9mm Parabellum Bullet、結成19周年祝う9年ぶり武道館を“ライブハウス”空間に バンドの過去・現在・未来を見せた一夜

 結成19周年を記念して『19th Anniversary Tour』と銘打ち、1月から12月までのあいだの9日と19日に、全国各地でライブを行う、もしくはYouTubeでライブを配信する、あるいはアコースティックライブを開催する。

 そういう形で、2023年の“9日”と“19日”を埋め尽くす――という、周年企画で何かやるのはバンドの常套手段だが、ここまでやるか?と言いたくなる徹底ぶりの、現在の9mm Parabellum Bulletである。

Photo by 西槇太一

 あ、だからといって「2023年は9日と19日しかライブをやらない」ということではない。フェスやイベントへの出演、対バンゲストや、10月7日帯広MEGA STONEの『19th Anniversary Tour 〜Extra〜』のように、それ以外の日も、積極的に動いているのだが。

 そのようなこだわりの一年である、9mmの2023年のなかの究極の日が、9月19日 火曜日だった。バンド結成19周年という記念の年である2023年の9月19日に、9年ぶりの日本武道館ワンマン『9mm Parabellum Bullet presents「19th Anniversary Tour」〜カオスの百年vol.17〜』を、行う。という。

菅原卓郎(Photo by SHIN-1)

 この武道館の開催にあたって、9mmは事前にファンから、武道館で聴きたい曲のリクエストを募った。が、そのリクエストの結果の、上位の曲から演奏します、ということではない。この日、頭4曲を演奏したところで挟んだ最初のMCで、菅原卓郎(Vo/Gt)はオーディエンスに告げた。みんなからもらったリクエストで、9位と19位に選ばれた曲を、俺たちは演奏します、と。

 あっはっは。そこまでやるか。しかし、同投票数で同じ順位になる、ということは当然あるにしても、つまりこれ、9位と19位を足してぴったり9曲になった、というわけですよね。もう、偶然まで味方をしているとしか思えない。

滝 善充(Photo by 河島遼太郎)

 ちなみに、人気投票企画をやるたびに不動の1位だったが、今回陥落した、という紹介から、9曲目に演奏されたのは、「光の雨が降る夜に」だった。

 アマチュアの頃からある曲が、ずいぶん後になってからアルバムに入ることもある。インディーズの時に入れようとしたが、うまく仕上がらなくて外して、2ndアルバムの時に淳治さん(いしわたり淳治プロデューサー)と一緒に再トライしたけどまたダメで、3rdの時にようやく入った曲。それが、今回のリクエストで1位になった――卓郎曰く、「Finder」は、そういう曲だそうだ。17曲目にプレイされた。

中村和彦(Photo by SHIN-1)

 本編の1曲目は「The World」で、本編ラストは「Punishment」、つまり1stフルアルバム『Termination』からの曲を頭と終わりに配置。歴代の代表曲をプレイして期待に応えつつ、レア曲も取り混ぜて驚かせつつ、8月9日にリリースされたばかりの最新シングル「Brand New Day」や、音源未発表の新曲もプレイしていく。

 そのように、「リクエストを募る」「9と19にこだわる」「そのうえで9mmの過去も現在も未来も表す」の3つをクリアした、こだわりと創意工夫に満ちたセットリストが、この日の武道館の、ひとつの大きなポイントだった、と思う。

かみじょうちひろ(Photo by 河島遼太郎)

 そして、もうひとつの大きなポイント。9mm Parabellum Bulletは、ライブハウスのバンドである。ライブハウスで生まれて、ライブハウスで育って、ライブハウスで生き続けて、今もライブハウスにいる。という矜持に貫かれたステージだった、という点だ。

 まず、日本武道館なのに、ステージ上のメンバーの姿を映すLED画面がない。この日のライブは、U-NEXTでの生配信が入っていた。つまり、ステージを撮影・中継できる機材や人員は揃っていたわけで、画面を設けなかったのは“あえて”だということになる。ステージ後方にどかーんとバンドのバックドロップが吊るされているだけで、ステージセットらしいセットもなし。大会場らしい演出は、銀テープの特効と、照明の一部としてのLEDくらいで、最小限だった。

Photo by 河島遼太郎

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