ブルーノ・マーズ、驚異のドーム7日間公演は新たな“洋楽全盛期”の象徴に マイケル、ストーンズ……大規模来日公演史も辿る

 ブルーノ・マーズが2024年1月11日から18日にかけて、計5公演に及ぶ東京ドームでの来日公演を開催する。昨年秋に京セラドーム大阪2日間+東京ドーム3日間という盛大なツアーを大成功させた記憶も束の間、それほど間を空けずに発表された今回の公演はそれ自体が大きな話題を呼んだが、それ以上に衝撃的だったのは、この5公演のチケットが即日ソールドアウトとなり、ダメ押しとばかりに2日間の追加公演が決定したことである。要するに、ブルーノは東京ドームで7日間もライブをやるのだ。しかも、全公演ソールドアウトの確率はかなり高い。

ブルーノ・マーズ(iHeartRadio Music Awards)

 昨年の時点で、海外どころか日本人アーティストですらなかなか実現できない規模のツアーを実現してみせたブルーノ・マーズだが、今回の東京ドーム7日間公演に関しては、もはや日本人アーティストですら限りなくレアケースである。過去20年ほどを遡ってみても、これ以上の記録となると2017年の三代目 J SOUL BROTHERS(計10日間)、2009年のKAT-TUN(計10日間)が比較対象となってしまうほどで、どちらも当時の日本国内で社会現象クラスの人気を誇っていたことを踏まえると、今回のツアーのスケールがいかに破格であるかを改めて実感することができる。

 だが、実はさらに時を遡ると、今回のブルーノ・マーズ来日公演に匹敵するほどの大規模な海外アーティストによる東京ドーム公演が実現していた時期が存在する。1980年代後半から90年代にあたる時代だ。

 ポール・マッカートニー(1990年、計6日間)、ジョージ・マイケル(1991年、計4日間)、マドンナ(1993年、計5日間)、マライア・キャリー(1998年、計4日間)など、まさにレジェンド級のアーティストが日本最大級の会場である東京ドームを舞台に大規模な来日公演を開催していたのだ。

 その中でも特に有名なのが、1990年に開催されたThe Rolling Stonesの『Steel Wheels Japan Tour 1990』だろう。幻となった1973年の公演(入国拒否に伴いキャンセル)から17年という年月を経て、遂に実現したストーンズの初来日公演である。その期待に応えるかのように、1990年2月14日から27日まで、なんと10日間にも及ぶ東京ドームでのライブが行われたのだ。当時の資料やSNS・ブログでのファンの投稿からは、いかに当時の日本がストーンズ・フィーバーに熱狂していたのかをよく知ることができる(初来日公演の日となった2月14日は「ザ・ローリング・ストーンズの日」として一般社団法人・日本記念日協会に登録されているほどだ)。当時を知らない(そもそも生まれていない)音楽ファンとしては、その資料を調べたり、ライブの模様が様々なスポーツ新聞の表紙を飾っている画像を見ると、どうしても「こんな時代があったのか」と驚いてしまう。その後、ストーンズは数年おきに来日するようになり、1995年には7日間、1998年には4日間の東京ドーム公演を成功させ、直近では2014年に3日間の公演を実現している。まさに東京ドームという場所を象徴するアーティストと言っても問題はないだろう。

 だが、ブルーノ・マーズを起点に考えるのであれば、「東京ドーム」という場所にゆかりのある最も重要なアーティストは、きっとマイケル・ジャクソンではないだろうか。ストーンズの初来日からさらに遡った1987年9月12日、自身にとって初となるソロ・ワールドツアーとなる『Bad World Tour』が、後にその役割を東京ドームへと引き継ぐこととなる後楽園球場で初日を迎えたのである(同会場では3日間の公演が開催された)。その後、オーストラリア、アメリカ、ヨーロッパと世界を巡ったマイケルは、翌年の12月に日本に帰還。今度は新たに誕生した東京ドームでなんと9日間の来日公演を開催したのだ(12月9日〜26日)。その熱狂ぶりはやはり壮絶だったようで、当時は「マイケル・タイフーン」と呼ばれるほどだったようだ(当時のエピソードを調べてみると、オフの際に訪れた場所や行動が詳細に残されており、逆に怖くなってくるくらいである)。そんなマイケルもまた、1992年には8日間、1996年には4日間のドーム公演を実現している。

 90年代生まれの筆者にとって、1980年代後半から90年代という時代は、まさに日本の「洋楽シーン」が全盛期を迎えていた時期である、という印象を抱いている。当時の来日公演の日数や熱狂具合を(資料やSNS・ブログなどを通して)眺めていると、その認識はある程度正しいのだろうと思う。だが、それがかえってブルーノ・マーズの来日公演に対する喜びをより一層大きなものにしてくれるのだ。

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