THE BACK HORN、25年間で培われた柔軟な音楽性 リアレンジアルバムは“バンドの本質”が垣間見える1枚に

THE BACK HORN、リアレンジALの柔軟性

 山田が今作で最もうまくできたと自負する「美しい名前」は、THE BACK HORNのレパートリーの中で最も憂いのある曲かもしれない。その憂いを受け止めるように山田がアコースティックギターで優しいアルペジオを弾いて曲が始まる。松田のドラムは優しく、菅波が重ねたシンセも曲が抱える痛みを和らげる。癒されない痛みや悲しみも時間を経て和らいでいくことを彼らは知っているのだろう。「ガーデン」はライブで演奏することは少ないが、〈平和は夢の墓場〉という逆説的なフレーズが2023年においては別な意味を連想させる。ベルの音など上物を加えながらも、バンドの音をシンプルに抑えて歌を生かすアレンジなのは、感情を込めた歌を聴かせたいからだろう。

 今作のリアレンジ楽曲の中で最新の「幻日」は原曲のエスニック風味を受け継ぎ、シタールを入れたアレンジにすることで菅波は歌詞の世界観を補強したかったようだ。同じく菅波が作詞した「ファイティングマンブルース」もヘヴィなロックから渋いブルース仕立てにして、生活のために自分を擦り減らす哀愁を浮き上がらせている。テンポアップする後半のセッションも聴きものだ。「夕暮れ」は原曲のスタイルに近いが、よりシンプルな演奏にすることで独白めいた歌の味を生かした。一方、原曲の色合いを生かしながらガラリと変わった印象に仕上がった「羽根〜夜空を越えて〜」は、菅波が最もギターにこだわった曲。それを支える岡峰と松田のシンプルにして腰の座ったビートがTHE BACK HORNならではだ。

 松田が推す「夢の花」は本来のダイナミックな躍動感を下敷きに、軽やかさを感じさせる演奏ながらも岡峰の歪んだベースが全体を引き締めている。後半は山田のスキャットで大人びた匂いを加えた。岡峰が気に入っているという「サイレン」は、直球パンクな原曲からドロップビートを拾い出し、スカからレゲエとビートを変化させて楽しませる曲に。ライブで聴いたら踊り出すこと間違いなしだ。こうして4人が組み直した12曲の先に「Days」があり、過去と現在をシームレスに繋いでいく。

THE BACK HORN - Days(OFFICIAL TEASER)

 『REARRANGE THE BACK HORN』は、THE BACK HORNが持っている柔軟さと可能性を率直に表している。それは25年の間に彼らが吸収してきたことや蓄積してきた経験が培ってきたものが膨大にあるからだろう。“僕らだけの物語”はまだまだ続く。7月に予定されている『THE BACK HORN「KYO-MEIワンマンツアー」〜REARRANGE THE BACK HORN〜』では、このアルバムに続く現在の彼らと出会うことができるはずだ。

■リリース情報
THE BACK HORN
New Album『REARRANGE THE BACK HORN』
2023年6月14日(水)発売

『REARRANGE THE BACK HORN』IGTプレオーダー
https://itunes.apple.com/jp/album/id1685593395?app=itunes&ls=1

<商品形態>
・初回限定盤(CD+Blu-ray):¥7,700税込
*三方背ケース/3面2トレーデジパック/ブックレット
・通常盤(CD):¥3,300税込

<CD収録内容>
01. 冬のミルク (Rearrange)
02. 幾千光年の孤独 (Rearrange)
03. 光の結晶 (Rearrange)
04. 美しい名前 (Rearrange)
05. ガーデン (Rearrange)
06. 幻日 (Rearrange)
07. ファイティングマンブルース (Rearrange)
08. 夕暮れ (Rearrange)
09. 羽根~夜空を越えて~ (Rearrange)
10. 罠 (Rearrange)
11. 夢の花 (Rearrange)
12. サイレン (Rearrange)
13. Days

<Blu-ray>
・『「KYO-MEI ワンマンツアー」~アントロギア~ FINAL(2022.07.30 金沢 EIGHT HALL)』
01. ユートピア
02. ヒガンバナ
03. 声
04. 戯言
05. 深海魚
06. 生命線
07. 疾風怒濤
08. 桜色の涙
09. 美しい名前
10. 夢路
11. 空、星、海の夜
12. 瑠璃色のキャンバス
13. ウロボロス
14. コバルトブルー
15. 太陽の花
16. 希望を鳴らせ
17. JOY
18. ネバーエンディングストーリー
19. 光の結晶
20. グローリア
21. 無限の荒野
・Documentary「KYO-MEI ワンマンツアー」~アントロギア~

■ツアー情報
『THE BACK HORN「KYO-MEIワンマンツアー」〜REARRANGE THE BACK HORN〜』
7月8日 仙台Rensa
[1部]open15:30/start16:30
[2部]open18:30/start19:30

7月15日 名古屋THE BOTTOM LINE
[1部]open15:30/start16:30
[2部]open18:30/start19:30

7月17日 福岡Gate's7
[1部]open15:30/start16:30
[2部]open18:30/start19:30

7月23日 Billboard Live OSAKA
[1部]open15:30/start16:30
[2部]open18:30/start19:30

7月30日 Billboard Live TOKYO
[1部]open15:30/start16:30
[2部]open18:30/start19:30
※全公演1日2公演

<TICKET>
仙台・名古屋・福岡公演
指定席:¥5,900/後方立見:¥5,600(整理番号付)※ドリンク代別
東京・大阪公演
・サービスエリアS指定席:¥8,000
・サービスエリア指定席:¥6,900
・サービスエリアBOXシート(2名のみ申込可/ペア価格)):¥17,100※大阪公演のみ
・サービスDuoシート(2名のみ申込可/ペア価格):¥17,100※東京公演のみ
・サービスDXシートカウンター:¥9,100※東京公演のみ
・サービスDXシートDuo(2名のみ申込可/ペア価格):¥18,200※東京公演のみ
・カジュアルエリア:¥6,400(1ドリンク付)

※券種の詳細は下記URLより
大阪座席詳細
http://www.billboard-live.com/club/o_index.html
東京座席詳細
http://www.billboard-live.com/club/t_index.html

チケット一般URL(2023年6月10日(土)10:00〜)
https://lnkfi.re/REARRANGE_TBH

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる