SIX LOUNGE、ポップネスを宿した新基軸で次なるフェーズへ 結成10周年を経てさらに自由に進んでいく決意

 3ピースバンド、SIX LOUNGEからニューアルバム『FANFARE』が届けられた。シングル曲である「キタカゼ」(日本テレビ系アニメ『僕のヒーローアカデミア』6期第2クール・エンディングテーマ)や「Paper Plane」「リカ」を含む本作は、彼らの身上である性急で爆発的なロックンロールはそのままに、さらなるポピュラリティを理想的な形で反映させた作品となっている。

SIX LOUNGE「リカ」from "Northwind"Streaming Studio Session

 2012年、地元・大分で結成されたSIX LOUNGE。ハードロック、ロックンロール、オルタナティブロックをはじめ、ヤマグチユウモリ(Gt/Vo)のルーツであるフォークや歌謡のテイストを感じさせる音楽性、そして、生々しい感情をダイレクトに反映したバンドサウンドによって、ロックファンの強い支持を得ている。彼らに初めて取材したのは2018年のメジャーデビューのタイミングだったが、愛想のなさと人懐っこさを併せ持ったメンバー3人の雰囲気も魅力的だった。

 結成10周年を迎えた2022年10月には、レーベル移籍第一弾となるEP『ジュネス』を発表。現在のヒットチャートを意識した曲作りに加え、アレンジャーに野間康介(LiSA、Aimer、関ジャニ∞などの楽曲を手がけるクリエイター)、マツキタイジロウ(SCOOBIE DO)が参加。楽曲の幅が広がると同時にポップスとしてのテイストが反映され、新たなスタートに相応しい作品となった。

 今年3月には先述した「キタカゼ」を発表。彼らにとって初のアニメタイアップとなるこの曲には、Carlos K.(Little Glee Monster、SixTONES、Tani Yuukiなどの楽曲を手がけるクリエイター)が共同アレンジャーとして参加し、SIX LOUNGE×ヒロアカの化学反応を見事に演出してみせた。さらに8月には、インディーズ時代に発表した楽曲「リカ」の再録バージョンを配信リリース。aikoが『Love music』(フジテレビ系)で「スゴい!と思った恋愛ソングの歌詞」(※1)として紹介したこの曲は、狂気的とも言える愛を歌ったミディアムチューン。TikTokなどでも拡散され、バンドの知名度アップにつながると同時に、ナガマツシンタロウ(Dr/Cho)の作詞家としての尖ったセンスにも改めて注目が集まった。

SIX LOUNGE「キタカゼ」Music Video

 まさに〈追い風を味方につけた僕はもう独りじゃない〉(「キタカゼ」)という歌詞を実現しつつあるSIX LOUNGE。このタイミングでリリースされるアルバム『FANFARE』は彼らにとっても大きなターニングポイントになるはずだ。

 アルバムのオープニングは、「アナーキー・イン・ザ・人生」。イワオリク(Ba/Cho)の骨太のベースライン、〈「ねえ、真面目じゃいられない!」〉から始まるこの曲は、鋭い疾走感と解放感に溢れたメロディラインを軸にしたロックナンバー。1分30秒に満たないショートチューンだが、〈オリジナルのアナーキーで/叫ぶ歌よ届け〉というフレーズからは、現在の彼らの心境とスタンスが真っ直ぐに伝わってくる。これは筆者の想像に過ぎないが、「俺たちは変わらない。どこまでも自由に、めちゃくちゃやってやる」という宣言なのだと思う。

 2曲目の「俺たちのファンファーレ」は、このアルバムの軸であると同時に、彼らの新たなアンセムとなることを運命づけられた楽曲だ。ステージで演奏しているシーンが浮かぶような生々しさをたたえたバンドサウンドとともに放たれるのは、〈すげえ夢だろ、掴めよ〉という前向きな意志に溢れた言葉。大らかでダイナミックなメロディライン、すべてのフレーズに強い説得力を与えるヤマグチユウモリの歌声を含め、このバンドが今、さらなるスケール感を獲得しつつあることがはっきりと伝わってくる。そう、冒頭の2曲で彼らは、『FANFARE』というアルバムで何をやりたいかを明確に示している。その根底にあるのは、「俺たちは俺たちのまま、絶対に勝つ」という決意だろう。

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