sumika 黒田隼之介、ギタリスト&ソングライターとして残した名フレーズ 人柄も滲む、誠実かつ自由自在なプレイスタイル

 sumikaの黒田隼之介(Gt/Cho)が2月23日に逝去した。享年34歳。バンドはもうすぐ結成10周年、4日前にアニバーサリーツアーを終えたばかりというタイミングでの突然の出来事だった。

 こんな報せを聞くことになるとは誰も予想していなかっただろうし、あまりにも突然で、気持ちを整理できていないファンがほとんどだろう。私もまだ受け止め切れていないが、彼の功績をここに記すため、sumikaの音楽や彼のギターを初めて聴いた時のことを思い出すところから始めたい。

 2015年リリースの3rdミニアルバム『Vital Apartment.』で、sumikaの音楽に初めて出会った。あの時の衝撃を忘れやしない。全曲よかったが、特に2曲目の「チェスターコパーポット」。18小節にわたるイントロ/アウトロのメロディをはじめ、1番Aメロにおけるオブリガード的なアプローチ、間奏の超絶ソロなどインパクト抜群のフレーズをいくつも紡ぎながら、4つ打ちのギターロックからジャズ調にもメタル調にも変化する楽曲をサバイブするギターの熱量に、驚くとともに高揚した。さらに、どんなジャンルにも果敢に挑む荒井智之(Dr/Cho)、小川貴之(Key/Cho)のプレイヤビリティや、片岡健太(Vo/Gt)のイマジネーション豊かなソングライティングが掛け合わさって生まれるマジカルなアンサンブル。大胆かつ自由な楽曲からはこのバンドにしかない魅力が感じられた。

sumika「チェスターコパーポット」

 sumika初の全国流通盤、2014年リリースの『I co Y』では、1曲目「ソーダ」の冒頭からカントリー系のフレーズをたっぷりと奏でている黒田。彼のギターの一つの特徴といえば、曲の顔となるメロディアスなフレージングだろう。マイナーペンタトニックスケールで和風な印象をもたらす「ふっかつのじゅもん」(2014年)イントロ、どこまでもドラマティックな「グライダースライダー」(2015年)間奏のソロ、歌心とリズミカルさを両立させた「イコール」(2019年)イントロの13小節間など、リスナーにとっては思わず口ずさんでしまうような、ギタリストにとっては自分も弾いてみたくなるようなギターフレーズがsumikaの楽曲には数多くある。

sumika / ソーダ【Music Video】
sumika / イコール【Music Video】

 初期衝動全開の「ファンファーレ」(2018年)などアッパーチューンをライブで披露する際には、喜びを剥き出しにしてプレイ。一方、「春夏秋冬」(2018年)などのバラードでは情感豊かにソロを奏で、リスナーに感動をもたらした黒田。『sumika Live Tour 2021「花鳥風月」』より「ペルソナ・プロムナード」、「ライラ」のライブ映像を観れば、彼のギターヒーローぶりを感じられるし、『sumika Live Tour 2022-2023「Ten to Ten」』より「チョコレイト」のライブ映像を観れば、ボーカルに寄り添う繊細な手つきを確認することができるだろう。

sumika / "ペルソナ・プロムナード" , "ライラ"「Live Tour 2021『花鳥風月』」for J-LODlive
sumika / チョコレイト【Live Video】

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