ルイス・キャパルディ、地元で人気のシンガーソングライターから世界的大スターへ 成功も悲劇も手にした稀有な才能と人生
5月19日にリリースされた『Broken By Desire To Be Heavenly Sen』は、世界中のファンにとって待望のルイス・キャパルディの2ndアルバムであるとともに、ルイス自身にとっても、そのようなネガティブな状況と戦った果てに辿り着いた境地のような作品だ。
プロダクションに関しては何よりも重要なルイスの歌声がまっすぐ届くように、歌声を中心に据えた音像を前作から引き継ぎつつも、自らが抱える罪からの救済に対する喜びを軽快に歌い上げるアップテンポな「Heavenly Kind Of State Of Mind」や、オーケストラによる壮大な高揚感とともに恋愛の優しさと痛みを描いた「Haven't You Ever Been In Love Before?」など、音楽性の幅を広げつつ、楽曲に込められた感情をさらに強く引き出した、よりスケールの大きな仕上がりになっているのが印象的である。
しかし、そのコアにあるのは、前述のような自らの状態と正面から向き合ったルイス自身の、極めて個人的な感情だろう。本作の中でも筆者個人として特に惹かれた「The Pretender」では、複雑に揺れ動くメロディを時には繊細に、時には力強く歌い上げながら、自らを「偽物だ」と言い切ってしまう。その上で、「だから、私にどんな人になってほしいのか教えてくれ」と楽曲を締めくくるのである。そこには、自分自身に対しては今なお疑問を抱きながらも、自らを愛してくれるファンのことは信じるという、自分らしい答えを見出したルイスの、今のリアルが表れているように感じられるのだ。
いくらでもミームに活用できそうなくらいに大量のジョークに溢れているSNSの投稿や、ドキュメンタリーにおけるユーモラスな言動からも分かる通り、ルイスは周りの人間に何とか楽しんでもらおうと頑張るタイプの人物だ。「忘れられることへの恐怖」をドラマティックなメロディとブルージーな歌声で見事に描ききった屈指の名曲であるにも関わらず、リード曲「Forget Me」のMVは絶妙にユーモラスな仕上がりになっているのも、彼なりのユーモアだろう。同MVは富裕層向けのリゾートホテルとして知られる、イビザ島に位置するパイクス・ホテルで撮影されたもの。同ホテルは1983年にWHAM!が発表した「Club Tropicana」のMV撮影でも使用されているのだが、ルイスは「Forget Me」のMVでそれを完全再現している。そんなところからも、彼のユーモラスなキャラクターが十分に伝わってくることだろう。
再び笑顔を取り戻したルイス・キャパルディは、遂に完成させた本作と共に今年の『FUJI ROCK FESTIVAL '23』に出演する予定だ。2020年の単独公演から約3年ぶりとなる今回の来日公演でも、きっとサービス精神に溢れた素敵なステージを披露してくれることだろう。ぜひ本作を聴き込んで、「みんなのお気に入りのシンガーソングライター」としてのパフォーマンスはもちろんのこと、その楽曲の中に込められたリアルな感情までしっかりと味わってみてほしい。
■商品情報
アルバム『ブロークン・バイ・ディザイア・トゥ・ビー・ヘヴンリィ・セント』
国内盤 UICO-1329 ¥2,750(税込)
2023年5月19日リリース
試聴はこちら:https://umj.lnk.to/LC_BBDTBHS
商品情報はこちら:https://store.universal-music.co.jp/product/uico1329/
■アーティスト情報
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