伊藤さんの声があるだけで曲がポジティブな空気を放つ（坂部）

ーー伊藤さんはこの曲の歌詞やメロディ、サウンドを受け取って聴いたとき、どう感じましたか？

伊藤：本当にフワッとした無重力感があるといいますか、「こんな曲、聴いたことない」というのが最初の印象でした。不思議な空気感なんだけど、サビになるとバックトラックの音が急に耳に飛び込んできて、聴きながら『星屑テレパス』のいろんな場面が思い浮かぶし。「すごいな、こんな表現ができるんだ！」と思ったのと同時に、「ああ、これを自分が歌うんだった！」とドキドキしました（笑）。「ワタシイロ」からの「点と線」だったので、いいところを見せたいなと思っていましたし、それこそ坂部さんや紫緒さんに「成長したな」と思っていただけるように練習していこうと頑張りました。

坂部：でも、「ワタシイロ」の頃と比べると、今回の「点と線」のレコーディングは歌録りにかかる時間がだいぶ短くなったんじゃないかな。

伊藤：確かに、あの頃よりは短くなりましたね。実は1stアルバムのレコーディングでは、「ワタシイロ」は一番時間がかかったんですよ。当時は必死でしたし、20歳の私にとっては「こんなにいい曲をもらったなら、歌いこなさないといけない！」という謎のプレッシャーを自分で自分にかけてしまっていたので、だいぶ堅い感じでレコーディングが始まっていた記憶があって。それを和らげようと、ディレクターさん含め現場の皆さんが「こういう歌い方はどう？」といろいろ提案してくださって、それを試しながらだったので時間もかなりかかったんです。

坂部：その頃と比べると、今は自分でどう歌いたいか、どう歌ったらいいかということが見えてくるようになってきたんでしょうね。それが今回のレコーディングには端的に表れていたと思います。

伊藤：読解力が少しはついたのかなとは思います。ただ、「ワタシイロ」よりは時間がかかっていないけど、「点と線」は自分の中では相当苦戦した曲でもあって（笑）。レコーディング中に付け足してもらう部分も多かったですし、その場でディスカッションしながら丁寧に作っていきました。

ーー確かに、「点と線」は歌うのが難しそうですよね。

坂部：作曲した自分で言うのもなんですけど、難しいと思います。

伊藤：そうですよね？ よかった、先生がそう言うなら本当なんだ（笑）。しかも、今回は三拍子でしたし、サビになるとバックトラックのリズムが複雑になるし。なので、「どうやって考えたんだろう？」って坂部さんの脳内を覗いてみたくなりました（笑）。

坂部：僕自身はそんな複雑なものを作ろうと思っていたわけではなくて、自然とこういう形になっただけで。

ーー先ほど、レコーディング現場で付け足されたものも多かったとおっしゃいましたが、具体的にはどういったものなんですか？

伊藤：Dメロの3声になっているところの調整は、まさにそうでしたね。〈果てしない　光〉のところはめちゃくちゃ時間をかけて録ってもらいましたし。このパートはいろんなところからふわふわした声が聞こえてきて、私の中では特に宇宙感の強いパートなんです。

坂部：あのDメロはラストサビに突入する前のフックとして、事前に考えていたものでした。

伊藤：あとは、ウィスパーボイスで歌うところも。この曲は元気はつらつというよりは、スッと耳に入ってくるような高音が続く曲でもあるので、フワッとしたウィスパーボイスに近い声質で歌おうという話になったんです。それこそ、思いを全部声に乗せるというよりはこの声は歌詞を運ぶための楽器であるという気持ちだったので、ほかの楽器と調和するような声質にしたくて。なので、地声で歌ったりといろいろ試したりもしました。

ーーそういうお話を聞くと、「ワタシイロ」からの6年で楽曲への取り組み方がどんどん変化したんだなと驚かされます。

伊藤：6年前は一言も喋れなかったですしね（笑）。

ーー今回の現場での伊藤さんの姿を見て、坂部さんはどう感じましたか？

坂部：「アーティストとしてどうありたいか」という思いが以前よりも強くなっているでしょうし、それが歌声にも出ていると感じました。実際、表現の幅も広がったと思いますし。あと、これは最初に出会った頃から変わっていないですけど、伊藤さんの声にはポジティブな印象があって。それがアニメ主題歌とすごくマッチしていて、ここからアニメが始まるというワクワク感にもつながって素敵だなと思います。

伊藤：おこがましいんですけど、私は坂部さんが作る楽曲、中でも特撮の楽曲をたくさん聴かせていただいていて。坂部さんの楽曲も「いくぞ！」みたいに、戦いに臨む際の前向きさが伝わるものが多い気がするんです。なので、「点と線」はポジティブ×ポジティブだなと、今勝手に思っていました（笑）。

坂部：ありがとうございます（笑）。

ーーこの機会に、お互いに聞いてみたいことは何かありますか？

伊藤：本当に坂部さんの楽曲には、ヒーローたちが登場人物たちの背中を押すようなメロディやサウンドがすごく多くて。なので、坂部さん自身もポジティブな方なのかなと思っていたんですけど、実際はどうなんですか？

坂部：自分ではポジティブだと思っていますよ。

伊藤：作曲しているときは、ネガティブな気持ちよりもポジティブな気持ちで進めていくことが多いんですか？ 中にはネガティブが力になる人もいるじゃないですか。

坂部：そうですね。でも、完成したものにポジティブさがあることはすごく大事だと思っていて。ポジティブでい続けることは難しいとは思うんですけど、そんな中でもアイドルとか声優さんにポジティブさを求める人もたくさんいますよね。そのひとつが伊藤さんの声だと、僕は思っていて。伊藤さんの声があるだけで曲がポジティブな空気を放つので、すごく素敵な個性だなと思っています。

伊藤：ああ、私が質問したのに、最終的に褒めてもらう感じになってすみません（笑）。

坂部：逆に伊藤さんは自分をポジティブだと思いますか？

伊藤：私はすごくポジティブになれるときと、めちゃくちゃ落ち込むときがあって。ただ、「できない！」とか「難しい！」ということがパワーにつながるタイプだと思うので、「点と線」も最初は試練だと思っていたんですけど、実際に坂部さんや紫緒さん、ディレクターさんたちと話していくとどんどんポジティブな気持ちになって、それが良い形で声に乗ったと思うんです。そういう意味では……なかなか難しいですけど、いいタイミングにポジティブを使えるような人間になりたいと、常に思っています。

ーー日常生活の中で、ポジティブな気持ちにさせてくれるものや行動って何かありますか？

坂部：僕は家族……妻と猫ですね。

伊藤：妻と猫って、幸せすぎる（笑）。

坂部：仕事柄ずっと家にいるので、妻も猫も常に一緒にいるんです。猫にも癒されているし、妻にもいろいろ助けられているし、そういうことなのかなと。

伊藤：癒しがすぐそばにある生活、素敵ですね。私はずっと趣味のヒーローたちからは毎週勇気と希望をもらっていて、これが定期的に摂取できる癒しです。ほかにもヒーローショーに行って、より一層癒しをもらったり。結局、私はオタク活動になっちゃいますね。

ーー坂部さんはアーティストしての伊藤さんに対し、今後期待していることはありますか？

坂部：人をポジティブにする力も持っている方なので、それをずっと持ち続けていてほしいと思っています。こればかりは限られた人にしかできないことだと思うので。

伊藤：頑張ります！ 時には方向転換するのも、アーティストとしてはアクセントになるのかもしれないけど、私は変わらないことが第一だなと思うので、今ある道を一歩一歩、着実に進みたいと思います。

ーーもし今後、坂部さん×渡部さんコンビから三度楽曲提供してもらえる機会があったら、伊藤さんはどんな曲を歌ってみたいですか？

伊藤：そうだなあ……「ワタシイロ」は可愛い感じで「点と線」は清らかな感じだったので、次は「点と線」以上に壮大で、気品があってファンタジックで、なおかつカッコよさもあるような曲を歌ってみたいです。でも、そんなことを言っているとレコーディングで私が苦しみそうな未来が見えますが（笑）、そういう機会がまたありますように願っています。

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■リリース情報
伊藤美来　11thシングル『点と線』
発売日：2023年10月11日（水）
DVD付き限定盤（CD+DVD）：2,090円（税抜1,900円）　COZC-2032～3
「点と線」Music Video、メイキングを収録したDVDを同梱。
通常盤（CD）：1,430円（税抜1,300円）

＜CD収録内容＞
1.点と線　TVアニメ『星屑テレパス』オープニング主題歌
作詞：渡部紫緒　作曲・編曲：坂部 剛
2.空色ミサンガ
作詞・作曲・編曲：今井亮太郎
3.点と線(off vocal ver.)
4.空色ミサンガ(off vocal ver.)
＜DVD収録内容＞
1.点と線 Music Video
2.点と線 メイキング映像

■アニメ情報
TVアニメ『星屑テレパス』
【キャスト】
小ノ星海果：船戸ゆり絵、明内ユウ：深川芹亜、宝木遥乃：永牟田萌、雷門瞬：青木志貴、笑原先生：高森奈津美、小ノ星穂波：羊宮妃那
【スタッフ】
原作：大熊らすこ　『まんがタイムきらら』連載（芳文社刊）
監督：かおり
シリーズ構成：高橋ナツコ/かおり
キャラクターデザイン／総作画監督：酒井孝裕
美術監督：根岸大輔（スタジオちゅーりっぷ）
美術設定：滝口勝久（スタジオちゅーりっぷ）
色彩設計：歌川律子
3D監督：薄井俊作（EGG OF MIGRANT）
撮影監督：千葉大輔（Folium）
編集：武宮むつみ
音響監督：納谷僚介
音楽：sakai asuka
オープニング主題歌：「点と線」伊藤美来
エンディング主題歌：「天体図」サンドリオン
制作スタジオ：studio五組

■伊藤美来 Official Music Information Site | 日本コロムビア
https://columbia.jp/itomiku/

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