羊文学、NTTドコモCM曲「永遠のブルー」で集める共感 力強い演奏と優しい歌詞がリスナーの心の拠り所に
〈愛をしてるから間違えたんだ〉〈正しさなんてどうでもよかった〉──NTTドコモ「ドコモ青春割」のCMで流れていたこの楽曲に、惹き込まれた人も多いのではないだろうか。キャッチーなサビのメロディに、伸びやかながらも透明感のある歌声。明るい未来を想像させるような爽やかなサウンドが、青春や旅立ちをテーマにしたCMの映像にマッチしている。
CMで流れていた曲の名前は「永遠のブルー」。手がけているのは、塩塚モエカ(Vo/Gt)、河西ゆりか(Ba)、フクダヒロア(Dr)から成る3人組オルタナティブロックバンド・羊文学だ。2020年にメジャーデビューした彼女たちは、これまでに3枚のフルアルバム、6枚のEPをリリース。2022年は音楽フェスに多数出演し、直近では4月13日に『DayDay.』(日本テレビ系)、4月17日に『CDTVライブ!ライブ!』(TBS系)で「永遠のブルー」を披露するなどテレビでパフォーマンスを行う機会も増えている。
今、なぜ羊文学が注目を集めているのか。それは、彼女たちが奏でる優しさと力強さを併せ持つ楽曲が、混沌とした時代を生きる私たちに寄り添う役目を果たしているからに思える。具体的に、彼女たちのこれまでの歩みを踏まえながら、羊文学の魅力を掘り下げてみたい。
羊文学は2012年に結成され、2017年に現体制となっている。
『トンネルを抜けたら』、『オレンジチョコレートハウスまでの道のり』の2枚のEPを発表後、2018年にリリースされたのが1stアルバム『若者たちへ』だ。当時、彼女たちがまだ大学生だったこともあってか、本作には思春期ならではの悩みや葛藤を描いたと思われる楽曲が多い。「ドラマ」の〈青春時代が終われば/私たち、生きてる意味がないわ〉や、「天気予報」の〈僕らが憧れた未来予想のその先は/ドキドキするような未来を運ぶかい?〉などの歌詞からは、学生時代が終わり、社会へ出ていくことの不安が読み取れる。苦しい感情を吐露するような歌詞にあわせるように、演奏自体も全体的に尖ったサウンドが目立つアルバムだ。
そんな自身の内面と向き合うような楽曲の数々は、2020年にリリースされたメジャー1stアルバム『POWERS』にも見られる。一方で、収録曲「powers」の〈心の限り求めるならば/未来は変わるかもね〉のように、楽曲によっては人間の弱い部分を描きながらも、希望を提示するようなアプローチに変化している部分も感じられる。なお、本作には「1999」や「あいまいでいいよ」といった人気曲も収録されており、これから羊文学を聴き始める人にはまずおすすめしたい1枚だ。
2022年にはメジャー2ndアルバム『our hope』をリリース。収録曲の内、「マヨイガ」はアニメ映画『岬のマヨイガ』主題歌、「光るとき」はTVアニメ『平家物語』のオープニング主題歌に起用されており、彼女たちの活躍の場が広がっていることも窺える。本作が『第15回CDショップ大賞』で大賞を受賞したことも記憶に新しい。また、2019年リリースのEP『きらめき』あたりからポップ色が強くなってきたように感じるが、本作の「パーティーはすぐそこ」や「ラッキー」などでもその傾向が見られる。羊文学の多彩な音楽性を感じられるアルバムとも言えるだろう。