柏木由紀にとって“アイドル”は天職だ AKB48来春卒業、タフな活動の軌跡を辿る

 ここまではキラキラした部分に焦点を当てて紹介してみたが――そのような面ばかりを磨いていたわけでもないのが、彼女の魅力の奥深さだ。ユーモアを自身のアイドル像に加えてきた点にも触れておきたい。「寝ても覚めてもゆきりんワールド。夢中にさせちゃうぞ!」「私のこと好きですか? 好きって言ってくれなきゃ拗ねちゃうもんねっ!」――自己紹介の際のキャッチフレーズは、彼女の根底にあるユーモアを示す好例だ。特に「夢中にさせちゃうぞ!」と「拗ねちゃうもんねっ!」は、いわゆる“ぶりっ子”度合いが高いがゆえに生じる痛々しさが和やかな笑いに昇華されている。完璧なアイドルであるためには“抜き”と“隙”も大切であることを知りながら考えたと想像できるこのキャッチフレーズは、親しみやすい彼女の佇まいに非常によく似合う。バラエティ番組に出演した際にお笑い芸人からのツッコミを誘う武器としても有効活用されてきた。このような部分からも、彼女の自己プロデュース力の高さを窺い知ることができる。

 そして彼女について語るうえで欠かせないのが、精神的なタフさだ。これこそがもしかしたら“アイドル 柏木由紀”の土台として最も重要なのかもしれない。アイドルは人気者であるがゆえに、どうしても誹謗中傷と無縁ではいられない。特に昨今は心ない言葉がSNSによって可視化されてダイレクトに届いてしまう。当人が精神の均衡を保つのは至難の業だろう。それでも、たくましくあり続けている彼女の姿を感じたい人には、彼女のオフィシャルYouTubeチャンネル「ゆきりんワールド」の視聴をおすすめする。

 同チャンネルには「コメントパトロール」というタイトルの動画が時々アップされているが、これはYouTubeやInstagramに寄せられたあまりありがたくないコメントを次々と本人が読み上げる企画だ。「ひどい!」と率直に反応を示しつつも殺伐としたトーンにはならず、度々大笑いし、きちんと反論もしつつエンターテインメントとして成立させている様にいつも感心させられる。2年ほど前に彼女にインタビューをした際、この動画についても触れたのだが、怒りつつもいつの間にか笑ってしまう旨を明るく語り、「アイドルをやってる人は強いと思います!」という言葉も添えていたのが印象的だった。

コメントパトロールしました!!!

 思いつくがままに綴ってみたが、“アイドル 柏木由紀”を作り上げている要素のすべては“強さ”という言葉で表せることにふと気づいた。アイドルに憧れた幼年期の自分を裏切らず、誰よりもアイドルでありたいと工夫と努力を重ね、いつの間にかAKB48在籍期間の最長記録を樹立していた柏木由紀。プロフェッショナルを貫き続けている軌跡は、辿ってみると晴れやかな気持ちになれる。彼女のさまざまな面から自ずと滲み出ていた強い意志がファンに届けたポジティブなエネルギーも、計り知れないものがあるはずだ。来年の春に迎えるAKB48からの卒業が大きな節目になるのは確かだが、その先も自身が信じる“アイドル”を追求していくことを本人が発するいろいろな言葉から感じ取れるのが嬉しい。年齢を重ねるなかで既成概念を打ち破り、新しい女性アイドルの形を更新していくことになるのだろう。ファンをワクワクさせる輝きを絶やさないという点でも、彼女の天職はやはりアイドルなのだと思う。

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