欅坂46&櫻坂46のストーリーに欠かせないナスカの楽曲 独創的なメロディラインや大胆な音作りで際立つ非凡な作家性
もう一つの魅力は、楽曲全体を通して物語を感じさせる独創的なメロディだ。ナスカは「危なっかしい計画」のような明るい曲から、「避雷針」や「黒い羊」のように暗い雰囲気をまとった楽曲まで幅広く作ることができるが、いずれも言葉数の多い特徴的なメロディラインが含まれている。なかには、一人で歌うには息継ぎも困難なほど文字が詰め込まれることがあり、それが楽曲全体の世界観の構築に一役買っている。例えば「Start over!」のAメロでは、シャッフル気味に跳ねるリズムの上で、ボーカルを早口で軽やかに歌わせている。ナスカ特有の小刻みな主旋律だ。対して、サビでは裏声を使わせるほど高らかに急上昇するメロディが印象深い。このメリハリによって楽曲全体にストーリー性を生んでいる。つまり、低い音程での細かい動きから、高い音程を使う大きな動きへと変化を見せる。それまで地面を這っていたようなメロディが、サビで一気に高く舞い上がるのだ。厳密に言えば、Bメロ内や、サビそのものの中でもこの高低差による抑揚を生んでいるが、大枠としてはAメロからサビへ、大きな飛躍とも言うべき物語を描いていく。ナスカはこうしたメロディでストーリーを紡いでいく手腕に長けている。
今回の新曲「Start over!」のリリースを機に、作曲したナスカへの注目度はさらに増すだろう。多彩な引き出しとオリジナリティのあるメロディ。それらは坂道グループ以外にも多くの歌手が作家に求めているものに他ならない。今後のさらなる飛躍が期待されるクリエイターチームの一つだ。

























