森 大翔、20歳の誕生日に刻んだ最初の集大成 初ワンマンライブは表現者としての新たなストーリーの幕開けに
ここからライブは終盤へと向かい、再びストラトを手にすると、プログレッシブな展開が魅力の「たいしたもんだよ」では指とピックを使い分け、サンバパートではハンドマイクで歌い、間奏ではカッティングをしながらジャンプをしたりと、多彩なステージングでオーディエンスを魅了。SNSなどでつい自分と他人を比較してしまい、「たいしたもんだよ」と自分で自分を認めることが決して簡単ではない現代において、大事なのは何かひとつでも「自分にはこれがある」と思えることであり、森の場合はもちろんギターという相棒が自分に自信を与え、アーティストとしての成長を促してきたのだろう。そして、「自分はこれが好きなんだ」と心の底から思えることであれば、その表現方法が何であれ、いつの時代でも聴き手を魅了することはきっと可能なはず。大盛り上がりとなった「剣とパレット」で夢中になってギターを弾く姿からは、改めてそんなことも感じられた。
「思い出は景色や音楽の中にずっと残り続けるものだと信じていて、そう思えたらちゃんと今という時間を噛み締めて進んでいける」と話し、本編のラストに届けられたのはアルバムでもラストを飾っている「いつか僕らは〜I Left My Heart in Rausu〜」。森はこの日たびたび北海道への想いを語り、音楽への愛情も、ギターのテクニックも、誰からも愛されるであろう人懐っこい性格も、その全てが北海道で育まれてきたものであることを感じさせた。最後に北海道産のテレキャスで奏でられた長尺のギターソロは、その音が地下のライブハウスから空へと舞い上がり、彼の地元である羅臼にまで届きそうなスケール感だった。
アンコールではデビュー曲の「日日」をエレアコで弾き語り、〈僕らまたいつの日か/何処かで会えるから〉と歌う「君の目を見てると」をバンドメンバーとともに届け、最後にもう一度ギターソロを弾き倒して、盛大な拍手が贈られる中でライブが終了。「最高の誕生日でした。30歳になってもまた来てくれますか?」という言葉に大きな歓声が起こり、笑顔でステージをあとにする姿からは、今後のさらなる飛躍を期待せずにいられなかった。
■ライブ情報
2023年11月22日(水)@渋谷WWW
2023年11月24日(金)@梅田 Shangri-La
*チケット発売などに関する詳細は後日発表