ももいろクローバーZはなぜフェスの常連に? 『サマソニ』の“伝説”、悲願の『ロッキン』出演……怒涛の快進撃を振り返る

 ももいろクローバーZが10年ぶりに『SUMMER SONIC』(『サマソニ』)へ帰ってくる! これがどれほどのニュースであるかは、『SUMMER SONIC 2012』を知る方であればより伝わるものも大きいはずだ。ももクロは8月19日に大阪・舞洲SONIC PARK(舞洲スポーツアイランド)の「OCEAN STAGE」、20日に東京会場となる千葉・ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセの「MOUNTAIN STAGE」でパフォーマンスを行う。あの2012年の“伝説”、そして翌2013年の出演以来10年ぶりだ。

 『サマソニ』でのももクロは何が“伝説”だったのか。時間と場所を2012年8月18日の大阪へ巻き戻したい。

ももクロの“サマソニ伝説”――百田夏菜子も感じた熱量

 この日は天候が大荒れで、雷も鳴り響いていた。Perfumeのライブは中断し、PITBULLの出演は雨による機材トラブルで中止になるなど、予定されていたタイムテーブルが大幅に変更された。観客、スタッフ、そして機材などあらゆる面での安全確保についても大きな不安が広がっていた。なかでも大きなショックを与えたのが、ジャミロクワイの出番直前での出演キャンセルだった(キャンセル理由について詳細は伝えられていない)。しかも、ジャミロクワイはこの日のヘッドライナー。そういったアクシデントも“フェスの醍醐味”とは言え、それでも多くの観客がこの日の『サマソニ』を消化不良で終えようとしていた(筆者もそのひとりだった)。

 途方に暮れていたジャミロクワイ目当ての観客たち。しかし「せっかくだから」と他のステージの情報をチェックし、大移動が始まった。その多くが向かった先が『サマソニ』初出演のももクロのステージだった。そして、ステージのキャパシティをはるかに超える人数が集まった。その集客率は『サマソニ』史上最大級とも言われ、さらにトラブル続きだったこの日のストレスを吹き飛ばす熱いライブを繰り広げたことから、SNS上では「漫画『BECK』の再現」などと絶賛された。かく言うももクロの出番も荒天によりタイムテーブルに変更があったため、ジャミロクワイの出演中止によって観客が流れてきたことも含め、そのステージは「奇跡の産物」と呼べるものだった。

 2012年の『サマソニ』について百田夏菜子も「あの時ステージに立って見てた景色をあらためて久々に客観視してみたら、すごいところに立たせてもらってるなっていうのと、アウェーだったなっていう記憶もあって」「その時の感覚と、それをいま客観視して映像を見ているときとでは、当時自分が見た記憶とは感じるものが違ったりもして、そんななかでもすごいペンライトがあって、盛り上がってくれて」(雑誌『BRODY』2020年10月号/白夜書房)とかなり印象的だったようで、「アウェーこそ盛り上げなきゃなって、ファンのみんなが」「その熱量とかも、今あらためて、すごいパワーをもらってるなって感じた」とモノノフ(ファンの呼称)たちへの感謝を口にしていた。たしかに、それくらい異様で巨大なパワーが当時のステージには広がっていた。

 大荒れだった2012年の『サマソニ』は、ももクロにとっては逆に「チャンス」だったのかもしれない。なぜなら彼女たちはそれまでもさまざまなトラブルや苦境に直面し、立ち向かってきたからだ。

神聖かまってちゃんとの対バン「マックスの状態を見せてやろう」

 ももクロの強靭さは、アイドルの枠組みを飛び越え、ロックバンドとの対バンを何度も経験していたところにあった。ももクロの数あるライブのなかでも屈指と言える伝説的ライブのひとつが、2011年2月25日にSHIBUYA-AXで開催された神聖かまってちゃんとのツーマン『HMV THE 2MAN ~みんな仲良くできるかな?編~「ももクロとかまってちゃん」』である。

 今でこそアイドルとロックバンドの対バンは珍しくないが、当時は“異種格闘技”として大いに盛り上がった。マネージャー兼プロデューサーの川上アキラは「対バン形式で全く違う客層の人が来ていて生中継もされているということで、極限まで彼女たちを追い込んだ時にそこから出てくるものを見せてやろうと、メンバーとも話してセットリストを決めました。この時できるマックスの状態を見せてやろうと」「太刀打ちできるところはと考えた時に、限界まで頑張るようなセットリストにしたんですよね」(雑誌『Quick Japan vol.95』2011年4月/太田出版)と、対ロックバンドをバチバチに意識して挑んだと語っている。

 あの日のももクロのライブの神々しさは、今も鮮烈に覚えている。もちろん、神聖かまってちゃんもとてつもなくすごかった。少なくとも筆者は、さまざまなカルチャー、ジャンルをトータルしてもあれほどの高揚感を得たことは現在までほとんどない。新しい世界が開かれる瞬間を目の当たりにできた。

 2011年の神聖かまってちゃんとの対バン、2012年の『サマソニ』。この時のももクロは、神がかっていた。

【ももクロLIVE】MOON PRIDE / ももいろクローバーZ(from ももクロ夏のバカ騒ぎ2014 日産スタジアム大会~桃神祭~)(MOON PRIDE/MOMOIRO CLOVER Z)

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