kiki vivi lilyが目指した、荒井由実×ティン・パン・アレーのような信頼関係 荒田洸らとの制作で生まれた“自分らしさ”

kiki vivi lily、松任谷由実へのリスペクト

 シンガーソングライターのkiki vivi lilyが、5曲入りのEP『Blossom』をリリースした。本作は、これまでもkiki vivi lilyのサウンドを支えてきたWONKの荒田洸や、MELRAWこと安藤康平を筆頭に、彼女のサポートメンバーでありLAGHEADSとしても活動している小川翔と山本連がレコーディングに参加。さらに初タッグとしてモノンクルの角田隆太や、以前より交流のあったKing Gnuの新井和輝やピアニストのDavid Bryantら豪華メンバーが集結し、kiki vivi lilyのスウィートな歌声と、ブラックミュージックを下地にしたソウルフルかつポップなメロディをオーガニックに引き立てている。

 松任谷由実(荒井由実)をフェイバリットアーティストに挙げ、エヴァーグリーンなポップミュージックを作り続けてきたkiki vivi lilyに、本作の制作エピソードはもちろん、ユーミンからの影響についてなどたっぷりと語ってもらった。(黒田隆憲)

「今自分はkiki vivi lilyを聴いている」と思ってもらえるように

kiki vivi lily(写真=林直幸)
kiki vivi lily

――5曲入りのEPとなる『Blossom』は、まとまった音源としては2021年10月にリリースされた2ndフルアルバム『Tasty』以来の作品です。『Tasty』は「味覚」をテーマにしつつ、様々なアレンジの楽曲が収録されていましたが、今作は何かテーマなどありましたか?

kiki vivi lily:今回はEPということもあり、特にテーマを決めて作っていたわけではなくて、音のアプローチとしては肩肘を張らない感じというか。よりオーガニックで、ナチュラルな方向性を意識しています。ただ、基本的には同じ時期に作った楽曲ではあるので、なんとなく統一感はあるのかなと思います。あと、曲順にはこだわりました。冒頭から「ああ、今自分はkiki vivi lilyを聴いているな」と思ってもらえるような音色で始まりたいと最近は思っていて。「この音色を入れたらkiki vivi lily印と思ってもらえるかな」とか。それって、活動を重ねてきたからこそできるようになったことなのかなと。

――なるほど。そういう“kiki vivi lily印”があるからこそ、例えば森七菜さんへの楽曲提供などのオファーが来るのかなと。

kiki vivi lily:確かにそれはあるかもしれないですね。オファーの内容で「そうか、自分はこう思われているんだ」と気づくこともあります。例えば「こういう感じの曲を作ってください」と言われると、「私、こういうイメージを求められているんだ」みたいな(笑)。そうやって、自分が気づけなかったところに気づけるのはすごく勉強になりますね。

――冒頭曲「The Day」は、グンゼのコンセプトムービーへの提供曲です。

kiki vivi lily:私は普段、ピアノで曲のアウトラインを作ってからそれをDTMに打ち込んでデモを完成させることが多いのですが、この曲は珍しく鼻歌からメロディを作っていきました。なんとなく全体の構成が決まり、「次の作品に入れたいな」と思いながら過ごしていたところ、ちょうどグンゼさんからオファーをいただいて。この曲の雰囲気がぴったりだと思ったので仕上げていくことにしました。

――資料によれば、この曲のテーマは「愛=自由」だそうですね。これはどこからきたものなんですか?

kiki vivi lily:これは最近、自分自身が思うことです。というのも、若い頃に思う「愛」は、「どれだけ関わってくれるか?」とか「どれだけ一緒の時間を長く過ごしてくれるか?」とか、そういうことに重きを置きがちだと思うんですよ。でも歳を重ねていくにつれ、離れている時にこそ愛を感じる瞬間が多くなってきて。そのことを歌えたらいいなと思いました。

――離れていても感じる愛というのは、相手からの信頼を感じることのできる愛、ということなのかもしれないですね。

kiki vivi lily:そう思います。ここで歌っている愛には恋愛だけでなく、親子愛も含まれているんです。私は子供の頃から母親とすごく仲良しだったのですが、18歳で家を出る時にも快く手放してくれたんです。それが愛だということに、この歳になって気づけるようになってきて。若い時に歌っていたことから、ちょっとアップデートして、より深い愛を表現できたらいいなという思いで書きました。

――友人同士でも家族でも恋人でも、人間関係において“距離感”はとても重要ですよね。ちなみにkiki vivi lilyさんが“自由”を感じるのはどんな時ですか?

kiki vivi lily:一人で家にいる時ですかね(笑)。昨日も思いましたね、「誰にも何も言われない家って最高だな」と。

――孤独と自由は紙一重ですよね。

kiki vivi lily:ああ、確かにそうですね。孤独であることも「自由だ」と思えるようになってきたということかも。

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