連載『lit!』第54回:Foo Fighters、ノエル・ギャラガー、blur……音楽シーンにインパクト残し続けるベテラン勢の充実作
一方、2010年代以降にデビューしたロックアーティストの充実作のリリースも相次いでいる。例えば米ユタ州出身で、姉妹を中心に親友を加えて結成された4人組のThe Acesは、最新作『I've Loved You For So Long』をリリース。サウンドは本人たちも語っているように、The 1975からの影響が色濃い。表題曲はエモーショナルなラブソングで、リードボーカルのクリスタル・ラミレスはバンドへの愛を歌った曲であると述べている。
2年前のデビュー作がグラミーにノミネートされ、一躍インディー界の星となったアーロ・パークスは、2ndアルバム『My Soft Machine』をリリースした。フィービー・ブリジャーズを客演に迎えた「Pegasus」は、ローファイでメロウなビートに2人の柔らかくおぼろげな歌唱が乗り、エレピアノのフレーズが流れ星のように随所で煌めくのが印象的な良曲だ。
ここでParamoreの中心人物ヘイリー・ウィリアムスについても触れておきたい。ヘイリーは上述したThe Aces、アーロ、フィービーからリスペクトを受ける存在だ。ロックシーンにおいてクィアな女性を含む多くの女性が活躍しているこのタイミングで、Paramoreの最新作『This Is Why』が批評的にも商業的にも高く評価されているのは、時代の必然でもあるのかもしれない。
2年前の夏、当時高校生だった5人組のバンド、Geeseがニューヨークのブルックリンからデビューした。次々と個性豊かな若手バンドが登場していたロンドンの盛り上がりに呼応するように現れた彼らのアルバム『Projector』は、荒削りなサウンドながらも、鋭いソングライティングと熱のこもった演奏が伝わる作品で、米ローリングストーンを始めとした音楽メディアでも高く評価された。そんな彼らの2ndアルバム『3D Country』は、Arctic Monkeysやblurなどの熟練のバンドとも共同するジェームス・フォードがプロデューサーとして参加している。彼らの溢れんばかりの表現欲と、格段に渋みが増したバリトンボイスのボーカルが前作からの飛躍として印象に残る。本稿で紹介してきたベテランのバンドのように、Geeseもきっと長く愛されるバンドになるはずだ。そう信じたくなるような魅力が、無遠慮で奔放な本作にはある。
※1:https://www.voiceyougaku.com/ifpi-global-music-report-2023/
※2:https://www.barks.jp/news/?id=1000230021
※3:https://www.fashion-press.net/news/103803
The 1975は今、バンドとして最高の状態にある 極上の音楽と親密なコミュニケーションで魅了した来日公演初日
The 1975のキャリアを振り返るうえで、日本とそのファンは特別な存在である。そう言ってしまってもさほど大袈裟ではないだろう。…
連載「lit!」第24回:Arctic Monkeys、テイラー・スウィフト……海外ポップミュージックの濃密なサウンドやストーリーを分析
2022年も残り2カ月を切り、そろそろ海外メディアが「年間ベストアルバム」の記事を続々と出す時期に差し掛かってきた。連載「lit…