ユーロビジョン準優勝のKäärijä、バイラルチャート好調 「Cha Cha Cha」のリズムとキャッチーな装いがもたらすエネルギー

 「Cha Cha Cha」は、エレクトロの重厚なリズムと、あまり抑揚のないメロディを低音で唸るように歌った後、一転して荒々しいシャウトを聴かせるエレクトロニック・ボディ・ミュージックのお手本のような曲だが、途中からユーロディスコを思わせる華やかなメロディ、後半では優美でポップなメロディが展開するのが斬新だ。フレーズが短い上に展開もわかりやすく、それだけでもキャッチーだが、“ループ”の技が光るトラックにも注目である。1番Aメロの早い段階で、シンセサイザーのレトロチックな音色を用いながら、曲中で何度も繰り返される〈Cha, cha, cha……〉と同じ音階のフレーズを、布石を置くようにトラックに組み込んでいる。ラテンのリズムで〈Cha, cha, cha〉と大胆にシャウトすることで、一度聴いたら頭から離れず、脳内で延々ループしてしまうほど中毒性が高い。加えて最後は、BPMはそのままでメロディアスな要素を増やし、綺麗な歌声を聴かせる。

Käärijä - Cha Cha Cha | Finland 🇫🇮 | Official Music Video | Eurovision 2023

 楽曲から想像できるKäärijäはなかなかの職人肌で、ボーカルスキルもしっかりしているミュージシャンだ。これだけでも十分インパクトがあるのだが、最も印象的なのは彼のパフォーマンスだろう。その衣装も含め、アクション系アニメに出てくるキャラクターのよう(しかもサブキャラで敵方なのに、人気が出るような雰囲気がある)。実際「Cha Cha Cha」のMVは、Käärijäをボクサーに見立て、リングで闘うシチュエーションだが、面白いのはカメラが対戦相手目線であること。Käärijäはこてんぱんにやられ、本当に白目をむく。最後のオチも含めて笑う要素満載だが、笑っている暇がないほど、楽曲とパフォーマンスに圧倒的なエネルギーがある。

 世界中が次のアクションに注目しているKäärijä。そんなアーティストを早い段階で見つけられるのも、バイラルチャートの醍醐味だ。

※1:https://charts.spotify.com/charts/view/viral-jp-daily/2023-05-24
※2:https://charts.spotify.com/charts/view/viral-global-daily/2023-05-21

連載「lit!」第36回:Måneskin、サム・スミス、ポップカーン……音楽性の強化から歴史の継承まで、フィーチャリング曲に注目

前回の海外ポップミュージック回は昨年のヒット曲やシーンにおける新たな流れに目を向けてまとめた(※1)。年明け1回目となる今回の「…

マネスキン、来たる新作『ラッシュ!』はバラエティ豊かなロックアルバムに? 先行曲から高まる、さらなる快進撃の予感

今や“ロックの救世主”として全世界のロックリスナーからの熱い期待を一身に引き受けるMåneskin(以下、マネスキン)。彼らの約…

関連記事