Swagcky、音楽作りで重要視する“思いやり”精神 自身初のバズソング「ふりだし」に込めた想い
昨年シングル「夕立ち」でデビューし、『イナズマロックフェス2022』への出演も果たしたシンガーソングライターのSwagckyが新曲「ふりだし」をリリースした。この曲は、弾き語りのデモ音源バージョンを昨年TikTokにアップしたところ、総再生回数が460万回を突破するなどかねてより注目を集めていたもの。恋愛を「すごろく」に喩えたユニークかつ説得力のある歌詞が、多くの人の心を捉えたようだ。
今回のインタビューで、曲作りに大切なのは「思いやり」だと答えてくれたSwagcky。「生きづらさ」を抱える人たちに、「今を大事にしよう」と訴える彼は、この「ふりだし」にどんなメッセージを込めたのだろうか。(黒田隆憲)
「ふりだし」のメッセージは“今を大事にする”
ーー未発表デモ音源「ふりだし」が、TikTokでの音楽総再生回数460万回を突破しました。この曲をTikTokに上げようと思ったそもそもの理由から教えてもらえますか?
Swagcky:このところ、街中でよく聴く音楽がTikTok発信というケースが増えているなか、自分自身も楽曲を発表する場として試してみたかったというか。自分が作ったものを聴いて、「いいな」と思ってくれるリスナー層がどのあたりなのかを知りたい気持ちもありました。もちろん、より多くの人に聴いてもらいたいというシンプルな理由が一番大きかったのですが。
ちなみにTikTokそのものは、3年くらい前からやっています。自分のアカウントには、普段から趣味で見ているものに近いものがアルゴリズムで流れてくるので、それ以外の世の中の動向を知る上でもアカウントをいくつか使い分けているんですよ。それでリサーチしたところ、自分が持っているレパートリーの中では「ふりだし」がとっかかりとして良さそうだなと思ったのもありました。
ーーでは、バズることもある程度は意識したわけですよね。
Swagcky:ある程度は(笑)。ただ、単に「バズり」が目的になってしまってリスナーに寄り過ぎてしまうのも、アーティストとして芯がない気がします。流行り廃りのタームがどんどん早くなっていくなかで、使い捨てのような楽曲もすごく増えているじゃないですか。やっぱり、自分が憧れているアーティストは時を経ても色あせない音楽を作っているので、そこはちゃんとバランスを取りたいんですよね。
ーー「色あせない音楽」とは、例えば?
Swagcky:ハナレグミさんの「サヨナラCPLOR」や、斉藤和義さんの「歌うたいのバラッド」とか。やっぱり名曲と呼ばれるものは、一気に流行りになるわけでなくじっくり広まっていくイメージです。そういう曲を作ることが、音楽をやる上で大事なことだと僕は思っています。
ーーある意味、ご自身の中にプロデューサー的な観点があるというか。
Swagcky:確かに、そういう視野を持って作るようにはしていますね。アーティストとして「これだけは譲れない」というとんがった部分を大事にするのと同時に、「多くの人に届くような、独りよがりではない曲を作る」という客観的な視点を持っていたいので。
ーー実際にバズったわけですから、「プロデューサー」としては狙い通りというか。
Swagcky:でも、予想以上にバズってしまって……(笑)。行き過ぎは良くないな、と思っています。変に浮かれたりせず、地に足をつけて正しくステップしていきたいですね。
ーー曲自体はどのように作ったのですか?
Swagcky:プロデューサーのHiplinさんと楽曲を作る上では、「Swagcky」としてのテーマみたいなものを大事にしています。というのも、僕自身あまり友人がいなくて、世の中に対して「生きづらさ」を抱えていた時期があったんですよ。そんな中で音楽に励まされたり、救われたりした部分が大きかったし、音楽が自分の心の支えになっているということを、曲作りをしていく中で気づいたというか。
同時に、やりたいことを後悔せず「今を生きる」ことを大事にしたいという気持ちもあります。もちろんリスクヘッジも大切ですが、何の保証もない未来に不安を抱いても仕方がないと僕は思っていて。それよりも、とにかく目の前のことを真剣に取り組む。後悔しないよう、好きなことをとことんやるのが大事だなと。めちゃくちゃシンプルなことですが、この二つを「Swagcky」のテーマにしたいんですよね。
ーー「ふりだし」もそれがテーマになっている曲?
Swagcky:そうです。一聴すると「失恋ソング」ですが、それよりも伝えたいメッセージは「今を大事にする」ということなんです。せっかく築き上げた恋人との関係性が「ふりだし」に戻ってしまい、元に戻せなくなってからでは遅い、そうならないために、今を大事にしようと言いたかった曲です。