連載「lit!」第50回:Ado、SUPER BEAVER、sumika……さらなるブレイクスルーの実現を確信させるロックチューン
緑黄色社会『pink blue』
新たな代表曲となった「キャラクター」を含む3枚目のアルバム『Actor』がリリースされたのが昨年の1月。それから4人は怒涛の勢いで結成10周年イヤーを駆け抜けながら、9月には初となる日本武道館公演2DAYSを見事に成功させた。また、年末には初出場となった『NHK紅白歌合戦』で「Mela!」を披露し、その存在感をさらに高めてみせた。きっと、こちらの想像を絶するほどに目まぐるしい1年間だったと思う。だからこそ、約1年4カ月というハイペースで4枚目のアルバムがリリースされると知った時には驚いた。そして、収録されている多彩な輝きを帯びた全12曲を聴いて、現状に満足せず、ここからもっとギアを上げて走り続けていくという4人の鮮烈な意志を感じた。まず、すべての楽曲が全方位に向けて鮮やかに開かれていて、長屋晴子(Vo/Gt)の歌声は今まで以上に射程を広げている。それは、もっとたくさんの人へ、もっと遠くへ自分たちの音楽を届けたいという想いの表れでもあるだろう。
また、サウンドデザインの面においても挑戦が数多く見られ、特に「うそつき」が象徴的なように、今作には心の奥底に優しく沁みわたるような清廉な響きを放つ楽曲たちが数多く収録されている。一方、「Starry Drama」をはじめとした、いまだ見ぬポップの地平へ向けて力強く突き抜けていくような楽曲たちは、今まで以上にポップソングとしての強度を増している。圧巻だ。武道館も『紅白』もひとつの通過点にすぎない。4人が掲げ続ける「国民的バンドになりたい」という願いが、いよいよ真の意味で結実する日は近いのだと確信させてくれる、素晴らしいポップアルバムだ。
NEE『贅沢』
今作については、筆者が担当しているもうひとつの連載「本日、フラゲ日!」(※1)でもレビューを書いたので、本記事と合わせてそちらもチェックしていただけたら嬉しいが、その際に書き切れなかったことが多かったので、あらためてこの連載でもピックアップした。結論から書いてしまえば、今回のNEEの2ndアルバムは、とてつもない覚醒感を放つ傑作であると思う。約2年前、1stアルバム『NEE』を初めて聴いた時も、全編にみなぎる凄まじいエネルギーに圧倒されてしまったし、同時に、このバンドはこれから先ライブを重ねていく中で、さらに化けていくはずであると確信した。実際に彼らは、数多のライブやフェスのステージに立つことでたくましく成長し、現在のロックシーンにおける台風の目とも呼ぶべき存在感を誇るようになった。
先ほど用いた“覚醒感”という表現は、彼らが数々のライブを重ねてロックバンドとして何段階もビルドアップしてきたという意味であるが、決してそれだけではない。既発曲の「本日の正体」、「バケモノの話」をはじめ、堂々たるアンセミックなメロディを誇る曲が増えたし、特に「月曜日の歌」は、すでにライブにおける新たなアンセムと化している。何より、今作のリード曲「生命謳歌」が象徴的なように、くぅ(Gt/Vo)が綴る同じ時代を生きるリスナーへ向けたメッセージは、前作以上に鋭く磨き上げられている。彼らが、今後のロックシーンを力強く牽引していく最重要バンドの一組となっていくことは間違いないだろう。
※1:https://realsound.jp/2023/04/post-1311759.html
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