Superfly『下剋上球児』、藤井 風『いちばんすきな花』……意外なアプローチも見られる最新ドラマ主題歌

ミイナ・オカベ「Flashback feat. Daichi Yamamoto」(『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』)

ミイナ・オカベ「Flashback feat. Daichi Yamamoto」フジテレビ系月9ドラマ『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』主題歌 (Visualizer)

 月9ドラマ『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』(フジテレビ系)は、3人の俳優が主演を務める物語。無機質なピアノのループから始まり、そこにミイナ・オカベによる人肌の体温を持った柔らかい質感のボーカルが登場。徐々にドラムやベースが合流し、グルーヴィーかつ立体的なサウンドが構築されていく。まさに3人主演による複層的なストーリーが展開されるこのドラマに通じる音作りだ。

 ミイナ・オカベは「エヴリー・セカンド」がTikTokで大ヒットしたものの、キャリアを考えると月9主題歌は大抜擢と言える。プロデュースは宇多田ヒカルとの共同制作でも話題の小袋成彬。それゆえ音の鳴りがとにかく良い。昨今の新世代ジャズシーンにも接続し得る洗練されたこの曲のサウンドプロダクションは、ロンドンに拠点を置いて現地の音楽を生で感じ取っている小袋だからこそ生み出せるものだ。そんな小袋と、現在はデンマークのコペンハーゲン在住のミイナ、そして客演として参加したDaichi Yamamotoはジャマイカ人の母を持つ京都在住ラッパーと、日本を共通項とした国際色豊かな3人のミュージシャンが交錯した一曲である。

中納良恵・さかいゆう・趣里「ハッピー☆ブギウギ」(『ブギウギ』)

「ハッピー☆ブギ」(中納良恵 さかいゆう 趣里) オフィシャルオーディオ

 3人が交錯したと言えば、NHK連続テレビ小説『ブギウギ』もそうだ。主題歌「ハッピー☆ブギウギ」は、主演を務める趣里と、シンガーソングライターのさかいゆう、そしてジャズやレゲエ~昭和歌謡などから影響を受けた独自のスタイルを持つバンド・EGO-WRAPPIN’のボーカルを担当する中納良恵の3人が賑やかなハーモニーを聴かせている。

 変に現代的な要素を絡めず、〈無重力みたい〉や〈幸せ過ぎる〉といった、音楽の素晴らしさにフォーカスしたシンプルな歌詞は普遍的で、いつの時代にもフィットする明るい曲に仕上がっている。スキャットを含んだ底抜けに明るいフレーズや、思わず体を動かしたくなるようなダンサブルなリズムも楽しい。音作りは本格的で、重厚感のある金管楽器の響きはパワフル。歌に苦手意識があったという趣里の歌声もフレッシュに響く。朝ドラらしい、視聴者の毎朝の生活をポジティブにする力を持った一曲である。

関連記事