菅田将暉&松下洸平、音楽活動に垣間見える共通点 俳優業の傍らではなく“本質的な表現”として突き詰める歌

 演技の世界を見渡すと、ミュージシャンとしても活躍する俳優は非常に多い。特に多いのが、演技の仕事をきっかけにシンガーとしてデビューを果たすパターンであるが、一方で、俳優としての活動とは別軸で本格的な音楽活動を継続している人もいる。

 例えば、菅田将暉は、2017年1月公開の映画『キセキ ーあの日のソビトー』で主役の一人を演じ、同タイミングで、横浜流星、成田凌、杉野遥亮と共に「グリーンボーイズ」の一員としてCDデビューしている。これは上述した「演技の仕事をきっかけにシンガーとしてデビューを果たすパターン」にあたるが、彼はその後、同年6月にシングル『見たこともない景色』でミュージシャンとして本格的なデビューを果たしており、そこから始まった音楽活動は、基本的には俳優としての活動とは別軸で進んでいるものである。米津玄師、Vaundy、石崎ひゅーい、amazarashiをはじめとしたミュージシャンからの楽曲提供を受け、RADWIMPS、あいみょん、Creepy Nuts、OKAMOTO'Sとコラボレーションを重ねてきた彼は、並行して、ミュージシャンとしてのキャリアの初期の段階から自身で作詞作曲を行ってきた。そのようにして少しずつ楽曲のレパートリーを増やし、今年2月には初の日本武道館公演を大成功に収めた。

菅田将暉 『まちがいさがし』

 歌手デビューから丸6年以上が経ったこのタイミングで改めて言うことではないかもしれないが、筆者は、菅田将暉は、なるべくしてミュージシャンになったのだと強く感じている。振り返れば、2018年にリリースされた1stフルアルバム『PLAY』の初回生産限定盤に収録されているドキュメンタリー映像『5年後の茜色の夕日~北九州小旅行ドキュメント映像~』において、彼は、自身が音楽と向き合うきっかけとなったフジファブリック「茜色の夕日」について、「大袈裟なことを言うと、この一曲で人生が変わったのかもしれません」という言葉を残していた。2012年、当時19歳だった菅田は、主演映画『共喰い』の撮影中にこの曲を何度も繰り返し聴きながら、これから先の自分の人生と深く向き合ったという。

 それから5年後に歌手デビューを果たした彼の最初の集大成となった『PLAY』のラストを飾るのは同曲のカバーであり、切実な感情が溢れ出すその歌声は、まさに、大阪から上京して東京で生きる一人の「人間・菅田将暉」の魂の叫びであった。ロックとの出会いによって絶大な影響を受け、その後、自らも突き動かされるように歌を歌い始めた彼が、今も音楽活動を続けていることは必然的であり、今後もその活動は、俳優に並ぶ彼の本質的な表現活動の一つであり続けていくのだと思う。

菅田将暉「茜色の夕日」

 また、松下洸平も、俳優として活動しながら、並行してミュージシャンとして活動している一人である。もともと彼には、シンガーソングライターとして活動を始め、音楽活動を一度休止した後に俳優としての活動をスタートさせたという経緯がある。舞台やミュージカルの経験を着実に積み重ね、2019年放送のNHK連続テレビ小説『スカーレット』で大ブレイクを果たした彼は、2021年のタイミングで改めてミュージシャンとしてデビューを果たして、俳優活動と並行して次々と楽曲をリリースしている。

 この夏、彼は放送中のドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(日本テレビ系)や、TVerオリジナルドラマ『潜入捜査官 松下洸平』に出演しており、また、舞台『闇に咲く花』にも出演中だ。そして、それらの多彩な活動とほぼ時を同じくして、7月に最新シングル『ノンフィクション』をリリースしている。収録曲は丁寧に洗練されたシックなポップスに仕上がっていて、彼の長年にわたる音楽活動が、ここにきてまた新しい結実を見せているといえる。先ほど、かつて音楽活動を休止した過去について触れたが、松下はもともとシンガーソングライターを目指していた人であり、外部から与えられるきっかけによってではなく、自らの強い意志によって音楽活動を始め、継続している点は、上述した菅田と通じる部分かもしれない。

松下洸平 - ノンフィクション(Music Video)

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