日向坂46 影山優佳、やりたいことをすべてやり尽くすーーグループ大躍進の功労者としての5年間を凝縮した卒業セレモニー
ライブはまず、一期生がけやき坂46時代の名曲「永遠の白線」からスタート。そのまま、同じくけやき坂46時代のアルバム曲「おいで夏の境界線」へと続き、一気に2018年頃の記憶がフラッシュバックする。が、アルバム『走り出す瞬間』を携えた全国ツアーには影山は不参加だったことを思い出し、影山を含む編成での「おいで夏の境界線」はこれが最初で最後の披露であることに気付く。さらに、影山と高瀬愛奈、東村芽依とのユニット曲「夏色のミュール」も同様で、先のツアーでは影山を除くオリジナルメンバーの3人(高瀬、東村、井口)でパフォーマンスしていたことを思い出す。こうした選曲も、まさに影山がやり残したことをすべてやり尽くすというテーマに沿ったものなのだろう。
そこから、昨年のユニット曲である「その他大勢タイプ」へと続くと、影山とともに金村美玖、富田鈴花、上村ひなのが終始満面の笑みで楽曲の持つ世界観を見事に表現。さらに、ステージ上にはこの日の出演メンバーが勢揃いし、全員で「誰よりも高く跳べ!2020」を全力でパフォーマンスする。先の4曲で影山の卒業を強く意識してしまったものの、この曲の間だけは何もかも忘れて、日向坂46のエネルギッシュなステージを堪能し尽くした。ライブではお馴染みとなった曲中のブレイクパートでは、普段はキャプテンの佐々木久美が煽るものの、この日は突如影山に振られる。すると、突然の出来事に同様した影山が「……と、跳べーっ!」と若干緊張気味に叫んでみせ、会場は熱気と幸福感が入り混じった特別な空気に包まれていった。
その後、メンバーがステージから去ると、スクリーンには影山がアイドルとしての7年間を振り返るインタビュー映像が映し出される。活動初期や休業中の苦しさなどが本音で吐露され、最後の「影山優佳にとって日向坂46とは?」という質問には「日向坂というグループがあるからこそ、ここまで頑張れた。私の行動原理のすべてが日向坂があるし、自分が存在することを認めてくれた場所……まとめると、大好きなんですよね」と、澱みない言葉が溢れ出した。
映像パートが終わると、自身のペンライトカラーと同じ赤をベースにしたドレスを着用した影山が再登場。便箋6枚にしたためた思いを、会場の観客や配信を通じて観ているおひさまに向けて届けていった。彼女らしいフランクな語り口で、これまで抱えていた想いが伝えられていくが、そんな中「耳の特性でライブに不安を感じているとカミングアウトしたこと」が今でも後悔していることだったと、本音をこぼす。また、ライブ会場もどんどん大きくなっていく日向坂46において、自身がライブで苦しい顔をしてしまったり、気が散ってパフォーマンスに集中できなかったことが心底許せなかったが、「無理をしすぎてしまう私自身を許してあげられるように、自分に素直にならなきゃ、変わらなきゃ」と考え、ライブから距離を置いたことで今は気持ちも穏やかになってきたという。そして、自身の耳の特性を「視力が2.0で、ちょっと人混みが苦手で、家の外から匂いで夜ごはんを当てられるみたいな」と例えた影山は、卒業後の予定はまだ未定であることを明かしつつ、「どんな未来になっても、私を温かく見守っていてくれませんでしょうか? 見守らなくても、ちょっと頭の片隅にでも入れてもらえたらなと思います。そして、日向坂をよろしくお願いします」とおひさまに伝えた。
10数分にわたるスピーチを締めくくると、ステージ上には一期生が勢揃い。これは事前に決まっていなかったことだそうで、一期生の“はじまりの歌”である「ひらがなけやき」をアカペラでサプライズ披露してみせた。それまで笑顔を振り撒き続けていた影山だったが、気がつくと瞳から大粒の涙が溢れ出す。さらに、残りのメンバーもステージに再登場し、一輪の花とともに影山へ感謝のメッセージを伝えていった。
卒業セレモニーの最後に用意されたのは、影山にとって最初で最後のセンター曲となった「友よ 一番星だ」。グループから去ろうとする影山の姿と重なる歌詞と、旅立つ友へエールを送るような振り付けがリンクし、観る者の胸を打つ感動的なクライマックスを迎え、約3時間におよぶイベントは幕を下ろした。
グループ大躍進の功労者のひとりでもある影山の卒業を経て、日向坂46は8月末より四期生を交えた新たな形で新たな全国ツアー『Happy Train Tour 2023』に突入する。影山優佳というオンリーワンな先輩の背中を見てきた後輩たちが、このツアーでどんな化学反応を起こすのか。上村をセンターに据えた10thシングル『Am I ready?』を掲げ、さらなる進化を遂げるであろう日向坂46の今後に期待したいところだ。
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