連載『lit!』第64回:Showy、QUIZI A RHYME、OZROSAURUS、Lil Soft Tennis……ストーリーテリングが光る国内ヒップホップ
OZROSAURUS『NOT LEGEND』
OZROSAURUSによる新作『NOT LEGEND』は、思いの外、内省的な作品になっている。先行曲として話題になった「Player’s Player feat. KREVA」がそういったコンテクストを含んでいたように、自身のキャリアを振り返りながら、現在地点の熱と安住をラップしている。OZROSAURUSのGUNHEADが多数のトラックを手掛けながら、上述した「Player’s Player」のBACHLOGIC、他にもEVISBEATS、DJ PMX、Olive Oilなど多様なビートメイカーが集い、それにMACCHOが独特のリズムアプローチとライミングでラップを刻む。全編聴きどころの多いこの作品が、非常にパーソナルな作品であり、ムードとして統一感を遵守しながらも開けた印象があるのは、客演のKREVAやZORN、そして参加のビートメイカーたちとの繋がりによるものだろう。アルバム単位で過去作にも見られたような内省的な色が、よりブルージーでシンプルに昇華された印象を受けるレコードである。
Lil Soft Tennis『i have a wing』
Lil Soft Tennisの身軽さは希望的に映る。浮遊感とポップなデザイン、柔軟なボーカルが牽引するニューアルバム『i have a wing』は、軽快な音楽性で、ハイパーポップやベッドルームポップに接近するような作品である。等身大なラブソングに彩られながら、多様で速い展開となっており、一瞬で駆け抜けるような全9曲24分。爆発的な「Ni Che (feat. kegøn)」、次世代の新たなアンセムになりそうな「Fucked Up!!」など、ビートの快楽やメロディのスマートさも際立ち、クライマックスと終幕を飾る「Girl」の転換の意外性にも驚く。ジャケットにおける、車の窓に反射する青空と同じように、Lil Soft Tennisの歌は、我々の生活の刹那的な側面と些細な喜びを拾い上げ、反射させ見せているような感触がある。一貫していて気を張らず、ポジティブでありながらセンチメンタルな空気も漂う。後ろ向きではない音楽の魅力を充分に兼ね備えた良作である。
OZROSAURUSとKREVAは今も火花を飛ばし合っている ビーフを経たコラボレーションが持つ“和解以上の意味”
今年の夏は暑い気がする。すでに猛暑が我々を襲う2023年。その中で、もう一つの熱の記憶がある。 7月4日にMVがドロップされ…
連載『lit!』第58回:NORIKIYO、Sadajyo & Jeff Loik、Pitch Odd Mansion……独自の美学で主張する国内ヒップホップ5作
早くも上半期が過ぎた2023年。幕張メッセで開催された『POP YOURS』やABEMAで放送されていた『ラップスタア誕生』など…