琴音、グローリア・チャペルを自分色に染め上げる凛とした歌声 観る者を温かく包み込んだ『Live 2023 -君に-』

 15分の休憩を挟み、第2部へ。第1部の黒い衣装から一転、真っ白な姿で登場した琴音は「Love Birds」で再び、彼女にしか生み出せない場所へとオーディエンスを誘っていく。「最初は足が震えていたんですけど、みなさんがすごく温かくて。楽しませていただいております」と、ライブが進む中で徐々にリラックスしてきた様子。続いては、4月にリリースされた最新作『君にEP』の中で異彩を放っていた「波と海」。深海へと潜っていくようなディープなサウンドと照明演出の中、圧巻のボーカルが響き渡った。1stアルバム『キョウソウカ』から披露された「真価論」では、洋楽ポップスを感じさせるサウンドアプローチに身を任せながら、鋭いリリックを芯のあるボーカルで力強く、繊細に表現し尽くしていく。歌い終えた後、「今回のセットリストの中で、この独特な2曲の流れが好き」と語っていたが、このパートでは琴音の中に広がる音楽性の多様さ、そしてシンガーとしてのポテンシャルを改めて実感させられることとなった。

 軽快な「戯言~ひとりごと~」でライブは後半戦へ。頭の中に渦巻く感情を畳みかけるようにメロディへ注いでいくボーカルスタイルが強く印象に残る。ギターを弾きながら歌われた「きっと愛だ」ではクラップと共に、みんなで揃える「1、2、3、4」のカウントや大合唱が巻き起こり、そのままのテンションで披露されたカラフルなポップナンバー「音色」で響かせた輝度の高い歌声が会場の盛り上がりをクライマックスへと導いていく。そして、ギターを置いて歌われたバラード「願い」でエモーショナルなシーンを作り上げた後、本編のラストナンバーとして「君に」を披露。温かな響きを持って届けられた歌には、かけがえのないファンへの感謝と、音楽への揺るがない愛情がたっぷりと込められていたように思う。

 教会に鳴り響いたアンコールの拍手に応え、再びステージに登場した琴音は、初期の大切な楽曲「夢物語」をギターの弾き語りで歌った。曲に込められた〈例えば誰かの癒しの場所になれたら〉というフレーズが胸を打つ。そこにいたすべての人が浮かべていた幸せそうな笑顔を見れば、かつての彼女の願いが現実になったことは明白だ。『琴音 Live 2023 -君に-』は、琴音というシンガーの持つ魅力を存分に浴び、心地よい癒しを与えてもらった最高の時間だった。

琴音、スランプの先で再認識した“音楽を作る喜び” 刺激的な環境がもたらす、シンガーとしての強みと広がり

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