香取慎吾はなぜパーフェクトビジネスアイドルであり続けるのか ライブ、個展、セレモニアルピッチ…福岡での密着映像から紐解く
いい機会なので筆者が香取の振る舞いに感動した取材裏話を少し紹介したい。たとえば2018年、稲垣吾郎、草彅剛と共に、新潟・万代シテイにて開催された『NSTまつり2018』で、香取が取材陣一人ひとりに焼き鳥を配ってくれたことがあった。その場に集まった観客はもちろん、東京から駆けつけた記者たちに対してもファンサービスをしてくれるのかと、驚かされた。
また、個別取材でも機転を利かせる場面は見られた。今年1月、『WHO AM I』の東京会場・渋谷ヒカリエで単独インタビューを行った時のこと。個展会場で取材を進めていると、開場するタイミングで「ちょっとお客さんたちにご挨拶しに行ってもいいですか?」と一度席を立つ。すると挨拶のなかで「これからリアルサウンドっていうWEBメディアの取材を受けます」とわざわざ媒体名まで出して宣伝をしてくれたのだ。その場に集ったファンも、そして取材する側も笑顔になってしまうサプライズをさり気なくやってのける。まさに、“パーフェクトビジネスアイドル”だと感服せずにはいられなかった。
今回の映像のなかにも、開幕前夜、密着スタッフに「福岡の方ですか?」と話しかける姿が収められていた。「あれって“なんとかなんだよね〜”っていうのが、“(なんとか)っちゃん”って言うの?」と方言について尋ねる香取。その意図は、福岡会場限定作品のタイトルを「福岡っちゃん」にしようと考えていたためだった。何気ない雑談かと思いきや、作品のタイトル決めに一役買った形に。きっと、話しかけられた記者にとっては、この「福岡っちゃん」がそれまで以上に特別な思い入れを感じる作品となったに違いない。
アイドルがさまざまな才能を開花させて羽ばたいていくことが珍しくなくなったが、時にその存在を遠く感じてしまうこともある。だが、香取の場合はどれだけ活躍のスケールが大きくなっても、ずっと「慎吾ちゃん」と呼びたくなる親近感が保たれている。それは、表舞台で活躍しながらも、同時に香取慎吾をプロデュースする裏方のような立ち回りをしてみせ、いつしか同じ人を応援している同志のような感覚さえ抱いてしまうからかもしれない。今回の番組タイトルにもなっている「アイシテマース!」とは、香取がライブのラストに叫ぶお決まりの言葉だが、彼と接した誰もが逆にその言葉を届けたくなる。その理由が伝わってくる密着映像だった。