櫻坂46、3度目のツアーで感じた変化 シングル『桜月』や三期生の加入がグループにもたらしたもの

 公演を続けていく過程で、オープニングを飾る「Cool」で大園が着実に成長していったように、本編ラスト曲「桜月」をドラマチックな演出とともに披露した守屋もまた、このツアーを通して表現者として大きな進化を遂げている。繊細さと力強さが共存するこの曲のエンディングには、守屋がひとりサブステージに移動してダンスを見せる場面が用意されているのだが、そこで見せる表情の変化や柔らかさが求められるダンスでは、「桜月」という楽曲を通じてひと皮もふた皮も向けた彼女の姿を目にすることができた。バラエティ番組での活躍が目立つ彼女だが、櫻坂46でのパフォーマンス面でも歴代センターにも負けないほどの実力を、確実に獲得していることを提示できた点でも、このツアーは彼女にとってかなり大きな経験になったことだろう。

 6月1日公演のアンコールでは、その2日前にMVが公開されたばかりの新曲「Start over!」も初披露された。この曲のセンターを務めるのは藤吉。「なぜ 恋をして来なかったんだろう?」や「偶然の答え」といった楽曲ではセンターを担当してきたものの、シングル表題曲でのセンターはこれが初めて。実は、今回のツアーを通じてもっとも目を惹かれる機会が多かったメンバーが、この藤吉だった。ツアーを通じて毎回披露されてきた「なぜ 恋をして来なかったんだろう?」で見せる表情作りや、「五月雨よ」や「桜月」などエモーショナルさが目立つ楽曲、「それが愛なのね」のような開放感の強いダンスチューンなどで見せる表現にこれまでとの違いが感じられ、気がつくと目で追ってしまっていたのだ。彼女の中で何か変化のきっかけがあったのだろうか? と常々感じていたのだが、それが今回のセンター抜擢だったとしたら非常に納得いくものがある。

 その「Start over!」はMVで見せたダンスを軸にしつつ、見応えのあるパフォーマンスが展開された。楽曲が放つパワーや魅力が非常に強いものなのは大前提として、それを補っても余りあるほど個性的で技術力が求められるダンスは、一瞬たりとも目が離せないもの。イントロのベースリフが爆音で鳴り始めた瞬間からエンディングで暗転するまでの数分間、余計なことが一切考えられないほどの没入感を得ることができた。この曲で櫻坂46は第二章が本格的に幕開けしたといったところだろうが、個人的には「Nobody's fault」から模索してきた“櫻坂46の個性”がひとつ完成の域に達しつつあるという印象が強い。

 グループとしての色を確かなものにしつつ、それでもなお進化の過程にあることを大々的にアピールした今回の『櫻坂46 3rd TOUR 2023』。単独ライブを通じてその続きを目撃できるのは、11月25日、26日にZOZOマリンスタジアムで開催される『櫻坂46 3rd YEAR ANNIVERSARY LIVE』までお預けになりそうだ。だが、その間もグループはさらに進化を続けるはず。半年後の『櫻坂46 3rd YEAR ANNIVERSARY LIVE』では、どこまで進化した櫻坂46に出会えるのか、期待が高まるばかりだ。

■セットリスト
櫻坂46『櫻坂46 3rd TOUR 2023』
2023年6月1日(木)大阪城ホール
00. Overture
01. Cool
02. 半信半疑
03. 摩擦係数
04. それが愛なのね
05. 恋が絶滅する日
06. ブルームーンキス
07. 五月雨よ
08. もしかしたら真実
09. 無念
10. 夏の近道
11. 魂のLiar
12. Nobody's fault
13. なぜ 恋をして来なかったんだろう?
14. 流れ弾
15. Dead end
16. 条件反射で泣けて来る
17. BAN
18. 桜月
<アンコール>
19. Start over!
20. Buddies
21. 櫻坂の詩

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