リアルサウンド連載「From Editors」第22回:『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』 猛暑を忘れさせる没入感は夏の定番に?
「From Editors」はリアルサウンド音楽の編集部員が、“最近心を動かされたもの”を取り上げる企画。音楽に限らず、幅広いカルチャーをピックアップしていく。
『ムーラン・ルージュ』猛暑を忘れさせる没入感
20代半ばというのは思いもよらず何かにのめり込むタイミングのようで、数年ぶりに会った友人がいつの間にかK-POPアイドルにハマって韓国語を習得していたり、突然筋トレに目覚めてムキムキになっていたりすることは珍しくないです。何かが強烈に好きな人の話を聞くのが大好きなので誰と会っても楽しい状況なのですが、話を聞いているとどんなジャンルでも「何かに熱中している」人にとって夏は特別なシーズンであることに気付きます。エンタメなら夏フェスや夏コンサート、スポーツも夏に大きな大会があったり、大切な試合が夏に設定されることが多いようです。夏に何かしたくなる、なんとなく夏は楽しいことがしたいというのは何が好きな人でも共通なのかもしれません。では、私は今年の夏は何に熱中しているのか、それは完全に『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』(以下、『ムーラン・ルージュ』)だと断言できます。
『ムーラン・ルージュ』は帝国劇場で6月24日から8月31日まで上演されていたミュージカル作品です。帝国劇場で上演される作品のほとんどが1カ月程度の上演期間なのに対して、今年の夏の帝国劇場はずっと『ムーラン・ルージュ』を上演していたことになります。それでも、この「なにか楽しいことがしたい!」という季節にぴったりな作品がこの『ムーラン・ルージュ』だったように感じます。
『ムーラン・ルージュ』は1899年のパリを舞台に、アメリカ人の作家であるクリスチャンと、ナイトクラブのスター、サティーンが出会ってから恋に落ち、様々な邪魔が入りながらも窮地を脱するという、ミュージカル作品としては割と定番とも言えるような筋書きになっていますが、この作品の一番の見どころは豪華なセットと楽曲でしょう。
そもそも帝国劇場という場所自体がなんだか重厚な雰囲気があって、非日常感がある劇場ですが、『ムーラン・ルージュ』上演中は劇場ロビーからもう舞台が始まっているようなデザインになっていて、猛暑の有楽町から1899年のパリに突然移動したような感覚になります。
今作は「ジュークボックスミュージカル」とされている通り、オリジナルの楽曲は数曲で、既存の楽曲を多く使用したものになります。その訳詞担当が松任谷由実さんをはじめめちゃくちゃ豪華な顔ぶれなのですが、楽曲ごとに異なる方が訳詞を担当していることもあり、曲ごとに個性が出つつも、舞台の中で馴染むちょうどいい形になっていたと思います。
『ムーラン・ルージュ』は来年の夏も同じく帝国劇場で上演されることが決まりました。このまま夏の風物詩として、サマソニ・甲子園・『ムーラン・ルージュ』という形で、夏に熱中するものとして定着するといいな〜と願っています。
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