丘みどり、アイドルからジャズまで演歌を超えた扉を開く リサイタル『演魅』へ懸ける思い

丘みどり、ステージへの思い

早着替えも繰り出したアイドルカバー、ヘソ出し衣装のためのダイエット

――アイドル曲のカバーコーナーも見応えがありました。

丘:以前のコンサートでも80年代アイドルのコーナーをやったことはあったのですが、アイドルのカバーは少し久しぶりでした。選曲は、私の母が好きでよく聴いていた歌や私も好きな歌もあったり、スタッフの皆さんと一緒に考えました。松田聖子さんの「夏の扉」は、個人的にもこだわりがあって。あのピンクの大きなフリフリのドレスを、30代のうちに一度は着ておきたい!と思って発注したんです(笑)。40代になったらもう着れないと思うので、30代の最後に夢を叶えていただきました。

――アイドルコーナーは、早着替えも見どころでした。そのピンクのフリフリのドレスから紫の衣装、そしてお腹を出した黒の衣装になります。そのために2カ月で3キロのダイエットをしたそうですが、どんなダイエットをやったのですか?

丘:ジムに通いましたね。このコーナーは他の会場でもやることになっていたので、一時的に痩せても、またダイエットするのはしんどいし、食べないダイエットだと絶対リバウンドしてしまうと思ったので、食生活に気をつけて頑張って筋トレしました。そこで気づいたのは、やっぱりお酒がいちばん太るということ(笑)。決してお酒が悪いわけじゃなくて、お酒を飲むと、ついついカロリーが高いものをいっぱい食べちゃうからなんですよね。それを控えたおかげもあって、ダイエットもでき、すごく健康にもなりました。

――工藤静香さんの「慟哭」のカバーも良かったです。

丘:ありがとうございます。年上の方は特に50〜60代の男性の方に「あの曲、好きなんだよ!」って、すごく言っていただきます(笑)。選んでよかったです。

――演歌歌手としてデビューした時が、ああいうヘソ出しの衣装でしたよね。ここは、原点に立ち返るような思いもあったのですか?

丘:そういう理由だとすごくかっこいいのですが、実は衣装の都合でヘソ出しになっただけで、自分としては出すつもりではなかったんです。衣装を重ねて着るので、「生地が重なって衣装のシルエットがきれいに見えないから、お腹の生地をなくしていいですか?」って、衣装さんからお願いされて。でも、おかげでダイエットもできたし、会場もすごく盛り上がったのでやってよかったです。

――そして「花と蝶」から「椿姫咲いた」までが、「演魅」のコーナーです。講談師の方が出てきたのは意外でした。

丘:まずは講談師の方にしっかりと物語を説明してもらって、そのうえで観ていただきたいと思ったんです。時代背景やどういう経緯で花魁が誕生したのか、しっかり理解して、より楽しんでいただきたくて。観客の皆さんは「今から何が始まるんだろう?」と、ググッとステージに集中していただけるきっかけになって。講談師の方がしゃべっているあいだ、私は裏でスタンバイしているのですが、私も講談師の方の語りを聞いて、気持ちがその世界観に入りましたね。

――花魁姿も含めて、花柳社中の踊り手さんが狐のお面をかぶって登場するなど、演出がとても幻想的でした。

丘:何が起きているのか、漠然とではなく場面ごとにしっかり感じながら観てほしくて。「なぜ狐のお面なのだろう?」「なぜこうなっているのか」、そういったことを感じ取ってほしくて、あのような演出になりました。実は、狐のお面は私からの提案でした。あのシーンは現実世界ではないところで、魂がさまよっていて、その魂を追いかけて「連れて行かないで!」と叫ぶような場面です。そこに生身の人間が出てくると、現実っぽく見えてしまうけれど、狐のお面をかぶった人が出てくることで、現実世界と向こうの世界の中間にいるような雰囲気が演出できたのではないかと思います。

――花魁の衣装で動き回るのも大変ですよね。

丘:花魁のかつらがすごく重くて。あれを頭につけて走り回るお稽古を初めてやった時は、「無理じゃないか……?」と思ったほどです。途中で取れるんじゃないかと思うくらい重くて。でも、必死でもがき苦しまないと、そのシーンは伝わらないですから。「絶対取れないはずだ!」とメイクさんを信じて、思い切って走り回りました。

――最後は「椿姫咲いた」で、高下駄を履いて花魁のフル装備で登場します。

丘:今の私には、あれがいちばんのユニフォームと言えます。あの花魁の衣装を全部着ることによって、「椿姫咲いた」の世界観がしっかり伝わると思いましたし、私自身もより身が引き締まりました。

――総重量は何キロくらいあるんですか?

丘:かつらなど全部合わせたら20キロくらいあるんです。花魁のコーナーのあとは、また早着替えがあるので、着替えをするところまで走って行かないといけなくて、それが大変でした。

――非常にきらびやかで、花魁の衣装もなかなか生で見られるものではないですよね。

丘:はい。若い世代の方からも好評で、「すごく豪華だった」「見ることができて嬉しかった」と言っていただきましたね。

――アンコールは、サインボールを投げたり、客席に降りたり、一緒に振り付けを踊ったり、みんなと楽しむような雰囲気で。

丘:今回は花柳社中の踊り手さんだけでなく、専門学校のダンス課の生徒さんにもご協力いただいて、とても賑やかなステージになりました。一度幕が下りて、アンコールの最初の曲が「みどりのケセラセラ」なのですが、幕が開いた時に、ステージにいっぱい人がいたら驚いてくれるんじゃないか、と。みんなそれぞれにいろいろな職業の衣装を着ていたのですが、町中の人が一緒に踊るような雰囲気で、それはどこか昭和のよき時代を彷彿させるんじゃないかなと思います。日々頑張っている人々が、この曲の時は心をひとつにして、踊り出したくなるような雰囲気を伝えたいと思いました。

――客席から「みどりちゃん」コールも上がりました。

丘:やっと声を出せたと、皆さんとても喜んでくださっていました。大きな声を出すことって、普段はなかなかないじゃないですか。そういう部分でも「みどりちゃ〜ん!」って大きな声を出すことで、ちょっとしたストレス発散にもなったと思います。

――あと、この『リサイタル』の前に、おばあさまにお電話をされたとか。

丘:普段からよく電話はしてるんです。この『リサイタル』にも行きたいと言ってくれていたんですが、行けなくなってしまったことを気にしていたので、「頑張ってくるね!」って。おばあちゃんは本当に心配性で、ちょっと電話がつながらないだけで、「どうしたんだ!」ってなるんですよ。いつも「仕事中は電話に出られないから」って言っているんですけどね(笑)。おばあちゃんはもう88歳だし。

――米寿ですね。

丘:はい。今年は米寿のお祝いもしたし。「テレビでみーちゃんを観ることだけが楽しみやねん」っていつも言ってくれていて。遠くまでコンサートを観に行くのは大変だから、「これからもいっぱいテレビに出てね」って。だから地方のコンサートに行くと「今日は新潟にいるよ」って電話して、美味しいものがあったらおばあちゃんに送ってあげたりしています。

――今年一年を振り返ってみて、いかがでしたか?

丘:盛りだくさんな一年でした。映画の撮影もしたし、演技の勉強もしたし、バラエティ番組、地方にもいろいろ行きました。

――9月6日には『黒フェス2023〜白黒歌合戦〜』に出演されて、X JAPANの「紅」を熱唱しました。

丘:MCで「皆さんもご存じの曲だと思うので一緒に歌ってください」とコメントした時は、「演歌の曲は知らないよ」という雰囲気だったのですが、「紅」を歌い始めたら「ウワ〜ッ!」って、「演歌歌手がメタル歌うって意味わかんないぞ〜!」というような感じで、大歓声が上がってすごく楽しかったです。「紅」の曲中でも、みんな「みどり〜!」ってコールしてくださって、とても嬉しかったですね。アイドルのファンの方って本当にすごいですね。練習しなくても、「みどりコール」ができるんですから。私のファンの方は、「伊那のふる里」でどれだけ練習したことか(笑)。

――その後も、いろいろとチャレンジされたことがあったそうですね。

丘:はい。11月4日に、COTTON CLUB 東京で『MIDORI OKA First Live In COTTON CLUB 2023』を開催しました。LINE CUBE SHIBUYAでの『リサイタル』でもジャズには挑戦させていただきましたが、この日はドレス1着で、ジャズとシャンソンを歌い、いつもとは違う丘みどりを楽しんでいただきました。

 あとは、11月12日に広島マリーナホップで開催された『PEACE STOCK 78’ HIROSHIMA2023』にも出演しました。島谷ひとみさんや氣志團さん、ゴールデンボンバーさんなど、本当にさまざまなジャンルの方が出演されていて、私もとても楽しかったです。

――演歌/歌謡曲の枠を越えた、チャレンジやギャップも丘さんの魅力ですね。

丘:ありがとうございます。『千鳥の鬼レンチャン』(フジテレビ系)に出させていただいたことも手伝って、若い方にも名前を知っていただけるようになりました。今後もさまざまなフェスにどんどん出て、ギャップのあるカバーも歌ったりしながら、本業である演歌に興味を持っていただけるようになったらいいなと考えています。夢はラスベガス公演ですから、幅広いジャンルを歌えないと世界には行けないですし、今のこの勢いを来年につなげられたらと思っています。

■リリース情報
『丘みどり リサイタル2023~演魅 Vol.4~』
発売中

Blu-ray:¥6,200(税込)KIXM-559
DVD:¥5,500(税込)KIBM-987
CD:¥3,300(税込)KICX-1175

【収録曲】
1.霧の川
2.雨のなごり坂*
3.鳰の湖
4.紙の鶴
5.佐渡の夕笛
6.剣ひとすじ
7.一匹道中
8.人生一路
9.SING,SING,SING*
10.A列車で行こう*
11.虹の彼方に*
12.雪
13.傷心
14.かもめの街
15.夏の扉
16.世界中の誰よりきっと
17.慟哭
18.飾りじゃないのよ涙は
19.花と蝶
20.さだめ燃ゆ
21.火の螢(幽玄組曲バージョン)
22.椿姫咲いた(幽玄組曲バージョン)
23.みどりのケセラセラ
24.女の花吹雪
25.伊那のふる里
26.花の旅・夢の旅
※「*」の楽曲はCDには収録されておりません。あらかじめご了承ください。

丘みどり オフィシャルサイト:https://www.okamidori.com/

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