あいみょん、3年越しの声出し解禁 距離感ゼロの『マジカル・バスルーム』セミファイナルレポ

 開演直前、舞台袖から聞こえてきた円陣の掛け声。思いのほか大きく響いたその声が、このライブにかける思いを物語る。4月から続いてきたツアーもいよいよセミファイナルである。あいみょんのツアー『AIMYON TOUR 2023 -マジカル・バスルーム-』の『Additional Show』8本目。10月31日、東京ガーデンシアターでのライブは、力強いバスドラと「東京、よろしくー!」というあいみょんの声から幕を開けた。1曲目「貴方解剖純愛歌 〜死ね〜」でアクセル全開のスタートを切ると、いきなり客席から大合唱が巻き起こる。さらに「ふたりの世界」では恒例の「セックス」コールがガーデンシアターに響き渡った。場内のムードはたった2曲で早くも最初のハイライトを生み出していく。

 一転、「初恋が泣いている」の染み渡るようなメロディを届けると、客席のそこかしこから名前を呼ぶ声が聞こえてくるなか、「ようこそ! 来てくれてありがとう。ハッピー・ハロウィン!」と挨拶するあいみょん。とにかく彼女の一挙手一投足に歓声が飛ぶ。このツアーで久々に観客の声出しが解禁されたとあって、ステージにいるあいみょんやバンドメンバーはもちろん、オーディエンスも相当に気持ちが入っているのが伝わってくる。「愛を伝えたいだとか」ではアコギを弾きながら客席のすぐ近くまで行き、パーソナルな景色がじんわりと胸を打つ「3636」ではメロディと言葉を丁寧に紡ぐ。こういう曲を聴いていると、どんなに派手で賑やかなバンドサウンドが鳴っていても、やっぱりあいみょんはたったひとりで音楽と向き合っているのだな、と思う。

 そして根本的に“ひとり”だからこそ、あいみょんの歌はどこまでもお客さんと近い。「ひとりで来た人!」と挙手を促すと「隣の人と話したりすんの? 『あいみょんの推し歴何年ですか〜?』って」と客席とまるで友達と話すかのように会話する。さらにスタッフに双眼鏡を持ってきてもらうと、それを覗き込んで客席のあちこちに目をやり、話しかけたりイジったり。このちょっと長いMCを経て、ガーデンシアターが一気にあいみょんの家みたいな空気になる。そう考えると、『マジカル・バスルーム』という今回のツアータイトルは言い得て妙だなと思う。バスルームなんて究極のプライベート空間で、このライブ会場にはそれくらい親密な空気が流れているのだ。

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