ブルーノ・マーズ、驚異のドーム7日間公演は新たな“洋楽全盛期”の象徴に マイケル、ストーンズ……大規模来日公演史も辿る

 特に、ブルーノ自身もその影響を強く公言しているマイケル・ジャクソンがかつて東京ドームを中心に旋風を巻き起こしていたというのは、(考え過ぎではあるのかもしれないが)どこか運命的なものを感じてしまったりする。ソングライティングとパフォーマンスの両面において並外れた才能を発揮し、ポップミュージックそのものを定義し、音源はもちろんのこと、何よりもライブにおいて圧倒的な“エンターテインメント”を提示してみせる。少なくとも、筆者にとって両者はそんな存在であり、昨年末に参加したブルーノの来日公演は、その感覚を裏づけるかのように、明らかに今まで参加したライブの中でも別次元の体験だった。詳細は当時のライブレポートに任せるが(※1)、「今、彼のライブを観ることができる」「しかも、こんなにたくさんの人とその喜びを分かち合える」ということが嬉しくて仕方がなかった。あれから新作が出たわけではないし、おそらく来日公演までに発表されることもないと思われるが、そんなことはどうでもいい。きっとセットリストやアレンジ、演出面など、前回の来日公演を経てさらにブラッシュアップされることだろうし、その一見すると“ちょっとした変化”に驚異的なこだわりを見せるのがブルーノ・マーズというアーティストである。今回初めて参加する人はもちろんのこと、前回参加したという人も間違いなく新鮮な気持ちでそのパフォーマンスを堪能することができるはずだ。また、前回の来日公演では、会場“外”でのファンとの交流も大きな話題となっていたが、(過度な期待や行き過ぎた行動には注意しつつ)そういったエピソードの登場も楽しみにしたい。

ブルーノ・マーズ(64th Annual Grammy Awards)

 さて、先ほど80年代後半から90年代が「洋楽シーンの全盛期」と書いたが、実は筆者の中では、これから新たな全盛期を迎えるのではないかという感覚を抱いている。ブルーノ・マーズのチケットの売れ行きが象徴するように、明らかにここ数年で海外アーティストの来日公演の頻度と規模が大きくなっており、ソールドアウトは前提として、その早さに驚かされるケースも少なくない(今年の『SUMMER SONIC』は史上最速でソールドアウトした)。その背景にはパンデミックからの反動や、SNSの浸透による情報共有の高速化も考えられるが、特に大きな要因としてインバウンドを筆頭とした非日本語圏の観客の増加が挙げられるだろう。海外アーティストの来日公演に足を運び、客席で日本語以外の言語を耳にすることは、もはや全く珍しいことではない。結果として、海外の動きがよりダイレクトに日本国内にも反映されるようになったのではないだろうか。筆者個人としては、チケット確保の難易度が上がるのは悩ましいが、基本的にはポジティブなこととして捉えている。

 ブルーノ・マーズの東京ドーム7日間公演は、ある意味では2024年の洋楽シーンの開幕を告げる合図と言えるかもしれない。Queen + Adam Lambert(2月13日、14日)、ビリー・ジョエル(1月24日)、そして遂に実現するテイラー・スウィフト約5年ぶりの来日公演(2月7日から10日、4日間!)など、すでにさまざまな海外アーティストが東京ドームでのライブを控えており、きっとそのラインナップはさらに増えていくことだろう(もちろんドーム以外のライブも同じくらい重要だ)。そして、かつてそうだったように、私たちはそのお祭りを盛大に盛り上げ、みんなで楽しめばいいのである。

※1:https://realsound.jp/2022/11/post-1168880.html

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