤立 (agehaspringsParty)

配信:https://nex-tone.link/A00124507

SUKEROQUE オフィシャルHP

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