BiTE A SHOCKがBiSHから引き継いだものと刷新したもの 宗像明将独自目線によるお披露目ライブ評
正直、ライブでまず最初に「Patient!!」が歌われたときは、メンバーの歌の力量に差がありすぎると感じたのだが、これは緊張によるものだろう。最後に歌われた「THE NEXT」では、しっかり自分たちのものにした歌唱を聴かせたのだから。
緊張をもっとも感じさせたのは、「オーケストラ」を歌ったときだった。歌いだした瞬間、「あ、そこまでやるんだ?」と私も思った一曲であり、BiSHの代表曲を歌うメンバーのプレッシャーの大きさは想像に難くない。ただ――そこに、もがいているかのような必死さを感じ、最初期のBiSH、あるいは最初期の第1期BiSに通じるものを感じたのだ。その一方、ドラムが連打されるアレンジには慄いた。現段階のBiTE A SHOCKの「オーケストラ」を聴いたら、激怒する人もいるかもしれない。しかし、楽曲が進むにつれて、メンバーのボーカルは安定感を増していったことも書き添えておきたい。なお、振り付けが男女2人の3組になる場面があった気がするのだが、あれは新鮮だった。そもそもWACKにこういうメンバー構成のグループはいなかったのだから。
開演の5分前に登場した渡辺の前説は、すっかりメディア慣れした歯切れのいい挨拶だった。また、多くの楽曲のサウンドは、ロック色は薄く、ヒップホップやクラブミュージックの要素が濃いものであった。現在のWACKの方向性を物語っている。「MONSTERS」は、トラップも鳴るテクノにアレンジされていた。トークコーナーのMCで登場したセントチヒロ・チッチの流暢な司会ぶりと、緊張で当初は言葉も出なかったSAORiはまさに対照的。チッチは、BiSHのカバーについて「生まれ変わったようにアレンジもしてくれて、初めて見た曲みたい」と、妹たちや弟たちを見守る姉のように語っていた。「サヨナラサラバ」の前には、「私たちの想いを乗せて、BiTE A SHOCKが私たちの曲をパフォーマンスしてくれます」とも。
チッチと渡辺を交えてのトークコーナー、「Patient!!」のMV初公開、お祝いメッセージ映像もあった。その映像には、元BiSHやオーディションで落選した6人からのメッセージも。そして、現場にいるチッチや渡辺からのメッセージ映像もあり、ここでも渡辺は「世界とってください」と発言したのだ。落選した6人からのメッセージでは、HANANOが泣くと、チッチまで涙する場面もあった。
BiTE A SHOCKがBiSHのカバーを今後も続けるのかはわからない。第2期BiSは当初、第1期BiSのカバーをしていたものの、ある時期から披露しなくなった。ただ、BiSHのカバーを続けるのなら重要なのは「GiANT KiLLERS」だろう。ユーモア、シンガロング、シャウトなどにより、勢いで突き進んでおり、ちゃんと歌い切れていたかというと怪しいが、勢いこそがデビューしたばかりのグループには必要だろう。BiTE A SHOCKには「楽しさ」という鉱脈も感じた。それにしても、他のメンバーの尻を指さすポーズなど、「GiANT KiLLERS」ならではの馬鹿馬鹿しい振り付けが消えて、全面的に変わっていたことには一抹の寂しさを感じたことも正直に記しておこう。
イベントの進行が押したため、最後の集合写真の撮影後、「大人の事情」ということでSAORiはステージから強制連行。残った5人に対して渡辺が語ったのが、「正直、ホールCは埋められなかった」「BiSHの目標である東京ドームも超えて、世界をとりたい」という発言だ。そして、チッチが「これでいいのかな」と言うほど曖昧な終わり方になりかけたが、渡辺の指示でメンバーが両手をつないで上げて、「BiTE A SHOCK!」と叫んで、何とか形になった。そして、ステージの端から端まで移動して、会場のファンに手を振りきってからはける姿勢は、たしかにBiSHの魂を継ぐグループである。レスは大事なのだ。MAHiTOが最後にひとりで「BiTE A SHOCK!」と叫んで走り去ったのも、ちょっと言動のおかしいメンバーが何人かいるBiTE A SHOCKらしく、ひいてはWACKらしかった。
逆風は強ければ強いほど、跳ねのけたときのカタルシスも大きいはずだ。WACKの命運を握っているBiTE A SHOCKに、勢いまかせでもかまわない、まずは折れずに突き進んでほしいと願った夜だった。
※1:https://realsound.jp/2015/05/post-3135.html
※2:https://realsound.jp/2023/06/post-1364389.html
※3:https://realsound.jp/2022/10/post-1143598.html
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