サンボマスター、『“超”究極ベスト』に滲む“らしさ” 伝説の『ROCK IN JAPAN FES. 2005』での変わらぬ姿も

 2023年は、サンボマスターがデビューしてからぴったり20年。というわけで、サンボマスターとそのスタッフたちは、今年「サンボマスター デビュー20周年特別企画『全員優勝計画』」という企画を打っている。

 その企画は第1弾から第3弾まであって、第1弾は、11月19日の横浜アリーナでイベント『全員優勝フェスティバル 〜ゴールデンLIVE’it!〜』を開催すること。第2弾が、『究極ベスト』の再発である。タイトルは『サンボマスター “超”究極ベスト -全員優勝Edition-』で、7月26日に発売された。そして第3弾は、8月4日公開の映画『しん次元! クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 〜とべとべ手巻き寿司〜』の主題歌「Future is Yours」のリリースである。

 6月5日に行われた、映画の記者会見でのメンバー3人の発言によると、主題歌は監督の大根仁からのオファーだったという。両者の最初の接点は、松尾スズキの初監督映画『恋の門』(2004年)に、サンボは主題歌「月に咲く花のようになるの」と出演(忌野清志郎のバックで演奏する役)、大根仁は映画のメイキングの監督として関わった時。その時に、同曲の松尾スズキ演出バージョンのMVも作られ、その制作に大根仁も関わっている。それ以来なので、このたび19年ぶりに共に仕事をしたことになる、というのも、なかなか熱い。なお、「Future is Yours」が聴ける『クレヨンしんちゃんTHE MOVIE』のエンドロール、サンボの扱われ方も含めてすばらしいので、興味のある方はぜひ。

 で、『サンボマスター “超”究極ベスト -全員優勝Edition-』について。元の『究極ベスト』は、2011年にソニー・ミュージック内のレーベル、MASTERSIX FOUNDATIONを離れた時にリリースされた。ジャケット写真を1stアルバムの時と同じ場所に行って撮り直したりしているので(幕張メッセに行き慣れている人なら「あ、駐車場の脇のところだ」とわかる路上)、本人たちもリリースに協力的だった、と推測できる。ちなみに、今回の再発のジャケットは、同じロケ地に3人のフィギュアを置いて撮影されている。

 2011年に『究極ベスト』が出た時は、ベスト盤2枚、MV集が1枚、歴代のライブ映像集が1枚、の4枚組だった。今回の再発の初回限定盤は、その4枚に、サンボが他のアーティストの楽曲をカバーした音源を収めた1枚と、『ROCK IN JAPAN FES.2005』のライブ映像の1枚が加わった、6枚組になっている。なので、今回新しくコンパイルされた2枚について書いておきたい。

 まず、カバー音源は、和田アキ子「あの鐘を鳴らすのはあなた」、奥田民生「恋のかけら」、MONGOL800「星の数 月の数」、銀杏BOYZ「NO FUTURE NO CRY」の4曲である。

 「あの鐘を鳴らすのはあなた」は、2005年11月にリリースしたシングル『全ての夜と全ての朝にタンバリンを鳴らすのだ』のカップリング曲。当時、缶コーヒー「ジョージア」のCMソングとしてオンエアされていたのを憶えている方もいるだろう。

 「恋のかけら」は、2007年10月にリリースされた『奥田民生・カバーズ』に提供したものである。なお、この年は、ユニコーンのデビュー20周年記念企画として、この『奥田民生・カバーズ』と『ユニコーン・トリビュート』の2作がリリースされ、多数のアーティストが参加した。ユニコーンが電撃的に再始動する、1年ちょっと前のことである。

 そして「星の数 月の数」は、2014年10月リリースの、MONGOL800のトリビュートアルバム『800TRIBUTE-champloo is the BEST!!-』への提供曲。「NO FUTURE NO CRY」は、2016年12月リリースの銀杏BOYZのトリビュートアルバム『きれいなひとりぼっちたち』のためにレコーディングされたものである。

 それぞれ、「キャラを立てた」というよりも「やってみたらキャラが立ってしまった」感じの、とてもサンボらしいカバーである。

 軽快なロックチューンであるオリジナルをバラードにリアレンジして、しっとり聴かせる「恋のかけら」や、同じく、3分半の時点まで弾き語りで聴かせる「NO FUTURE NO CRY」あたりが、特に聴きどころではないだろうか。オリジナルよりも速く激しくすれば形にしやすいという、ロックバンドが他のアーティストの曲をカバーする時のセオリーの逆を行っている感じが、見事なので。

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